『FFVII リバース』力作移植のNintendo Switch 2版の舞台裏を訊いた。高難度なオープンフィールドの最適化を魔改造UE4と共に、「何を削るか」ではなく「何を残すか」の思想

『FFVII リバース』をNintendo Switch 2にどう移植したのか、ディレクターの浜口直樹氏に訊いてきた。

スクウェア・エニックスは6月3日、『ファイナルファンタジーVII リバース』(以下、『FFVII リバース』)のNintendo Switch 2/Xbox Series X|S/Microsoft Store on Windows版を発売した。

『FFVII リバース』は、『ファイナルファンタジーVII』(以下、FFVII)のリメイクシリーズ三部作の二作目だ。前作『FFVII リメイク』の舞台となったミッドガルを脱出したクラウドたちは、宿敵であるセフィロスの影を追って広大な世界を旅する。PS5向けに2024年2月に発売され、移植開発を経てPC(Steam/Epic Gamesストア)版が2025年1月23日に発売を迎えた。そして、6月3日、晴れてNintendo Switch 2/Xbox Series X|SおよびMicrosoft Store on Windows版が発表されたわけだ。

さて、『FFVII リメイク』には、このたび遊べるプラットフォームとしてNintendo Switch 2が追加されている。Nintendo Switchと比較して格段にスペックがアップしたNintendo Switch 2だが、やはり気になるのは最適化の問題だ。弊誌では、スクウェア・エニックスにて本作のディレクターを務める浜口直樹氏にインタビューを実施。『FFVII リバース』のNintendo Switch 2版について、開発にまつわる疑問を訊いてきた。

――本作のアセットはおそらく、PS5やゲーミングPC、 Xbox Series X|S相当の環境を前提に作られていますよね。Nintendo Switch 2で動かすためにどのような最適化を実施したのでしょうか。

浜口直樹氏(以下、浜口氏):
『FFVII リバース』はもともとPC版も視野に入れながら開発していたため、処理負荷のスケーラビリティ自体はある程度考慮した設計になっていました。ただ、Nintendo Switch 2はハンドヘルドモードでは消費電力の制約から利用できるリソースがさらに限られるため、そのまま持っていけば成立するという話ではありませんでした。

特に『FFVII リバース』は『FFVII リメイク』と比較して、オープンワールド化によって一画面あたりのメッシュ数、マテリアル数、背景ストリーミング量が大幅に増えています。結果として、GPUだけではなくCPUやメモリ帯域も含めた全体最適化が必要になりました。そのため今回は、「どこを削るか」ではなく、「何を残すためにどこを再設計するか」という考え方で取り組んでいます。

背景モデルについては、Nintendo Switch 2専用のLODを再設計しています。単純にポリゴン数を落とすのではなく、距離ごとの情報密度やマテリアル構成まで含めて見直しています。また、それらの専用アセットを用いたSwitch 2向けレベルを構築し、シーン単位で最適な構成を取れるようにしています。ライティングについても同様です。影の描画距離やスポットライト数を調整しながら、負荷だけでなく『FFVII リバース』らしい空気感や没入感を維持できるラインを探っています。

正直に言えば、こうした作業に近道はありません。よく「ミラクルポート」と言っていただくこともありますが、実際には負荷を計測し、ボトルネックを特定し、一つずつ潰していく地道な積み重ねです。最終的には、その積み重ねによって『FFVII リバース』の体験をNintendo Switch 2上でも成立させることができたと思っています。

画像はローンチトレーラーより(『ファイナルファンタジーVII リバース』 ロンチトレーラー|Nintendo Switch™ 2 版 / Xbox Series X|S版

――『FFVII』のリメイクシリーズはUnreal Engine 4を使い続けていることが話題になりました(関連記事)。『FFVII リバース』ほどの大作になるとゲーム内のアセットだけでなくUnreal Engineそのもののカスタムやチューンが不可欠かと思います。具体的にどのようなカスタマイズを行っているのかお聞かせください。

浜口氏:
はい、『FFVII リバース』の規模になると、Unreal Engine 4をそのまま利用するだけでは成立しません。特にオープンワールド化によって、描画やストリーミングの要求は『FFVII リメイク』から大きく増加しています。そのためレンダリングやライティングについては、Unreal Engine標準の仕組みに全面的に依存するのではなく、私たちのタイトルに合わせて継続的にカスタマイズを行っています。

