『FIFA 21』のFUT用レア選手カードのRMTに、EA社員が関与したとする疑惑浮上。EAが調査に乗り出す

 

Electronic Artsは3月11日、サッカーゲーム『FIFA』シリーズの公式Twitterアカウントを通じて、『FIFA 21』のUltimate Teamモード(以下、FUT)向けアイテムに関してコミュニティが抱えている疑念について、現在調査中であることを報告した。声明では疑念の内容について具体的には言及されていないが、同社社員がFUTの選手カードを高額で販売しているという疑惑が浮上している。海外メディアEurogamerなどが報じている。


FUTは、選手をアイテムとして集めてチームを編成してプレイする、『FIFA』シリーズではおなじみの人気ゲームモードだ。トレーディングカードゲームの要素があり、選手カードはゲームプレイを通じて獲得できるほか、少額課金などでも入手可能。FUTは、EAの大きな収益源のひとつとなっている。

問題の疑惑の発端は、FUT関連のニュースを伝えるインフルエンサーArcade-Futが、『FIFA』シリーズのプロプレイヤーMatteo Ribera氏からの告発を報じ、また実況配信者のNick氏も同様の告発をおこなったことにある。投稿された画像には、もっともレア度の高いアイコン選手の中でもさらにレアな「プライムモーメント」の選手カードの売買を、何者かがメッセージアプリを通じて持ちかける様子があり、2枚で1000ユーロ(約13万円)、3枚で1400ユーロ(約18万円)などと販売額が記載されている。

プライムアイコンモーメントの選手は、ゲームプレイを重ねても、トレードや少額課金を繰り返しても、滅多にお目にかかれない稀少品。投稿画像には、実際に売買がおこなわれた証拠として、そんなレアな選手カードを複数擁するチームを編成する様子がある。さらにNick氏の投稿の中では、「EAで働いていると主張する人物から、どんな選手カードでも用意できると伝えられた」とするコメントもあり、疑惑を深めることとなった。


これらの告発内容は、選手カードのいわゆるリアルマネートレードにEA社員が関与していた“決定的な証拠”とまでは言えないだろう。ただ、もし仮に告発が事実であれば、不正に私腹を肥やしていたというだけでなく、FUTに時間を注ぎ込んできたファンに対する背信行為。また同モードのオンライン対戦などにおける公平性にも大きく関わる。なお『FIFA』シリーズの公式ルールによると、ゲーム内通貨のリアルマネートレードは違反行為にあたる。選手カードについては明文化されていないものの、同様の扱いになると考えられる。

過去には、たとえば『ラグナロクオンライン』のゲーム内通貨を運営会社社員が不正に複製し、リアルマネートレード業者に売却していた問題があった。今回問題になったFUTについても、社員の立場次第では、それこそ“どんな選手カードでも用意”することは可能かもしれない。


今回の疑惑が報じられると、EAは即座に反応。冒頭で触れたように同社はすでに調査を開始しており、もし不適切な行為が認められれば迅速に対処するとのこと。また、こうした行為は受け入れられず、大目に見ることもしないと、同社の立場を明確にした。EAは、この問題についてより詳細な情報を得られ次第、コミュニティに報告すると約束している。

【UPDATE 2021/03/14 2:30】
EAは3月13日、今回の疑惑に関する調査の中間報告を公式サイトに掲載した。それによると、少額課金やトレードを含むゲームプレイを通じて入手したものではないFUT向けアイテムが、特定のアカウントに対して直接提供されていたことを確認したとのこと。さらにその提供元は、誰かにハックされた、またはEA社内の誰かに不適切に使用された、ひとつあるいは複数のアカウントであることも確認できたとしている。

同社は、技術的な問題によりアイテムが消失したユーザーや、プロサッカー選手などのパートナー、あるいはテスターに対して社員が直接アイテムを提供することはあるが、今回の件はこれらに当てはまらない不正行為だと断定。受け入れられる行為ではないと述べている。まだ調査の途中ではあるが、不審な活動歴が見られるアカウントおよびアイテムが、少数ながらも確認できているという。

そして調査が完了し次第、本件にEA社員が関与したことが確認されれば処分をおこなうとした。また取引されたアイテムは削除し、購入したプレイヤーのアカウントも永久BAN処分にするとのことだ。さらに、上述したような社員の裁量に任せたアイテムの提供については無期限に停止するとのこと。同社は、今回の疑惑を指摘したコミュニティに感謝の言葉を述べると共に、コミュニティ内で不正な取引がおこなわれたことについて謝罪している。