ストライキを起こされたゲーム企業が労働組合の批判サイトを設立、ゲーム声優の待遇改善について反論

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先日、米国の労働組合SAG-AFTRAによるストライキの対象になったゲーム企業数社は、組合側の運営方針と強硬姿勢に反論する合同ウェブサイトを立ち上げた。その中で企業側は、インタラクティブメディア協定の改善交渉において双方が提案した内容に大きな違いはなかったとして、実際にゲーム業界で働く組合メンバーの意見も取り入れずに不必要なストライキに踏み切ったことは軽率であると批判した。これに対し組合側は、“胡散臭いウェブサイト”を使ったSAG-AFTRAの商標権侵害を直ちにやめるよう企業側に通告している。

 

妥協内容はストライキに値するか

SAG-AFTRA(Screen Actors Guild‐American Federation of Television and Radio Artistsの略)は、映画・テレビ・ゲーム業界に携わる俳優や声優、ジャーナリスト、ラジオ番組のパーソナリティを代表するアメリカの労働組合。2012年の発足以来、およそ16万人が加入している。先月24日、過去18か月にわたってインタラクティブメディア協定の見直しを求めてきた改善交渉が決裂したことを受けて、組合側はElectronic Artsをはじめとした締結企業を対象にストライキへ踏み切った。その背景には、ゲーム業界で活躍する声優および俳優の待遇が20年以上も前に定められたものであり、急成長を遂げた市場規模と技術革新に伴って演者の負担だけが増加してきた現状がある。

組合側と企業側が最後まで合意にいたらなかった項目は、主に契約内容の透明性と二次報酬についての2点だった。自社製品の開発に俳優や声優を起用する企業は、依頼する配役が暴力表現や性的コンテンツを含む不適切な内容に関係している場合、その可能性をあらかじめ通知した上で契約を結ぶ。しかし、実際に仕事を引き受けるまで演者は自分が携わるゲーム内容をほとんど知らされないのが通例である。結果として知識や経験に基づいた決断が難しい状況を生み出している。二次報酬については、企業側がセッションの回数に応じたボーナスを支払うという形で合意にいたったが、ボーナスの内訳をオプション制にするという組合の要求は受け入れられない結果に終わった。

インタラクティブメディア協定ストライキ
インタラクティブメディア協定ストライキ

今回のストライキ決行を受けて、Activision PublishingやElectronic Arts Production、Disney Character Voices、Take 2 Interactive Software、WB Gamesなど、ゲーム作品にプロの俳優や声優を起用している締結企業9社は、Video Game Companies名義で連立グループを発足。SAG-AFTRAの運営方針を批判するキャンペーンサイトを立ち上げた。その中で企業側は、ゲーム声優の待遇改善について提案した内容はほとんど組合の要求どおりだったと反論している。たとえば、報酬に関して組合側が年3パーセントずつ3年間の向上を求めたのに対して、企業側は最初の1年で9パーセントの増加を提案している。また、収録が複数回におよぶ主役演者には追加報酬を初めて導入するとも打診。これらの提案に妥協点を見出そうとしなかったのは組合側であるという主張だ。

くわえて、契約内容の透明性と声優が抱える身体的負担については、SAG-AFTRAがストライキの主な理由に掲げている事実に反して、企業側は現状を理解した上で概ね要求どおりの内容で合意にいたったと真っ向から反論している。なお、先月18日の時点で出された金銭的な待遇改善の提案は12月1日が合意の期限であり、組合側がこれに批准しない場合は前述した9パーセントの報酬増加も破棄される。これらを踏まえて企業側は、交渉のテーブルに置かれた提案内容について、組合側がメンバーの投票によって結論を出すべきだと指摘。実際に現場で働くゲーム声優が妥協案を目の当たりにすれば、ストライキへ踏み切ることに何のメリットもないことに気が付くはずであると説明した。

これに対しSAG-AFTRAは真っ向から対立。業界メディアPC Gamerの問い合わせに対して、締結企業のプロモーション担当者および交渉代理人へサイトの停止を要求した旨を明らかにした。「ゲーム企業がウェブサイトでSAG-AFTRAの商標を使って混乱を招く可能性に加えて、姑息な戦術を試みるばかばかしさから、組合の協議会は胡散臭い偽サイトを停止するよう督促状を発しました」。確かに、昨年10月にストライキの実行権限を承認投票で可決したこと同様、交渉内容についてもメンバーの意見を反映させるべきだという企業側の主張も一理あるのかもしれない。しかし、2年近くも粘り強く交渉を続けてきた組合にとって、まだゲーム業界がプロのパフォーマーを起用し始めたばかりだった黎明期の常識を根底から覆したいという執念があったことは確かだろう。同組合がストライキを決行してから記事執筆現在ですでに12日が経過している。膠着状態はしばらく続きそうだ。

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