具体的には、ライティングシステムの再構築やShaderの最適化に加え、プラットフォームごとの特性に合わせたレンダリングデータの効率化などを実施しています。また、『FFVII リバース』では広大なワールドマップを扱うため、Massive Environmentと呼んでいる独自の大規模ジオメトリシステムも運用しています。思想としてはUnreal Engine 5のNaniteに近い部分もありますが、『FFVII』リメイクシリーズの要求に合わせて独自に発展させてきたものです。

遠景から近景まで膨大な背景データを扱うため、今回のNintendo Switch 2対応でもストリーミング方式やキャッシュ戦略を含めて見直しを行っています。特に今回の移植では、単純に描画品質を落とすのではなく、限られたリソースをどこに使うべきかを再設計する必要がありました。そのため、レンダリング、ライティング、ストリーミングを個別に最適化するのではなく、全体を一つのシステムとして見ながら調整しています。

Unreal Engine 4を使い続けていることについて聞かれることもありますが、私たちにとって重要なのはエンジンのバージョンではなく、目指すゲーム体験を実現できるかどうかです。現在開発中の三部作最終作についてもUnreal Engine 4を継続して使用していますが、この10年以上積み重ねてきた技術資産やノウハウを考えれば、それは非常に合理的な判断だったと思っています。私たちはUnreal Engine 4を単に使っているのではなく、『FFVII』リメイクシリーズの要求に合わせて継続的に拡張してきました。その積み重ねが、今回のNintendo Switch 2対応にも活かされていると考えています。

画像はローンチトレーラーより(『ファイナルファンタジーVII リバース』 ロンチトレーラー|Nintendo Switch™ 2 版 / Xbox Series X|S版

――Nintendo Switch 2はPS5/Xbox Series X|Sと比べてRAMの容量も速度も少ないですが(PS5/XboxSeriesXは16GBだが、Switch2は12GB)、特にCPUの性能にはかなりの差にがあります。単なるアセット品質のデグレードだけでは対応しづらいハードウェア的な不足にはどのように対応したのでしょうか。

浜口氏:
驚かれるかもしれませんが、GPUと比較してCPUやメモリの方が極端に厳しかった……という感覚は、実際のところありませんでした。というのも、Nintendo Switch 2のハンドヘルドモードで大きく制約を受けるのは主にGPU側だからです。もちろんCPU性能やメモリ容量には差がありますが、多くのコンソールゲームはもともと60fpsを前提にCPU負荷を設計しています。そのため、30fpsをターゲットにした場合、理論上は十分成立する余地があります。

ただ、それはあくまで理論上の話です。実際の開発では別の問題がたくさん出てきます。『FFVII リバース』はNPC、背景ストリーミング、アニメーション更新、ゲームロジックなど、多くのシステムが常時動作しているタイトルです。そのため、単純にテクスチャやモデル品質を落とすだけでは作業が成立しません。まずメモリについては、背景モデルやメッシュデータの省メモリ化を進めています。さらにオープンワールド全体で利用するデータのストリーミング方式やキャッシュ戦略も見直し、限られたメモリ容量の中で効率よく運用できるようにしています。

CPU負荷については、NPCやアニメーション処理を中心に最適化を行いました。例えば距離に応じたアニメーション更新頻度の制御や、同時更新数の管理などを行い、プレイヤーが気付きにくい部分の負荷を抑えています。またエンジンレベルではSIMD化の強化や、2パスPGOを含むコンパイラ最適化も導入しています。こうした改善は、ひとつひとつは地味ですが、積み重ねることで大きな効果になります。特にオープンワールドでは平均負荷よりも瞬間的な負荷の跳ね上がりが問題になります。私たちは負荷が集中する条件を計測・再現しながら、一つずつボトルネックを解消していきました。結果として、単なるアセット品質の調整ではなく、CPU、メモリ、ストリーミング、アニメーション処理を含めたシステム全体の最適化によって、『FFVII リバース』の体験をNintendo Switch 2上でも成立させています。

――『FFVII リバース』はとくに都市部のアセットの物量がすさまじいですが、都市部に大して具体的にどのような最適化が実施されたのか教えてください。

浜口氏:
都市部は『FFVII リバース』の中でも特に負荷が集中しやすいエリアでした。背景モデル、NPC、ライティングが高密度に配置されるため、ワールドマップとは異なる最適化が必要になります。まず、背景モデルについてはNintendo Switch 2向けにLOD構成を再設計しています。影の描画距離やスポットライト数も調整し、シーン全体の描画負荷を最適化しています。さらに、NPC数や小物配置についてもエリアごとに見直しを行い、プレイヤーが感じる密度感を維持しながら負荷を抑えています。

