米任天堂、「クッパ」の名を持つ男を訴える。闇グループのボス格


米国任天堂が、ハッカーグループTeam Xecuterのリーダー格のひとりGary Bowserに対する訴訟を4月16日に起こしていたことが明らかになった。海外メディアPolygonなどが報じている。

Team Xecuterは、Nintendo Switch本体のハックを可能にするSX ProやSX Core、SX Liteといった製品を手がけるハッカーグループだ。メンバーは世界中の十数名で構成されているとされ、昨年10月にカナダ人であるGary Bowserのほか、フランス人のMax Louarn、中国人のYuanning Chenというリーダー格とされる人物たちが、米国司法省によりシアトルの連邦地方裁判所にて起訴。Gary Bowserは、ドミニカ共和国にて逮捕され米国に移送されていた(関連記事)。


SX Proなどの製品は、Nintendo Switch本体のセキュリティを迂回し、独自OSであるSX OSをインストール・起動させることを可能にする。SX OS上では、自作アプリやバックアップしたNintendo Switchゲームを起動できるが、これは海賊版ゲームの起動も可能であることを意味する。今回の訴状によると、ある時点で販売されていた“改造済みNintendo Switch本体”の89%にSX OSがインストールされていたとのことで、Nintendo Switchのハック製品としてもっともポピュラーな存在のようだ。

今回被告となったGary Bowserは、Team Xecuterの運営面を担当していたという。少なくとも4つの関連ウェブサイトを管理し、消費者や販売代理店への製品の宣伝、広告収益の管理、またほかのメンバーの監督などもおこなっていたと米国任天堂は主張。このほか、現在は存在しないハック情報サイトの運営にも、GaryOPAというハンドル名にて携わっていたと指摘されている。第三者を装いTeam Xecuter製品のレビューなどをおこなっていたそうで、ステルスマーケティングの場となっていたようだ。

米国任天堂は、被告の不法行為により任天堂およびサードパーティが開発したNintendo Switchゲームは甚大な被害を受けていると訴える。今回の裁判では、Gary Bowserによる任天堂製品に対する不法行為の差し止め命令や、運営する各ウェブサイトのドメインの引き渡し、製品の破棄などを要求。さらに、著作権を保護するセキュリティを迂回する不法行為、すなわち販売したSX OSなどの製品ひとつあたり2500ドル(約27万円)、また著作権違反行為1回あたり15万ドル(約1625万円)の損害賠償金の支払いを求めた。


Team Xecuterは、初代Xboxの頃から家庭用ゲーム機の改造ツールを手がけており、非常に長い歴史を持つ。今回の訴状でも、ニンテンドーDSやWii、ニンテンドー3DS向けにも同グループが手がけるハック製品が流通していたと指摘されている。任天堂は、これまではTeam Xecuter製品を扱う販売代理店など周辺への訴訟というかたちで対応してきた。これは、Team Xecuter自身は製品を直接消費者に販売していなかったためだと考えられる。

しかし今回、米国司法省による起訴を受けて、米国任天堂はTeam Xecuterのリーダーのひとりを直接訴えることとなった。今後については裁判の行方を見守る必要があるが、ついにTeam Xecuterの活動を根本からストップさせることとなるのか注目される。もっとも、同グループの公式サイトはすでに閉鎖。製品の公式サイトは存在するが、販売代理店リストのページは削除され、製品のアップデートもしばらくおこなわれていないようだ。

なお、ほかのリーダー格メンバーについては、Max Louarnはフランスにて逮捕されており、米国司法省が身柄の引き渡しを求めていることが伝えられているが現状は不明。また、Yuanning Chenは現在も逃亡中とのこと。


ちなみに余談であるが、今回被告となったGary Bowserのセカンドネーム「Bowser」は、『スーパーマリオ』シリーズに登場するクッパの英語名と同じである。現米国任天堂社長のDoug Bowser氏の就任時にも話題となったが、今回の訴訟にあたっては、海外の一部メディアでは「任天堂がクッパを訴えた」という見出しが躍ることとなった。