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「ゲーム開発でいくら稼いだ?」という疑問に、開発者たちが生々しく回答。“稼ぐ”までの厳しさと、“稼がない”選択肢
「インディーゲームでいくら稼いだの?」という素朴な疑問に対し、開発者が回答をよせている。

海外掲示板のRedditで、インディーゲーム開発者たちのリアルな収益事情が注目を集めている。あるRedditユーザーがゲーム開発者の“現実”に興味があるとして、「インディーゲームでいくら稼いだの?(How much did your indie game earn?)」と開発者に収益事情を尋ねるポストを投稿。それに多数の開発者が反応し、売上額や開発期間、制作背景などを事細かに共有した。インディー開発の実情が垣間見えるスレッドとして話題となっている。
まずはスレッド内の投稿からの筆者の集計をお伝えしよう。確認したところ、売上を報告している開発者は約50人にのぼり、そのうち売上100ドル(約1万6000円)未満だという開発者は9人確認できた。また、100ドル以上1000ドル(約16万円)未満は10人、1000ドル以上1万ドル(約160万円)未満は17人で、この層がもっとも多い。なお、このうち5000ドル(約80万円)以上を達成している開発者は6人だけだった。さらに、1万ドル以上10万ドル(約1600万円)未満を売り上げた開発者は7人確認されている。そして10万ドル以上に到達した開発者は4人のみで、最高額はsn0bil氏の97万ドル(約1億5000万円)だった。
また、開発期間を公表している開発者は一部に限られるものの、そのなかでは、1年以内の開発期間でリリースされた作品が半数近くを占めていた。 さらに、それ以上のケースでも多くは1〜2年程度に収まっている。5年以上の開発を報告しているゲームはわずか5件のみで、最長はUnculturedGamesことTapio氏の『Whispers in the Moss』で、期間は実に12年だった。同氏によれば、本作はフルタイムで働く傍らで趣味として制作していたもので、売上は約3000ドル(約50万円)ながら結果には満足しているという 。
なお、本スレッドで語られる「稼いだ」の定義について、大まかには“売上”とされているが、投稿者ごとに差異がある点については留意されたい。会計上では“売上”から人件費などの経費を差っ引いたものが“利益”とされる。本来両者を同列に扱うのは不適当ではあるが、報告されている金額には“売上”と”利益”が入り混じっており、厳密に区別することが困難であったため、今回は同一に計上している。また“売上”についても、パブリッシャーやSteamへの手数料、税金などを差っ引いた金額なのかその手前の数字なのかは投稿者によって解釈が異なる様子。そのためあくまで大まかな傾向として捉えてほしい。
インディーゲーム開発で生活する難しさ
こうして全体を俯瞰すると、スレッド内の報告者のボリュームゾーンとしては、開発期間は数か月から2年程度、売上は数百ドルから5000ドル前後に収まるケースが多いことがうかがえる。もちろん今回のスレッドに寄せられたのは自己申告の売上であり、またすべての開発者がフルタイムで制作に取り組んでいるわけではないものの、インディーゲーム開発のみで安定した生計を立てる難しさも垣間見える。
たとえば、今回の投稿内で特に高い売上を報告しているDingBat99999氏は、ゲーム本編と4本のDLCを合わせた総売上は20万ドル(約3200万円)を超えているだろうと説明している。一方で開発には3年を要し、純利益は5万ドル(約800万円)程度にとどまったという。大きな売上を記録しても、多額の開発費等によって利益率が圧迫されてしまうケースがあるわけだ。

タイミングも大切
ほかにも、個人開発者のtheboned1氏は8年間にわたるゲーム開発において、利益を400ドル(約6万3000円)しか得られなかったと悔恨を綴っている。これは純利益であり売上ではないとしながらも、投資額が多すぎたために回収は絶対に無理だろうと同氏は述べる。theboned1氏はかつてUbisoftで5年間、AAAゲームの開発に携わっていたというベテランの開発者だ。当時はゲームについて何でも知っているつもりでいたといい、解雇を機に自身のゲーム開発に専念することになったとしている。
そんな同氏が開発していたのは『Shooty Seas: Pirate Ship Game』という海賊をテーマとしたモバイルゲームだった。モバイル市場に着目した背景には、当時のスマホゲームはクオリティの低いもので溢れかえっていたため、フル3Dゲームをリリースすれば市場を席巻できると目論んでのことだった。ところが当時主流だった低スペックなスマートフォンへの最適化に想像以上に時間がかかり、リリースされたころにはすでに『PUBG MOBILE』が世に出た後だったという。こうした経験を踏まえて同氏は“タイミングがすべて”と忠告を残している。

