「ゲーム開発費は高すぎ、ハードは部品が足りない」業界の重鎮らが”アタリショック以来の危機”と警鐘鳴らす。いまやAAAゲーム開発は最大600億円規模とも

ゲーム業界の構造的問題について警鐘を鳴らす、複数の業界関係者の発言が注目を集めている。

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イギリスの老舗ゲーム誌「Edge」は2026年11月号の特集にて、ゲーム業界の構造的問題について複数の業界関係者の発言をまとめたインタビュー記事を公開。各所で注目を集めている。同誌では「Crash 2.0」と題し、現業界の危機的状況を1980年代にアメリカで起こったゲーム産業の市場崩壊、いわゆる“アタリショック”になぞらえ、AAAタイトルをはじめとした巨大かつ高コストな開発構造はもはや限界にあるといった意見を紹介。GamesIndustry.bizなど複数の海外メディアがその内容を報じている。

「Edge」は1993年にイギリスで創刊された老舗のゲーム雑誌だ。辛口なレビューやゲームデザインについての特集にくわえ、業界の根深い問題についても扱うことで知られている。今回の特集記事では、同誌にて寄稿編集者を務めるAlex Spencer氏が9人の業界関係者にインタビューを実施。昨今のゲーム業界についてさまざまな見方が語られるなか、特に注目されているのは、旧来指摘されていた開発費の高騰にくわえ、AI需要により半導体がひっ迫するなかで、ゲーム業界とデータセンター事業者の間で部品調達競争が激しくなっているという指摘だ。


AI需要の影響と開発費高騰のダブルパンチ

『Fortnite』やUnreal Engine、Epic Gamesストアなどを展開するEpic Gamesの創業者兼CEO、Tim Sweeney氏は「Edge」のインタビューのなかで、業界がAAAゲーム開発の高コスト化やハードウェアの部品不足など「内外からの課題」に直面していると説明。同氏はこうした状況を「予想外の深刻な混乱(It’s an unexpected, severe disruption)」だとして危険視している。特にハード面での供給不足については、「AI事業者は、あらゆる部品でエンターテイメント産業全体の入札額を上回っている」とコメント。AIの基盤システムや学習ためのデータセンターの構築など、大規模な資金の投入によりゲーム業界などの優先順位が相対的に低下していると明かした。

Sweeney氏は結果として約4倍に高騰しているRAMやストレージ部品の価格が、今後更に上昇する可能性も捨てきれないとし、この供給不足が今後3年は続くという見方を示している。同氏は、将来的には世界需要を満たすほどの巨大な工場群がいずれは建設されるだろうと語り、それが唯一の解決策だとコメントしている。

また、MMORPG黎明期を代表する『Ultima Online』のリードデザイナーを務め、Playable Worldsの現CEOであるRaph Koster氏は、膨らみ続けるゲームの開発費について、いずれ破綻を招くと長年警鐘を鳴らしていた。同氏は2005年頃にはゲーム開発の予算が10年ごとに10倍に膨れ上がると予想し、実際に2017年のKoster氏の試算では過去30年間にリリースされた250のタイトルについて見立て通りの結果が得られたという。

物価のインフレを考慮した同試算では、コンソールやPC向けのAAAゲームの開発費は1990年代半ばに約100万ドル(当時のレートで約1億円)で、2005年にはおよそ1000万ドル(当時約11億円)となり、2015年には1億ドル(当時約121億円)に達していた。なお現在のAAAゲームの予算規模については、Tim Sweeney氏曰く2億5000万ドルから4億ドル(現在のレートで約383億円~613億円)と見積もられているそうだ。1990年代半ばから現在までに約400倍にも膨れ上がったAAAゲームの開発費は、年率換算で約20%の成長率を30年ほど続けた計算になる。これは単純な物価上昇だけでは説明しづらい規模感だ。


大作ゲームのこれから。成功のハードルは低いほうがいい?

