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『クレイジータクシー』はなぜ新作を開発することができたのか?25年の空白を経て、新作『クレイジータクシー:ワールドツアー』が実現した理由を開発者に訊く
『クレイジータクシー:ワールドツアー』の開発者インタビュー前編。なぜ今になって新作が実現したのか。

『クレイジータクシー』は、プレイヤーがタクシードライバーとして乗客を目的地へ運んでいくゲームだ。制限時間内に目的地へ到着できるかが問われるという意味では、本作はレースゲームの範疇に入るものの、ノリのいい楽曲を聴きながら激しく自由に運転できるドライブアクションゲームとしての要素が強い。セガが手がける『クレイジータクシー』の約25年ぶりのシリーズの新作として、『クレイジータクシー:ワールドツアー』が2027年に発売される。各種トレイラーなどで情報が順次発表されており、本作への注目度が高まっているところだ。
そんな『クレイジータクシー:ワールドツアー』の開発者にインタビューする機会を、弊誌は得た。クリエイティブプロデューサーの菅野顕二氏とディレクターの百渓曜氏に本作に関する興味深いお話の数々をうかがったので、前後編に分けてその内容をお伝えしたい。本稿は前編にあたり、『クレイジータクシー』が久しぶりに復活する理由や開発の経緯についての話を訊いた。

奇跡的なめぐり合わせで復活を果たす『クレイジータクシー』
――お二人の自己紹介をお願いいたします。
菅野顕二氏(以下、菅野氏):
『クレイジータクシー』シリーズの初代作から、開発に携わっている菅野顕二(かんのけんじ)です。僕は、『クレイジータクシー』シリーズの企画立案から携わっています。第1作目の『クレイジータクシー』では、ディレクターとゲームデザイナーをしていました。第2作目の『クレイジータクシー2』と第3作目の『クレイジータクシー3 ハイローラー』(2002年)の開発にも携わり、『クレイジータクシー2』からはプロデューサーも担当しています。新作の『クレイジータクシー:ワールドツアー』では、クリエイティブプロデューサーとして開発に参加しています。
百渓曜氏(以下、百渓氏):
『クレイジータクシー:ワールドツアー』でディレクターを務める百渓曜(ももたによう)と申します。私は『クレイジータクシー』シリーズの過去作で開発に参加した経験はありませんので、今回の新作で初めて『クレイジータクシー』の開発に携わることになります。
本作に携わる前は、『ボーダーブレイク』でディレクターをしていました。元々私はアーケードゲーム畑にいましたので、『ボーダーブレイク』のほかにもさまざまなアーケードゲームの開発に携わっていました。
――『クレイジータクシー3 ハイローラー』から数えて約25年ぶりのシリーズ新作となる『クレイジータクシー:ワールドツアー』ですが、どのような経緯で開発が決まったのでしょうか。
菅野氏:
いくつかのことについて、奇跡的にタイミングが合ったことで『クレイジータクシー』新作の開発が決まりました。僕が考えていた『クレイジータクシー』の新作のイメージが固まった時期、当時の上司が『クレイジータクシー』を復活させたいと考えていた時期、そしてセガが過去のIPの新作を作りたいと思い行った時期のタイミングが重なったんです。3つのタイミングがそろって『クレイジータクシー』の新作を開発できるようになったとき、私はビンゴで当たったような気持ちになりました(笑)
『クレイジータクシー』新作の話が出ていたときはちょうど会社再編のタイミングでもあったので、開発メンバーを集めやすかったことも大きな影響を与えました。本来はここまでタイミングが合うことは珍しいことなんですよ。仮に会社が新作を出したいと思ったとしても、作り手が集まらないというタイトルも存在します。
その逆で作り手がやりたいと思っても、会社のそのときの方針で新作を作ることができないこともあります。そうしたミスマッチは、ゲーム会社でいくつもあるんです。今回のようにスルスルと話が決まったことは、みんなが同じ目線で『クレイジータクシー』について思いを馳せていた証しだと思います。
僕も『クレイジータクシー』について、ずっと考えていたひとりです。僕は開発者として、セガのさまざまな部署を渡り歩きました。アーケード、コンシューマー、スマートフォンとさまざまなビジネスをやらせていただきました。そうした経験をしたうえで、『クレイジータクシー』の新作をコンソールタイプのコンテンツとして世に出したいとずっと思っていたんです。いろいろなタイミングが奇跡的に合ったので、The Game Awards 2023で『クレイジータクシー』の復活を宣言することができました。
百渓氏:
開発者になる前から、私はアーケードゲームが好きでした。『クレイジータクシー』もアーケード版から好きでしたし、セガに入社するときも『クレイジータクシー』シリーズの開発者として菅野さんのことをすでに知っていました。そこで、今回の『クレイジータクシー』新作の開発チームが立ち上がると聞いて、私も参加したいと希望したんです。
菅野氏:
『クレイジータクシー』シリーズの新作を作ると決まったときに、百渓が開発に参加したいと言ってくれているのを知ったんです。そこで、私は当時の上司に百渓を『クレイジータクシー』シリーズ新作のチームに入れてほしいとお願いをしました。僕と百渓はそのときに実際に話し合って、一緒に新作を開発したいと意気投合したんです。僕の上司と百渓の上司がそれを許してくれたので、『クレイジータクシー:ワールドツアー』を現在の体制で開発をすることができています。
何度か百渓と話しているうちに、僕は百渓に『クレイジータクシー』新作で全体のディレクションをしてほしいと思うようになりました。そこで僕はディレクターになってほしいとお願いしたのですが、百渓の返答は「ちょっと嫌だな」というものでした(笑)
百渓氏:
最初に断ったのには理由があるんです(笑)私は家庭用ゲームのディレクターを担当した経験がありませんでした。『クレイジータクシー』新作という規模の大きなゲームでディレクターを務めることについて、私は正直に「自信がありません」と菅野に伝えたんです。その一方で『クレイジータクシー』新作の開発に携わりたいという気持ちは強いものでした。そうした意欲が最初からあったので、最終的にはディレクターを務めることになりました。
私が『クレイジータクシー:ワールドツアー』のディレクターではありながらも、菅野がクリエイティブプロデューサーとして本作に携わっていることにとても助けられています。菅野はディレクターとしていくつもの作品に携わった経験を持っているので、開発を知っているプロデューサーとして頼りになる存在です。開発現場を知っていると、スムーズにコミュニケーションを取ることができるんです。菅野といつでも相談できる開発体制を構築できたので、私はディレクターを務めることができたと思います。


