日本最大級のインディーゲームの祭典「BitSummit PUNCH」が5月22日~24日に、京都市勧業館「みやこめっせ」にて開催された。会場にはDouble Fine Productionsが手がける『Kiln』および『Keeper』が出展されており、本稿では開発者へのインタビューをお届けする。

『Keeper』は、“歩く灯台”が主人公のパズルアドベンチャーゲームだ。長い間訪れるものがいない島で、忘れ去られていた灯台が老朽化により崩れ落ちてしまうが、崩れた瓦礫が繋がって灯台の足へと変化する。そして、霊力を帯びた1羽の海鳥と友達になり、美しくも不思議な島を一緒に冒険していく。

灯台は周囲を光で照らす能力を持ち、一方の海鳥は周囲の物を拾い集めたり操作したりできる。本作では、このふたりの能力を駆使しながらパズルを解き、難所を突破していく。そしてふたりの旅路は、やがて奇妙な変化と神秘に満ちた壮大な冒険へと広がっていき、プレイヤーは言葉を使わずに紡がれる物語を通して、幻想的な世界と感情豊かな旅を味わうこととなる。

このたび、そんな本作の開発者へインタビューをおこなう機会に恵まれた。言葉による説明が一切なく語られるアドベンチャーゲームはどのように生まれたのか、プロジェクトリードのLee Petty氏にお話を聞いた。なお、本作は予想外の展開が大きな魅力である。これからプレイするユーザーのために、ゲーム内容についての質問は控えめとなっているのでご安心いただきたい。

パンデミックから生まれた物語

――自己紹介をお願いします。

Lee Petty(以下、Petty)氏:
Pettyです。Double Fineには19年ほど在籍していて、『Keeper』ではプロジェクトリードとアートディレクターを務めています。

――『Keeper』はアドベンチャーゲームなのに言葉や世界説明が一切ないのは驚きました。そもそも灯台が主人公であることなど、どこから発想したのでしょうか?

Petty氏:
2020年頃のパンデミックによってロックダウンがおこなわれ、一人でハイキングに出かけたときに、「もし人類が滅亡したらどうなるんだろう」と考えたのが制作のきっかけでした。「灯台」は、人類に位置を知らせるための存在です。だから、人類が滅亡した世界では存在理由がないんです。ゲームでは最初に灯台に足が生え、人類という目的がなくなった世界でどのように灯台が変化していくのかを描いています。

――なるほど。人類が滅亡した世界で、しかも灯台が主人公のため必然的に言葉もないんですね。

Petty氏:
多くのゲームは「これをやりなさい」という言葉での説明が多く、チュートリアルが分かりやすく作られていますよね。このゲームではそういったものをすべて取り除いて、ビジュアルや音楽を体験してもらったうえで、「このゲームはなんなのか」というものをプレイヤーに委ねたかったというのもあります。

――アドベンチャーゲームでは、キーアイテムを見つけたり、アクションで切り開いたりというものが一般的ですが、このゲームでは灯台らしく光を当てて道を切り開くのが斬新でした。光を使ったギミックを作るのは難しくなかったですか?

Petty氏:
後半でキーアイテムなども少し出てきますが、このゲームでは全体を通して光が重要になっています。人類が滅亡した世界で、「命」が生まれたり回復したりするというのも本作の大きなテーマなので、光を当てることで生命が誕生する様子を表現しています。ギミックとしては、光を自由に動かせるので、プレイヤーがどこにカメラを向けても機能するように、操作感を両立しながら調整するのは大変でした。また、進行に応じてステージの雰囲気も変わっていくので、それに合わせて光の見え方も調整しています。

――本作をプレイして、絵画と3Dの中間のような美しいアートスタイルが印象的でした。Steamでは好評率91%の「非常に好評」を獲得し、「GDC 2026」においてはビジュアルアート部門にもノミネートされていますよね。こうした評価について率直な感想を教えてください。

Petty氏:
凄く嬉しいです。プレイヤーにはこのゲームを通して、普通とは違う体験をしてほしかったんです。心を動かされてほしかったので、プレイヤーにうまく届いて本当に嬉しく思います。

――特徴的なアートスタイルについては、独自エンジンを用いているのでしょうか。どのように開発をおこなっているのか、気になります。

Petty氏:
エンジンはUnreal Engineを使用していますが、社内でペイントブラシストロークという専用のシステムを作成しています。3D画面上の背景や環境に対して、直接ペイントするとライティングも反映されるんです。それによって絵画と3Dの中間のように感じられたのだと思います。

――Double Fineは2019年にMicrosoftの傘下になる前から、『Psychonauts』や『Brutal Legend』など奇妙とも呼べるような独創的な世界観のゲームを数多く作っている印象です。これは会社としての方針なのか、それともクリエイターの意向によるものですか?

Petty氏:
会社としてそういう方針はないですが、会社のスタイルとしてそういったゲームに惹かれた人が集まってくるんです。なので、普通とは違う体験を与えるゲームを作りたいと考えてる人が多いですね。

――『Keeper』は言葉のない静かな作品で、半年後に発売された『Kiln』は賑やかなマルチプレイゲームとなっていて、言わば真逆のゲームだと思います。お互いに意識することはありましたか?

Petty氏:
『Kiln』のDerek(プロジェクトリードのDerek Brand氏)とは、一緒のプロジェクトでかかわったこともあります。同じスタジオにいるので、会社の知識としてお互いに技術を共有したりすることはありましたね。いい影響を与えあっていたと思います。

―― 最後に、日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。

Petty氏:
言葉によって語られる作品は、言語の壁によってプレイするのが困難であったり、翻訳によってニュアンスが変わってしまったりする場合があります。ですが、『Keeper』は言葉のないゲームです。アートやアニメーションによって、我々の伝えたいものがそのまま伝わると思います。是非プレイしてみてください。

――ありがとうございました。

『Keeper』は、PC(Steam/Microsoft Store)/Xbox Series X|S向けに発売中だ。Xbox/PC Game Pass向けにも提供されている。

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