こうした莫大な予算規模に対し、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン(SCEJ)や、SCE America(SCEA)の社長を歴任し、PS4世代のPlayStation事業を牽引してきたShawn Layden氏は、より低コストなゲーム開発を重視すべきと語っている。同氏はインタビューにて、「”5000万ドル(約8億円)しか稼げない”と言われたら”それでいい”というように、5000万ドルの売上を”悪いこと”ではなく”良いこと”とみなせるモデルを見つけるべきだ」とコメント。開発費を低く抑えれば、たとえ金銭的な成功の確率が低くてもゲーム開発を支えていくことができると述べている。

またLayden氏は、見た目は華やかでも体験やストーリーに一切影響しない要素を「見せかけの芸(party trick)」と呼び、「歩いて横断するのに45分もかかるような世界を丸ごと作り込む必要があるのだろうか」と“視覚的な映え”のようなものに多大なコストと時間をかけることの必要性に疑問を投げかけている。もちろんゲームによっては美しい景色や作り込まれた世界観そのものが魅力となるものも存在するが、同氏が指摘しているのは、そうした体験や情感などに一切のプラス要素を与えず、確たる理由も見当たらないような要素を指しているとみられる。

「Edge」の特集記事ではこのほか、Tencent Gamesビジネス開発ディレクターを務めていたAmir Satvat氏の発言も紹介。同氏によれば、AIの利用によってゲーム開発に携わる人員の削減が行われたものの、一部では減らし過ぎたために再雇用の動きもみられるという。AIが人間の開発者を完全に代替し、新たなプラットフォームをもたらすような技術ではないとする意見も紹介されており、AIを使えば即座に生産性が向上するという単純な図式では必ずしもないことがうかがえる。一方でゲーム開発者のレイオフの動きは欧米を中心に深刻な問題となっており、同氏は「北米や西欧を拠点とするAAAゲームの開発者にとっては1983年の“アタリショック”に匹敵するほど深刻な状況だと思う」と述べている。

ちなみにSatvat氏は2022年頃から「Always Supporting the Games Community(旧Amir Satvat’s Games Community)」というゲーム業界における求職者支援コミュニティを運営している。このコミュニティはボランティアを中心に運営されており、Web上の求人データベースの提供や、履歴書・ポートフォリオのレビューにくわえ、模擬面接に至るまで包括的に開発者を支援している非営利の組織だ。アメリカを中心に活動する同氏が、欧米を「昨今の雇用危機の震源地(That is ground zero for destruction)」とする見方には一定の信頼がおけると言える。

昨年から続くAI需要の高まりにより、メモリやGPUをはじめとするPCパーツの価格は高止まりを続けている(関連記事1関連記事2)。個人購入のみならずゲーム機器の製造にも影響が及んでおり、各所の専門家の指摘のとおり解決には年単位の時間がかかるのだろう。Tim Sweeney氏をはじめ、インタビューに参加した業界関係者はこうしたAI特需の影響について、まさに業界にとっての“青天の霹靂”であり、かねてから指摘されていたAAAゲームの予算高騰問題を絡めて警鐘を鳴らしているかたちだ。

多数のユーザーの期待を一身に背負うようなAAAゲームを作る際には、それにふさわしいコンテンツ量と品質が求められがちだ。しかし長大な作業を予定通りに実現するためには多くの人員と機材が必要になる上、広告やマーケティングにも当然力を入れなければならなくなる。AAAゲームの開発費が高騰を続ける傍らで、ハードウェアの部品の供給がさらにひっ迫し、製品価格の引き上げなどに繋がればそうした苦境が一層深まる可能性はある。なお、2023年から2024年にかけて業界でレイオフが多発していた時期には、ゲームコンソール市場が新しい消費者を十分に獲得できず、停滞していくことが業界の懸念として語られていたこともあった(関連記事)。部品調達においてAI事業が高い競争力を持つなか、現在ではコンソール向けのみならずPCゲーム市場にとっても新規層獲得のハードルは高まっていると言える。開発費の高騰と半導体需要の増大というふたつの課題に、各社がどのように対応していくのかは注目されるところだろう。

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Kei Kano
Kei Kano

キャラクリが出来て没入感のあるゲームが好きです。ゆっくり歩いて世界観を味わったり、自分なりに脳内設定を組み上げたりして遊んでます。

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