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「ゲームアカウント使用権の相続」を認める中国の裁判例が脚光浴びる。利用規約でも排除できない、ゲーマーのデジタル遺産
利用規約の条項にかかわらず、中国ではゲームアカウントの相続権を認めた判決があると紹介され、話題となっている。

多くのゲームプラットフォームでは、利用規約によってアカウントの譲渡は禁止されており、仮にアカウント所有者が亡くなった場合でも、相続人に引き継ぐことは認めていないとされる。しかし中国ではアカウントの相続権を認めた判決があると紹介され、話題となっている。
たとえばSteamでの利用規約では、ユーザーのアカウントは厳重に個人的なものであるとされており、Valveが明確に許可した場合を除き、アカウントの利用権の譲渡を禁じている。この条項はアカウント利用者が亡くなった場合も例外とはならず、たとえ遺言での指定があっても、Steamサポートは対応できないという(関連記事)。またSteamで提供しているコンテンツはライセンス供与されるものであり販売ではなく、あくまで利用権が付与されるのみで、ユーザーに所有権が付与されることはないと明記されている。こうした記載はSteamに限ったことではなく、Epic Gamesストアなど多くのプラットフォームに共通している条項である。
しかしながら中国の裁判所は、ゲームアカウントは相続可能であるという判決を出しているという。海外掲示板RedditのユーザーSlawrfp氏は妻が中国の弁護士であると語り、昨今ゲームファンのあいだでデジタル所有権についての話題が活発化しているとして、中国における判例をいくつか紹介。中国の判例を検索できる公的サービス「中国裁判文書網(China Judgements Online)」のリンクも添えつつ、判例について解説している。

Slawrfp氏が紹介したうち、2026年6月に北京市石景山区人民法院が下した判決については北京日报も報じている。この裁判では、ゲームアカウントの所有権が争点となった。とある亡くなったゲーマーの母親である陈氏が、故人が生前にオンラインゲーム・プラットフォームサイト上に所有していた87のゲームアカウントを相続しようとし、ゲーム会社にアカウントの名義を自分に変更するように求めた。しかし同社は、利用規約に基づくとアカウントの所有権は同社にあり、ユーザーは利用権を一時的に付与されているにすぎないと主張し、要求を断って裁判となった。なお同社はゲームアカウントには個人と結びついた人身属性があるとして、相続可能な遺産の範囲に含めるべきではないとも主張していた。
同件について裁判所はまず、ゲームアカウントにはキャラクターデータや仮想アイテム、ゲーム内資産が存在し、使用価値と経済的価値の両方を有するため、これは中国法における仮想財産に該当すると判断。そのうえで、ゲーマーはアカウント上の関連仮想資産の開発に時間・労力・資金を投じており、利用者に付与されている使用権には、財産権をともなう民事上の権利が認められるとした。
そしてゲームアカウントの使用権は財産的利益を中核としており、実名認証にともなった一定の人身属性は認められるものの、一身専属性を有するものではないと説明。ユーザー規約も所有権が運営事業者に帰属することを定めているにすぎず、相続人がアカウントの使用権を相続する権利を排除していないとの見解が伝えられた。結果として裁判所は、上述した87個のゲームアカウントの使用権について陈氏が相続することを認め、ゲーム会社に対して実名認証情報の変更手続きに協力するように命じたという。

判決を下した张英周裁判官は判決にあたり、まず現実としてアカウントの譲渡や相続を禁止するプラットフォーム規約は多数存在していると指摘。そのうえで利用規約の実効範囲について考察し、事業者はアカウントの所有権そのものを規約で定めることは可能とした。しかしながら利用者の資金や努力によって形成されたアカウント内の仮想財産については財産的利益が生じており、利用規約によって相続権を含む、その合法的な権利を排除することはできないと判断した。そして、たとえネットサービスそのものと明確に区別できない仮想財産であっても、アカウントの使用権に付随する財産的利益の相続権を制限はできないという解釈を下している。
そして裁判官補佐の卢丹氏はオンラインサービス事業者に対し、利用規約を策定する際は定型条項を利用してユーザーの法的権利を剥奪あるいは制限してはならず、法に基づき相続人が関連アカウントに付随する財産的利益を相続することを保証しなければならないと説明。一方ユーザーに対しては、アカウントを登録する際は規約を精査し、ユーザーの合法的権益を尊重しているネットサービスを優先的に選択するよう注意を促し、遺言などを通じて相続の意思を明確にしておくように勧めた。

ゲームアカウントなどのいわゆるデジタル資産は比較的新しい存在ということもあり、法的扱いについては各国で法整備や検討が進められている状況にある。各国での判例も少ないなかで、先述したSteamの例のようなプラットフォーム側の利用規約や対応方針から“アカウントは相続できない”といったイメージも強いだろう。
ただ今回はSlawrfp氏によって、中国における比較的新しい判決が紹介され、注目を集めているかたちだ。今回の判決はアカウントの所有権は運営会社に帰属することを認めつつ、所有権とは別にアカウント使用権に付随する財産的利益の相続性を認めた点が興味深い。さらに利用規約でもユーザーの相続権を実質的に排除することはできないとの見解も示されている。
またSlawrfp氏によれば2026年6月以前にも類似の判例は存在していたという。少なくとも中国においては、アカウントの使用権に付随する財産的利益などが相続可能な仮想財産として着実に認められつつあることがうかがえる。
あくまで中国国内における事例であり、日本や世界各国にただちに影響を与えるわけではないが、昨今ではオンラインゲームがサポート終了に伴ってプレイ不可になる問題や、ゲームのデジタル販売の主流になっていることなどをきっかけに、デジタルコンテンツの所有権・利用権をめぐる規約などが議論の俎上に載せられることも増えている。今後も世界各国でこうした事例をもとにした検討が続けられていくのだろう。
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