同氏はこの失敗によってキャリアをすべて失ってしまったと悔しさを滲ませる。また、個人による開発だけでなくスタジオの運営も行っていたといい、プログラマーに発生する給料も利益の圧迫に繋がったようだ。当初は数百万ドルの成功を見込んでいただけに、失望も大きかったという。現在はフリーランスの仕事をこなしながら、グラフィックをアップデートしたPC版の制作を目指しているそうだ。
また、異変探し系ホラー『Room 713』を開発したGoragarX氏は、同作の販売本数が350本、総売上が1600ドル(約25万円)だったと明かしつつ、実際に手元へ残った利益はその半分程度だったとして、厳しい収益事情を吐露している。ほかにも232ドル(約3万7000円)の収益からSteam手数料を引くと162ドル(約2万6000円)しか残らなかったと報告する開発者の投稿もある。
スレッド内のレアケースとして、フルタイムの個人開発者であるKaingaDev氏の事例も紹介したい。同氏はデビュー作で実に総額30万ドル(約4800万円)もの売上を記録したものの、パブリッシャーによる投資回収や、各種経費を精算したのち、最終的に利益として手元に残った金額はごく僅かだったという。筆者が確認する限りでは、同氏は今回のスレッド内の報告で唯一、パブリッシャー契約を結んだうえで作品をリリースしたと明かしている点が特徴だ。さらに1か月前には2作目を発売しており、こちらもすでに10万ドル超の売上を記録しているものの、その大半は今回も受け取れない見込みだという。 ただし前回の経験を踏まえ、今回は以前より有利な条件で契約できているようだ。
同氏は開発期間中、パブリッシャーからの前払い金や資金提供を受けることで、発売後の売上だけに依存しない開発体制を築いていると説明している。 実績ある開発者やスタジオに対し、パブリッシャーが資金援助や事前支払いをおこない、ゲームのリリース時にそれを回収するというビジネス構造は珍しくない。
ただしこうした契約ではパブリッシャーの投資額が回収された後も、収益分配がおこなわれることが多い。開発過程での資金面でのサポートや宣伝力などメリットもさまざまあるものの、ゲームが成功した場合に収益を全額受け取ることはできないわけだ。

いっそ売上は気にしない
このように開発スタッフへの給料といった経費や、通常では売上の30%というSteam販売手数料、パブリッシャーへの支払いなど、さまざまな要因から“利益”を上げる難しさがうかがえる。くわえて、その利益に対しても各国の税法に従って課税がかかる。売上があがっていても、思っていたよりも手元に残らなかったというケースは珍しくないようだ。
一方で、夢のある成功例を報告する開発者の投稿も見受けられる。『Hidden in Plain Sight』を開発したAdamSpraggGames氏は、同作によって25万ドル(約4000万円)を稼いだと明かしており、これはスレッド内でも2番目に大きな数字だ。同作はローカルマルチプレイヤー専用のパーティゲームで、開発者自身も認めるとおり、グラフィック面は非常に質素な作りとなっている。同氏もまさかこのようなゲームが売れるとは考えていなかったようだ。

ところが同作を複数のプラットフォームで15年にわたり販売を続けた結果、累計15万本を売り上げ、最終的に25万ドルもの“利益”を得たという。同氏の投稿のリプライ欄には、同作を遊んだというプレイヤーから称賛のコメントが複数寄せられており、実際にゲームの人気が高かったことがうかがえる。さらに驚くべきことに、本作はほぼ予算ゼロ、制作期間わずか1〜2か月ほどで開発されたという。 同氏は引退できるほどではないがと前置きしつつ、想像を遥かに超えた成果だったと語った。ちなみに同氏は本作にアートワークや音楽を無償で提供してくれた人たちに利益の一部を還元しているという。
なお本作は当初、かつてXbox 360向けに提供されていたインディーゲーム配信サービスのXBLIG(Xbox LIVE Indie Games)での販売を予定していたそうで、現在のインディゲーム市場とはやや取り巻く環境が異なる点には留意したい。
Steamでは年々リリースされる作品数も増加しており、2025年には実に2万本以上のゲームがリリースされた(SteamDB)。一方昨年10月時点で、同年に発売されたゲームの実に40%が、売上100ドル未満だったという(関連記事)。100ドルといえばSteamストアページの開設に要する費用であり、仕組み上一定の収益に達すると回収可能ながら、費用を回収できないタイトルが多くあることもうかがえる。
競争も激しくなっているとみられるインディー業界。今回のスレッドはそれぞれ自己申告、かつ先述したとおり“稼ぎ”の定義もまちまちながら、ゲーム開発者の生の声や事細かな報告が見受けられる点で興味深いスレッドといえるだろう。ゲームが売れるだけではかならずしも収益に繋がらない難しさも垣間見える一方で、上述したような成功例のほか、売上にこだわらず「趣味」として続けていくと表明する開発者など、多種多様な声が投じられている。中にはコードをオープンソース化して無料配布しているという収益度外視の開発者も見られ、改めてビジネス目的だけではない、インディー開発シーンの裾野の広さが垣間見えるスレッドとなっている。
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