若手スタッフと意見をぶつけ合った新作は自信のあるものに
――『クレイジータクシー:ワールドツアー』の開発チームでは、ベテランと若い世代はどのくらいの割合で構成されているのでしょうか。
菅野氏:
『クレイジータクシー』の過去作に携わった経験を持っていて、新作の『クレイジータクシー:ワールドツアー』にも携わっている人間は本当に少ないです。僕を含めたとしても、思い当たるのはひとりかふたりといった程度です。ベテランと若い世代の割合にすると、99%が『クレイジータクシー』のオリジナルに携わっていない世代の開発者が占めています。
前作の『クレイジータクシー3 ハイローラー』が2002年に発売されたタイトルで、そこから長い時間が過ぎ去っていきました。その間にもといた『クレイジータクシー』チームの開発メンバーはほとんど残っていませんね。
百渓氏:
菅野以外に過去作を当時のリアルタイムで開発に参加していたというメンバーは、『クレイジータクシー:ワールドツアー』の開発チームにはほとんどいません。それでも、初代作に携わった菅野がいることで、『クレイジータクシー:ワールドツアー』がシリーズの続編であることを保証することができます。
菅野氏:
オリジナルのメンバーがいなくなってしまいましたが、本作では様々なスタッフと話をしています。ディレクターの百渓と話し合いをすることは頻繁にありますし、同じようにアートディレクターと打ち合わせをすることも頻繁にあります。
マップ制作については、僕も百渓も開発現場に入って作っていますね。夕方になると毎日のように数か月もマップ制作に時間を費やすこともありました。ミッションの内容について百渓と話すことも多いですし、開発スタッフとはいまでも直接会話することもあります。
――約25年ぶりの新作ということで、過去作をリアルタイムで知らない開発者もチームにいらっしゃると思います。初めて『クレイジータクシー』の開発に携わることができたスタッフが多くいるからこそ、変化できた部分はどのようなことでしょうか。
菅野氏:
僕が考えたビジョンで発信したいと伝えるとき、世代の近い百渓は共感してくれるかもしれませんが、それより若い世代にはすんなりと共感してもらえないようなことも出てくるんですよね。でも、私のいうことに対して「わからない」と応えてくれることで、いい意味で昔の『クレイジータクシー』を壊してくれたんだと思っています。
すぐに伝わらなかったとしても、「こういうマインドを大切にしたいんだと」と話してみると「じゃあ、こうすればいいと思います」と若手の開発者が意見をぶつけてくれるのに助けられましたね。僕のようなおじさん世代と若い子たちの世代が同じ目線で『クレイジータクシー:ワールドツアー』の開発を進められたことで、全世界のすべての世代に新作を送り出せる自信につながったんじゃないかと思っています。

