時間もないことなので手短に話そう。本日2019年10月24日、台湾のゲームスタジオJFI GamesおよびJustdan InternationalからPS4/Switch向けに『Dusk Diver 酉閃町(以下、Dusk Diver)』というゲームがリリースされたことはご存じだろうか。台湾随一と名高い繁華街「西門町」を舞台に、高校生のヤン・ユモを操作し厄禍(わざわい)と呼ばれる敵と戦う台湾発の新作アクションゲームだ。
西門町。大日本帝国統治下の1890年代に商業地区として建設されたこの街は、現在ではファッション・サブカルチャーといった台湾の若者文化の聖地として連日多くの客で賑わいを見せる。時代の移り変わりとともにさまざまに姿を変えてきた西門町だが、いつの時代も変わらぬ魅力が一つ。それはこの街が、台湾における「庶民の味」を気軽に楽しめる人情の街でもあるということだ。
『Dusk Diver』のゲームシステムでも、食べ歩きは重要な要素に位置づけられており、ゲーム内で飲食可能な「小吃」は実に40 品目以上、魅惑の屋台がマップ狭しと立ち並ぶ。食事をするとステータスが上昇する本作では、食べ歩きはあなたの戦闘さえ助けてくれるのだ。プレイヤーがどれだけ現実の西門町の美味い店を知っているかどうかで、ゲームの攻略に差がついてしまいかねないほどに。
ゲームを彩る要素としても、攻略要素としても重要なエッセンスとして位置づけられている食べ物。そんなゲーム内のグルメおよびレストランは、どれだけ現実のものに近いのだろうか。筆者はそんな再現性を確かめるべく、台湾・西門町を訪れた。ゲームだけでなく、観光という両方の面でこの西門町・そしてそこで栄えるグルメ文化を「1日」という時間制限のもとで攻略していきたい。ちなみに本稿は、42品の食べ物をレポートする大長編記事である。7ページに分けて掲載しているので、少しずつ読み進めていただければ幸いだ。
①:Cold Stone 酷聖石氷淇淋 西門門市
まずはこちらの画像を見てもらいたい。ここはゲーム開始直後に貴方が初めて目にすることになるシーン、そして貴方が西門町で食べ歩きを始める始点ともなる場所、西門駅6番出口付近の光景だ。1999年より営業を開始した台北メトロ西門駅は四方をショッピングエリアに囲まれており、特に歩行者天国に近い6番出口は台湾ではよく知られた待ち合わせ場所となっている。
あれこれ意味深なテキストが記載されているが、今回重要なのはむしろその後ろに見え隠れしている背景の方。何故ならこれらのビルの一つ一つが、当然のことながら実在している。特に真ん中内ある真っ赤なビルの一階では、ゲーム内世界でも現実世界でも、若者に「待ち合わせの暇つぶしの定番」と呼ばれる人気のアイスクリーム・ショップが営業をしているのだ。
Cold Stone 酷聖石氷淇淋は、日本でも幅広く展開するアイスクリームチェーン店コールド・ストーン・クリーマリーの台湾版。マイナス9度に冷やした石板の上、歌って踊ってアイスをこねる店員さんのパフォーマンスは世界中どこに行っても変わらないが、世界展開のチェーン店であっても日本と台湾とでは注文できるアイスクリームのフレーバーに少しずつ違いがある。
ゲーム中で食べられるアイスクリームは「抹茶ストロベリー」「鉄観音茶アイスクリーム」「苺バナナアイスクリーム」の三種。抹茶ストロベリー、苺バナナアイスクリームはそれぞれ台湾でも人気のフレーバーだが、やはり最初に食べるべきは鉄観音茶アイスクリームだろう。桂花蜜(キンモクセイの蜜)の豊潤な香りが、元より甘く薫るといわれる鉄観音の香りをさらに引き立てる。
今回はゲームの攻略記事として、ゲーム中に各料理を食べた時の効能も一覧にしたので、ゲーム発売後にまた改めて目を通してほしい。たとえば鉄観音茶アイスクリームのゲーム上での効能は、D武装継続時間UP。アイスクリームを食べた分だけ、D武装と呼ばれる戦闘特化スタイルへの変身継続時間が長くなる。そう思って味わえば、キンモクセイの香りからもどこか身体を熱くする力を感じ取れるはずだ。
