Ubisoft、いまだ内部告発止まず。ハラスメント防止策講ずるも問題点の指摘が続く

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『アサシン クリード』や『レインボーシックス』シリーズなどの人気作品を世に送り出しているUbisoft。2020年には、内部からの相次ぐ告発や調査により、同社にまつわる問題が多数発覚。幹部社員の解雇や辞職が相次いだ。当時は一連の報道後、企業体質改善に取り組んでいると報告されていた。しかしながら、「Ubisoftは最小限の変化しか起こしていない」という声が同社従業員などからあがっているようだ。GamesIndustry.bizが報じている。

昨年夏の騒動

同社については、昨年中頃から数多くの問題点が告発、報道されている。ハラスメントが横行する社内の「Toxic(有害)」な文化や、権力の濫用などを看過する人事などが取り沙汰された。元クリエイティブ・ディレクター同社人事部トップのCécile Cornet氏の、引責による自主退職など枚挙にいとまがない。そのほか、既婚者であることを隠してファンと交際、同ファンに不倫を告発された『アサシン クリード ヴァルハラ』元クリエイティブ・ディレクターAshraf Ismail氏(後に解雇)のような例も話題になった。このように、昨年より多数の同社幹部が続々と解任や解雇処分を受ける、あるいは辞職している(関連記事)。


一連の告発騒動を受けて、Ubisoftは組織の改善に乗り出した。上述の元人事部トップCécile Cornet氏の後任には、元Uber社重役のAnika Grant氏が配された。ほかにも同Uber社において、かつてD&I(多様性とインクルージョン)部門のヘッドを務めたRaashi Sikka氏を、UbisoftのグローバルD&I部門VPとして招いている。Ubisoft社外の人員を取り入れることで、社内環境の健全化を目指す試みと見られる。

しかしながら、Ubisoftで働く人々にとって、同社の問題は解決したとは言い難い状況のようだ。一部のUbisoft従業員およびビデオゲーム関連の組合員が、同社の変化はいまだ不十分なものだと訴えているそうだ。同社の本拠地であるフランスのメディア、Le Télégrammeが報じている。

今なおあがる、「改善が不十分」との声

同誌による、Ubisoftの「社会性、経済性に関する委員会(social and economic committee)」に対する取材のなかでは、多くの問題が訴えられている。たとえば、UbisoftのスタジオNadeoのマネージング・ディレクター、Florent Castelnérac氏にまつわる問題だ。Castelnérac氏は多数の従業員から「ハラスメントをおこなっていた」として告発されている人物だ。しかしながら、同氏は現在も告発された当時と同じ役職に在籍し続けているという。

同委員会の主張によれば、Ubisoft経営陣がCastelnérac氏を「かばっている」とのことだ。また、元Ubisoft SingaporeヘッドのHugues Ricour氏の処遇についても指摘されている。Ricour氏はセクシャルハラスメントの告発を受けUbisoft Singaporeヘッドの任を解かれている。しかしながら、LinkedIn上の同氏プロフィールによれば現在もUbisoftに在籍しているようだ。単にプロフィールが変更されていないだけという可能性も考えられる。しかし従業員の告発および、同委員会の主張が事実だとすれば、トップの任を解かれただけで、Ricour氏はまだスタッフとして活動しているということになる。

また、Le Télégrammeは、Ubisoftのカナダ拠点であるUbisoft Montreal の状況についても触れている。同スタジオについては一連の騒動の後、人事によりChristophe Derennes氏(Ubisoftの共同設立者兼CEO、Yves Guillemot氏のいとこ)が組織の長となっている。職場環境の健全化を託されたDerennes氏。しかし、Le Télégramme誌によれば、健全化に反するような出来事の証言があったようだ。同氏就任後の2020年7月以降に新たなハラスメントを報告した職員が、同年12月に職を追いやられたというのだ。同誌にコメントを寄せたビデオゲーム関連の組合員は、Ubisoft Montrealは「何も変わっていない」と指摘している。

Image Credit: Wikipedia



訴訟への動きとUbisoftの見解

いまだ内部告発が尽きないUbisoft。その責任を法廷で追求する動きもある。フランスのゲーム開発者による組合「Solidaires Informatique Jeu Vidéo(コンピューターゲーム組合:SIJV)」は、Ubisoftのハラスメントに対する集団訴訟を準備しているそうだ。同組合は、Ubisoftで実際にハラスメント被害を受けた証言者を募っている。

GamesIndustry.bizは、今回の報道についてUbisoftにコメントを求めた。同誌に対しUbisoft広報は、「Ubisoftはすべての職員が尊重される、安全かつ、参加性が高い(Inclusive)職場環境を目指し、数か月に渡って、組織や社内手続きに大きな変化を加えてきました」と述べた。返信にはUbisoftの本件に関する施策が多くあげられており、前述の元Uber幹部Grant氏、Sikka氏の登用などが含まれていたそうだ。外部組織による調査、匿名でのハラスメント報告ツール導入、ハラスメント防止のための研修受講義務といった例も挙げられた。

また、Ubisoft広報は「今後数か月のうちに実施される、さらなる取り組みが進行中です。すべてのUbisoft職員が職場において尊重され、その意見が届くよう、私達は(同社の)文化や価値を長期的に高めることに尽力します」とコメントしている。


いまだ混迷に揺らぐUbisoft。一連の騒動の後には、人事異動など一定のハラスメント対策はなされている。Le Télégramme誌記事上の証言によれば、2万人の従業員を対象としたハラスメント防止のためのトレーニングなどもおこなわれたようだ。しかしながら、新規従業員などへの継続したトレーニングの要望については、まだ実現されていないとのこと。証言者は「(Ubisoft経営陣は)2020年の夏のことを過去のことにしようとしていると思う」と述べている。

Ubisoftは、数多くの従業員を抱える巨大企業だ。企業の規模が大きくなればなるほど、ハラスメントの防止や職場環境の調整は難しい課題となる。同社従業員が不当な扱いに悩まされることなく、ファンにゲームを届けることに集中できる日が来ることを祈りたい。

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