レイオフ相次ぐゲーム業界、XboxのボスPhil Spencer氏は「コンソール市場の“成長頭打ち”」に危機感。開発費の肥大化と、コスト回収の難しさ

ゲーム業界では欧米の企業を中心に従業員のレイオフが相次いでいる。この状況について、マイクロソフトのXbox事業を率いるPhil Spencer氏が、自身の見解を述べた。

ゲーム業界ではここ数年、欧米の企業を中心に従業員のレイオフ(一時解雇)が相次いで実施されている。この状況について、マイクロソフトのゲーム部門CEOでXbox事業を率いるPhil Spencer氏が、自身の見解を述べた。海外メディアPolygonが報じている。

これまでには、Epic GamesやUnity、Embracer Group、EAなどで大規模なレイオフが実施され、小規模なものもすべて含めると、2023年には累計約1万人が解雇されたという。また2024年になってもこの流れは止まらず、たとえばマイクロソフトが1900人の人員削減方針を示し、SIEも約900名の削減に着手することを報告。今年は、すでに約8000人のレイオフが見込まれているとのこと(Game Industry Layoffs)。

Phil Spencer氏


アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコで先日開催されたゲーム開発者会議Game Developers Conferenceにて、海外メディアPolygonの取材を受けたマイクロソフトのPhil Spencer氏は、ゲーム業界でレイオフが相次いで実施されていることについて見解を述べた。Spencer氏は背景として、ゲームの開発費が高騰し、大型タイトルでは3億ドル(約460億円)にも上ることがある状況を説明したうえで、いくつかの問題点を指摘している。

ひとつには、創造性の危機が挙げられた。かつては数十万本売れれば良かったところ、開発費の高騰によって数百万本を売る必要が出てきたことで、パブリッシャーは収益のリスクを抑えようとし、新規IPや新しい種類のゲームへの投資を避けるようになっているという。Spencer氏は、このままではゲーム業界の礎である創造性が損なわれてしまうと訴えた。また、コンソールの独占タイトルが抱える負担についても指摘。一般的に、独占タイトルにはハードにかかるコストを補う役目があり、より多くの収益を上げることが求められる。そのため、開発費が肥大化するほど、そうした収益獲得へのプレッシャーが高まっていくとのこと。

もうひとつ、ゲームコンソール市場の停滞についても語られた。Spencer氏によると、各コンソールは売れ続けているものの、多くの場合は既存ユーザーがアップグレード(買い替え)しているだけであり、この1年は市場が成長していないという。同氏は、新しい消費者がいないため、ほかのパブリッシャーやプラットフォームから消費者を引き込んでこない限り、成功することはできないと述べる。

Spencer氏は、マイクロソフトによる1900人のレイオフの背景について、自身が説明したこうした問題点がかかわる部分があるとコメント。特に市場が成長していないことに関して、来年には市場規模が縮小することが見込まれるなか、投資家に自社の成長を示さなければならない上場企業という立場としては、収益が伸びないのであれば、コスト面が問われることになると説明した。

『HELLDIVERS 2』


今回Spencer氏が述べた問題意識は、業界内でも共有されているようだ。かつてSIEワールドワイド・スタジオ(現PlayStation Studios)のチェアマンを務めたShawn Layden氏は、SIEがPS5/PC向けにリリースした『HELLDIVERS 2』の成功に触れ、ゲームの開発に2億5000万ドル(約380億円)を費やす場合、10%でも多くの消費者に売ることが求められるとし、独占リリースが難しくなってきている状況を指摘している(GamesBeat)。

またSIE会長兼暫定CEOの十時裕樹氏は今年2月、自身が代表執行役社長COO兼CFOを務めるソニーグループの決算発表にて、ファーストパーティタイトルの“強いタイトル”を、PS向けだけでなくPCなどにも展開することを積極的に追求していきたいとコメント。これにより、マージン(利ざや)の大きな改善に繋げたいとした(関連記事)。実際同社はPC向けリリースを増やしており、またPS VR2を2024年内にPCに対応させる方針も明らかにしている。

マイクロソフトにおいても先日、『Hi-Fi RUSH』『Sea of Thieves』『Grounded』『Pentiment』といったコンソール独占タイトルを、PS5やNintendo Switch向けに順次リリースすることを発表。独占戦略について各社さまざまな模索がおこなわれていることがうかがえる。こうした取り組みの背景では、Phil Spencer氏のいう開発費の高騰や市場の停滞を主な理由とするレイオフ、およびそれを含むコストの削減が遠からず繋がっているということのようだ。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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