Activision BlizzardのCEO・Bobby Kotick氏、12月29日付で同社を退職へ。32年にわたって率いた同社をマイクロソフトに託す

 

Activision BlizzardのCEOを務めるBobby Kotick氏は12月21日、現地時間12月29日付でCEOを退任することを発表した。Kotick氏はActivision時代から約32年間にわたって同社を率いてきた人物だ。

Image Credit: Bobby Kotick on X

Bobby Kotick氏は、Activision BlizzardのCEOを務めてきた人物だ。1991年に当時のActivisionのCEOに就任。後に同社のVivendi Gamesとの合併を主導し、2008年に合併完了。Vivendi Gamesは『ディアブロ』シリーズの開発元として知られるBlizzard Entertainmentなどを擁しており、合併後の社名はActivision Blizzardとなった。

なお今年2023年10月には、マイクロソフトがActivision Blizzardの買収を完了。買収方針が発表された2022年1月から反トラスト法(独占禁止法)違反の恐れがないかなどに関する各国・地域の規制当局による審査がおこなわれ、1年半以上を経ての買収に至った。


買収完了当時、Kotick氏は社内向けに声明を発表。マイクロソフトのゲーム部門CEOでXbox事業を率いるPhil Spencer氏によりActivision BlizzardのCEOとしてとどまり、同氏直属の部下になるように要請されたと明かした。Kotick氏はこれを受けて2023年末までCEOとしてとどまることを伝えており、買収後のスムーズな統合のために協力していきたいとしていた。

そして今回、Kotick氏は再び社内向けに声明を発表。Activision BlizzardのCEOを現地時間12月29日付けで退任することを表明した。Activision時代から数えて32年にわたって率いてきた同社を去ることになる。同氏は、才能ある社員たちがゲームを趣味的な娯楽から一大メディアに成長させてくれたと述べ、共に働けたことを生涯の名誉であるとコメントしている。

またKotick氏は声明にて、2年前Phil氏からActivision Blizzardの買収が提案された際のことを振り返っている。優秀でリソースの潤沢な競合他社が増えるなか、マイクロソフトに傘下入りすることで確実に業界をリードし続けるといった狙いがあったようだ。


なお海外メディアThe Vergeは、Kotick氏退任にあたってPhil氏およびXbox Game Studiosの代表を務めるMatt Booty氏が社内向けに発表した声明を報じている。声明でPhil氏は、Activision Blizzardおよび傘下スタジオの運営体制などに変更はないと説明。一方でActivision Blizzard副会長Thomas Tippl氏やBlizzard Entertainment社長Mike Ybarra氏など、各社の代表者がMatt氏の直属となることが明かされた。

またMatt氏の声明では主にZeniMax MediaおよびBethesda Softworksに関して言及。ZeniMax MediaのCEOを務めるJamie Leder氏はこれまでどおり(マイクロソフトとの)統合をサポートする。そしてBethesda Softworks傘下スタジオのゲーム開発を率いる責任者として新たにJill Braff氏が就任することが発表された。

約32年にわたってCEOを務めたKotick氏が去ることになるActivision Blizzard。運営体制に変化はないとされるものの、今後はMatt氏が総括するなかでマイクロソフト傘下企業としての統合が進められていくのだろう。


なおActivision Blizzardには2021年7月、有害な職場文化と性的ハラスメントの氾濫を理由に、行政機関から訴訟が提起されていた過去がある。それ以降、現・元従業員による告発や重役の退任などが続出。Kotick氏についても、ハラスメントを黙認していたとの告発があり、CEO退任を求めるデモなどに発展していた(関連記事)。Kotick氏は、2022年1月にマイクロソフトによる買収方針が発表された後もCEOとして留任していたものの、マイクロソフトによる買収が完了し、今回退任が決定したかたち。

なお買収発表当時には諸問題を考慮してか、マイクロソフトおよびXbox公式は、インクルージョン(包括性)を尊重する方針を強く打ち出していた。つまり性別や性指向および、障害の有無などで差別されることのない環境をActivision Blizzardに構築していく意思表明だ。マイクロソフト傘下での新たな体制では、かつて問題を抱えていた企業体質の改善も期待されるだろう。