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アドベンチャーゲームの革命とも言える『弟切草』と『かまいたちの夜』を皮切りに、他社からも続々と登場したサウンドノベルタイプの作品群。しかし、そのほとんどは圧倒的な完成度を誇った上記二作の影に隠れてしまっていたと言っても過言ではない。

確かに、あからさまにパクったような作品もあるにはあった。では、他が全て語るに及ばないタイトルなのか。答えは、もちろん否だ。

学校であった怖い話

中には、サウンドノベルをベースにしつつも、亜流に留まらない個性をこれでもかと放っていた名作も存在する。その代表例が、パンドラボックスが制作し、バンプレスト(当時)からリリースされたスーパーファミコン用ソフト『学校であった怖い話』(以下、学怖)だろう。同作についてはいずれどこかで語る場を設けたいと思っているため、ここでは多くを語らないが、この作品が持つ独特の雰囲気や作風に魅入られた人間が多いのは事実だ。

今回紹介したいのは、『学怖』の姉妹作とも呼ばれ、マニアの間で話題となったタイトル『晦』(つきこもり)だ。本作は『学怖』の原作者でもある飯島多紀哉氏(旧ペンネームは飯島健男)がプロデュースを務めたことでも知られているが、『学怖』ほど知名度のある作品ではなく、『学怖』のコアファンを中心とした層に受け入れられていた。『学怖』は知っていても、『晦』は知らなかったという方も多いのではないだろうか。
 インターネットの普及で、近年再評価されつつはある本作だが、意外なことに、WiiUのバーチャルコンソールとして配信されているので、プレイするだけなら敷居は低いし、スーパーファミコン版の中古価格も以前に比べれば落ち着いてきている。

さて、では実際のところ『晦』とはどのような作品なのだろう。基本的なシステムはオーソドックスなサウンドノベルを踏襲しており、『学怖』同様、語り部によって、それぞれ話のジャンルも異なる。語り部を選ぶ順番や、選択肢次第でシナリオは様々な展開を見せる。時にはバットエンドになってしまうこともある。ボリュームはなかなかのものだ。

『学話』のシナリオは、タイトルからも想像できるように「学校の怪談」に限定していたものだったが、対する『晦』の舞台は、テレビ局、病院、森林地帯、街の中など、実に様々。語り部も『学怖』は全員が学生だったが(例外はある)、『晦』の語り部は大人から子供まで、年齢もバラバラだ。誤解を恐れずに言うと、『学怖』をワイドにしたバージョンとも言える。

では、『晦』は、なぜ『学怖』ほどの支持を得ることができなかったのか。

『学怖』と言えば、シナリオはもとより、個性的過ぎる語り部が人気を博し、当時のファンサイトでは、新堂誠、風間望、日野貞夫、岩下明美といったキャラクターの二次創作イラストや小説で大いに盛り上がっていた。

一方の『晦』でもそのような現象がなかったとは言えないが、『学怖』に比べるとささやかなものだったと筆者は記憶している。また、「飴玉ばあさん」や、「殺人クラブ」といった、作品を代表するような大人気シナリオが『晦』には少なかったことも、地味な印象を与えてしまった要因だろう。発売時期が1996年と、スーパーファミコン末期だったことも無関係ではないはず。

とはいえ、プロデュースを努めた飯島多紀哉氏のテイストは作品の随所に感じるし、『学怖』の人気キャラクターである風間がゲスト出演するファン垂涎の演出もニクイ。

当時気にはなっていたけど、結局やらずじまいだったという方は、ぜひ本稿を機会にプレイしてもらえたら幸いだ。『晦』の世界で、語り部たちの怖い話に耳を傾けてみるのも乙なものかもしれない。

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