01 抹茶ストロベリー
02 鉄観音茶アイスクリーム
03 苺バナナアイスクリーム
Cold Stone 酷聖石氷淇淋 西門門市
108台北市萬華區成都路5號
https://goo.gl/maps/sCd2JKcaiGU3Tgaf9
②:Hot Star 豪大大鶏排
アイスクリーム三つで軽く腹ごなしが終わったら、ゲーム序盤の進行ルートに倣って、西門町の玄関口である漢中街へと足を進めていこう。しばらく進んだ場所にある広場は、昼夜を問わずストリートパフォーマーで賑わいを見せる街の中心部。このあたりまでやってくると、街を行き交う人々の手元からは食欲をくすぐる台湾特有のあの香り……豊富な香辛料の匂いが漂い始める。
匂いの出元はすぐ目の前のフライドチキン屋にある。とは言っても、そこに看板が出ているケンタッキー・フライド・チキンからの匂いではないので、初回プレイ時には特に注意してほしい。競争激しい西門町の外食事情、同じフライドチキン屋が二階で営業しているビルの一階に、昨年フライドチキンで有名な台湾現地チェーン店が華々しくオープンしたばかりなのだ。
観光名所として有名な士林夜市出身で、名実ともに台湾を代表するフライドチキン・ブランド、その名を士林豪大大雞排という。売りは何といっても30cmオーバーの巨大フライドチキン。サクッと揚がった衣は濃厚な油を纏い、ボリューム満点の鶏肉は60元(約200円)にして顎が疲れるほどの食べ応えがある。夜市生まれのファストフードらしい、食べ歩きにうってつけ一品だ。
ゲーム中で食べられる料理は「ジャンボフライドチキン」「梅粉のサツマイモ揚げ」「冬瓜茶」の三品。梅粉のサツマイモ揚げは、梅と芋の甘みが交わう素朴な味わい。冬瓜茶は苦みも甘さもスッキリ控えめで口当たりも爽やか、チキンを齧るペースも加速させる。しかし、これらもまたチキン同様ボリューム満点。全部持ち歩くのは至難の業なので、出来ればお店付近で食べてしまおう。
観光攻略上注意しなければならないのは、この店がかなりの繁盛店だということ。時間帯によっては30分以上かかる行列も当たり前、食べ歩きには手痛いタイムロスだ。また、飲み物はすぐ横のスタンドで販売する形式をとっており、料理注文後に再度ドリンクを注文する時間も発生する。場合によってはCold Stone 酷聖石氷淇淋のアイスクリームをテイクアウトし、この店の行列待ちの間に味わうことも視野に入れてほしい。
04 ジャンボフライドチキン
05 梅粉のサツマイモ揚げ
06 冬瓜茶
Hot Star 豪大大鶏排
108台北市萬華區漢中街104號
https://goo.gl/maps/S2oEhUEbMxz1mwJ39
③:ファミリーマート
さてお次は目の前の広場を大きく右折し、漢中街から峨眉街へと足を進める。広場からは街の東西南北へと道が伸びているが、最短ルートは東、日本でも見覚えのあるコンビニチェーン店「全家」が目印となっている通りだ。実はそのコンビニこそがゲーム中で主人公たちの活動拠点ともなるコンビニなのだが……、言うまでもなく、現実でも至って普通のコンビニが存在する。
ゲーム内にあるようなガメツイ置物も探せばどこかに飾られているのかもしれないが、後々の食べ歩きのことも考えて、ひと先ずここでは水を買っておくのがベストだろう。異国で慣れない料理を食べすぎて、食べ歩き早々に味に疲れてしまうのは初回プレイでは陥りがちなミスだ。効率的に食べ歩くには定期的に水を飲むこと。これは先行プレイで実際に胃もたれを起こした筆者個人からの忠告でもある。
つづく
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