Activision Blizzardを、自殺した元従業員遺族が提訴。同社および上司による“証拠隠滅”があったとの主張

 

Activision Blizzardが、自ら命を絶った元女性従業員の遺族から訴訟されたようだ。米一般紙The Washington Postによれば、遺族はActivision Blizzardにおけるセクシャルハラスメントが自殺の原因になったと主張。社員による証拠隠滅や警察の不十分な捜査があったと訴えている。

Activision Blizzardは昨年7月より、社内における有害な文化やセクハラ問題の告発が相次いでいた。同社元・現従業員により続々と社内問題について告発がなされ、大規模なデモや抗議活動にも発展。今年1月18日には、四面楚歌の状況となったActivision Blizzardをマイクロソフトが買収することで合意に至った。しかし、一連の問題はまだ解決を見たとはいい難い状況だ。
 

 
これらの騒動の発端となったのは、昨年7月20日に提起された、カリフォルニア州の行政機関である公正雇用住宅局(DFEH) による訴訟だった。訴状では、とある元女性従業員の自殺について言及されていた。この元従業員は、性的関係にある上司との社員旅行の際に自ら命を断ったという。別の従業員からは「事件の直前に催されたホリデーパーティーで、命を絶った女性従業員の性的な写真が“回し見”されていた」という証言も出ていた。

The Washington Postが入手した訴状によれば、この元女性従業員の名前はKerri Moynihan氏であるとのこと。訴訟を提起したのは、Kerriさんの両親であるPaul Moynihan氏とJanet Moynihan氏の夫妻だ。両名および代理人弁護士は訴状にて、同社におけるセクハラがKerriさんの自殺の重大な原因になったと主張している。また、Kerriさんと性的関係をもっていた元上司とActivision Blizzardが、警察の捜査にあたり証拠を隠滅したと指摘。現地警察による捜査も不完全だったと訴えた。原告が具体的にどのような賠償を求めているかは明かされていない。訴状はロサンゼルス郡上級裁判所に現地時間3月3日付けにて提出された。
 

 
訴状における主張によれば、Kerriさんは当時の上司であったGreg Restituito氏と性的関係をもっていたとのこと。自殺の現場となったのは、社員旅行のため両名が訪れたディズニー・グランド・カリフォルニアン・ホテル&スパの一室だったそうだ。Kerriさんは2017年4月27日早朝に、同ホテルのロビーにてRestituito氏と会話を交わしたとのこと。その後Restituito氏はKerriさんに向け「やめてくれ。少なくとも今夜は。まず考え直して、頭のはっきりしてる時に判断してくれ」との内容のメールを送信していたとし、その約30分後にKerriさんがホテルの一室で命を断ったと、原告は訴えている。

また、原告はその後にRestituito氏とActivision Blizzardによる隠蔽工作がおこなわれたとも主張している。Kerriさんの部屋からはRestituito氏の部屋のキーカードが見つかったものの、同氏は現地のアナハイム警察による取り調べに対して、Kerri氏との性的関係を否定したそうだ。また、同氏はKerriさんのアパートの鍵をもっていたものの、この理由についても虚偽の証言をしたとしている。そして原告は、Activision Blizzard側も警察の捜査に協力せず隠蔽に加担したと主張。Kerriさんの会社支給パソコンは警察への引き渡しを拒否し、携帯電話については「データが消えた」と陳述したとしている。また同社は、Restituito氏の携帯電話およびパソコンの取り調べについても断ったと訴えている。

原告である両親は、昨年7月のDFEHによる訴訟まで、Kerriさんにまつわるセクハラ問題について知らされていなかったとしている。また、Restituito氏含む当時の上司たちは、Kerriさんがセクハラを受けていたことを「知っていた、あるいは知っているべきだった」ものの、是正措置に失敗する、あるいは解決に取り組まなかったと指摘している。くわえて、原告はアナハイム警察による捜査は不完全だったと指摘しており、指紋の採取に不備があったほか、Kerriさんへ送ったメールについてRestituito氏に追及しなかったと批判している。一方のアナハイム警察は、捜査に問題はなかったとする声明を出している。

Activision Blizzard側は今回の訴訟について、Kerriさんに哀悼の意を表しつつ「適切な法的手続きを通じて、この訴訟に対処します」と述べ、遺族への配慮のためそれ以上のコメントは避けるとした。マイクロソフトの買収により、大きな転機を迎えたActivision Blizzard。しかし、かつて同社が残した多数の深い爪痕には、しっかりと向き合わなければならないだろう。今後、Kerriさんを取り巻く真相が法廷でしっかりと究明されることを願う。