ただ、私たちは単純に負荷を下げることを目的にはしていません。街の賑わいや空気感は『FFVII リバース』の体験そのものです。そのため、まず何を残すべきかを決め、その上で最適化を進めていきました。結果として、都市部特有の密度感や没入感を大きく損なうことなく、Nintendo Switch 2上でも成立する形にできたと思っています。

――Nintendo Switch 2はNVIDIAのアップスケーリング技術DLSS(低い解像度をAIの計算で高い解像度に見せる技術)が搭載されたことで、PCゲーマー以外からもDLSSとパフォーマンスへの注目が集まっています。『FFVII リバース』では具体的にどのようなDLSSの設定が行われたのでしょうか?

浜口氏:
『FFVII リバース』では、Nintendo Switch 2版でもDLSSを活用しています。本作は固定解像度ではなくDynamic Resolutionを前提とした設計になっており、描画負荷に応じて内部解像度を動的に変化させています。携帯モードでは内部解像度が1344×756から672×380、TVモードでは1920×1080から960×540の範囲で動作し、DLSSによって最終的な画質を補完しています。

この設計自体は『FFVII リメイク』のNintendo Switch 2版でも採用していた考え方を踏襲しています。ただ、私たちはDLSSのことを、単純に解像度を上げるための技術とは考えていません。『FFVII リバース』のようなオープンワールドタイトルでは、描画距離やライティング、ストリーミングなど多くの要素が同時に負荷へ影響します。そのため、限られたGPUリソースをどこへ配分するかが重要になります。DLSSはそのための手段の一つであり、内部解像度を柔軟に制御することで、フレームレートの安定性と世界の没入感を両立しています。

また、『FFVII リメイク』のNintendo Switch 2版でも話題になりましたが、DLSSと髪の毛のような細い形状との相性については今回も継続して調整を行っています(関連記事)。毛流れや密度に応じてごく軽いブラー処理を加えるなど、できるだけ自然な見え方になるよう最適化しています。私たちが目指したのは、DLSSの存在をプレイヤーに意識させることではありません。ハンドヘルドモードでも据置モードでも、同じ世界を自然に体験できることを重視しています。

――『FFVII リバース』のNintendo Switch 2版において、うまくハードウェアのスペックを活かしているといえるシーンを教えてください。

浜口氏:
個人的には、ワールドマップをチョコボで高速移動している場面が分かりやすいと思います。『FFVII リバース』はオープンワールド化によって、一画面あたりに扱う背景情報量が非常に大きくなっています。遠景の山並みから近距離の植生、地形、ライティングまで常時ストリーミングしながら描画しているため、技術的には非常に負荷の高いシーンです。特にプレイヤーが高速移動していると、読み込むべきデータ量も急激に増えます。そのため、背景LODの切り替えやストリーミング制御、Dynamic Resolution、DLSSなどを組み合わせながら、プレイヤーがロードや処理負荷を意識しない状態を目指しました。

もう一つ挙げると、カームやジュノンのような都市部ですね。多数のNPCや背景オブジェクト、ライティングが同時に存在するため、ワールドマップとはまた違う難しさがあります。実際に負荷とのトレードオフの中で、一部の小物アセットを調整している箇所もあります。テーブルの上の食べ物などが話題になったこともありました。ただ、私たちは「オブジェクト数を揃えること」よりも、「プレイヤーが受け取る体験を揃えること」を優先しています。

すべてをそのまま再現することが難しい場面では、何を残すべきかを考える。その結果として、『FFVII リバース』らしい街の賑わいや空気感、世界への没入感を維持することを選びました。Nintendo Switch 2版の開発を通して強く意識したのは、スペックの違いを見せることではなく、プレイヤーに同じ旅を体験してもらうことです。携帯モードでもTVモードでも、「別のゲームを遊んでいる」と感じさせないこと。そのための最適化の積み重ねが、こうしたシーンに表れていると思います。

――ありがとうございました。

『ファイナルファンタジーVII リバース』は、PS5/PC(Steam/Epic Gamesストア/ Microsoft Store on Windows)/Nintendo Switch 2/Xbox Series X|S/ 向けに発売中だ。

[聞き手:Nobuaki Shibuya]
[編集:Aki Nogishi]

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