――ある種の大らかさを許容する『クレイジータクシー』シリーズにおいて、現代向けに『クレイジータクシー』をリブートさせるに際してもっとも苦労した点を教えてください。
菅野氏:
僕の個人的な見解になりますが、昨今暗いニュースが多いなかで、笑えてエキサイティングできるコンテンツがあれば喜ぶ人が沢山いるんだろうなと思っています。数多くの人を笑顔にしたいという想いが、僕は一際強かったんです。たくさんの人を笑顔にしたいという方針をスタッフに相談したところ、共感してくれました。僕たちの提供できるコンテンツに触っていただいている瞬間だけでも、笑顔になってもらえればいいと思ってゲームを開発しています。
そうした理想を実現させることは難しいことで、日常は苦労の連続といえるものでした。ただし、それは『クレイジータクシー:ワールドツアー』だけでなくどのタイトルでも一緒だと思います。苦労を嘆くよりも、日々の開発を通じて目指しているユーザー体験を届けたいという気持ちの方が強かったです。結果としては、開発チーム全体で共有したユーザー体験を追及したことが、『クレイジータクシー:ワールドツアー』をいいゲームにしたと思います。私は当初の考えを貫くことを決めましたが、ほかの開発メンバーはきっと苦労した部分もあったと思いますよ。
百渓氏:
『クレイジータクシー』は何かについては、菅野とかなりディスカッションを繰り返しました。『クレイジータクシー』はファンタジーではなくてリアルをベースにしているんですけど、どこか飛び抜けた雰囲気を持つゲームなんですよね。そうしたコンセプトがあるなかで、どのような遊びにしたらいいのかについては検討を重ねました。良さそうだと思いついたアイデアがあったとしても、それは『クレイジータクシー』に逸脱していないだろうかとかなり時間をかけて考えることもありましたね。結構大変でした。
『クレイジータクシー:ワールドツアー』には、考え抜いたこともあり、従来の『クレイジータクシー』にはない遊びが沢山あると思います。それらは『クレイジータクシー』から一見逸脱するように思えたとしても、プレイしてもらうとこれは『クレイジータクシー』と感じてもらえるはずです。最近はゲームイベントなどで試遊する機会を提供できるようになって、『クレイジータクシー:ワールドツアー』はまさに『クレイジータクシー』の新作といってくださる人の声を聞くことができるようになりました。そうした反応をいただけて、とてもうれしく思います。


『クレイジータクシー:ワールドツアー』は、PS5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch 2/PC(Steam/Microsoft Store)向けに2027年に発売予定。弊誌は先行プレイの感想記事も掲載しているので、そちらもぜひ読んでほしい。『クレイジータクシー:ワールドツアー』開発者インタビューは後編へ続く。
[聞き手・執筆:Ryuichi Kataoka]
[編集:Ayuo Kawase]
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