『ファイナルファンタジーVII リメイク』の新情報が今週末に出ると拡散されるも、誤解濃厚。翻訳を介した伝言ゲーム

 

『ファイナルファンタジーVII リメイク』(以下、FF7リメイク)にまつわる怪しげな情報が、ネットを駆け巡っているようだ。発端となったのは、共同ディレクターの鳥山求氏のコメントである。スクウェア・エニックスは2月13日に、「FINAL FANTASY VII REMAKE Orchestra World Tour」のライブ配信を実施予定。もともとは2月12日と13日、東京国際フォーラムホールでオーケストラコンサートを開演予定だったが、新型コロナウイルス感染症が拡大している現状を踏まえて、現地公演は中止。しかし13日の公演はニコニコ生放送でライブ配信されることとなった。ライブ配信チケットの価格は税込4500円。


2月13日のオンライン配信に向けて、『FF7リメイク』スタッフがTwitterのSQUARE ENIX MUSICアカウントを介して動画にてメッセージを届けており、2月6日はプロデューサーの北瀬佳範氏がコメント。2月7日にはミュージック スーパーバイザーの河盛氏がコメントを寄せている。そして2月9日には共同ディレクターの鳥山求氏がコメントしたというわけだ。鳥山氏は、原作の音楽だけでなく新曲のBGMも用意しているといい、それらがオーケストラでどのように演奏されるか楽しみであるとコメント。そして、今ネットで騒がれているのは後半箇所である。以下、該当箇所を全文書き下ろす。

「演奏ももちろんなんですけれども、おまけ番組もありまして、ここだけでしか聞けない『FF7リメイク』のちょっとした小ネタについて、僕も参加して話をしていますので、ぜひそちらもご覧ください。オンライン開催なので、みんなでコメントなどを送り合って盛り上げていきましょう。それでは、一緒に楽しみましょう」



つまり、配信ではコンサートの演奏だけでなく、おまけ番組も用意されており、そこではシナリオデザインに携わった鳥山求氏によるちょっとした裏話が披露されるということだろう。しかし、いつの間にか海外ではこのコメントが「新情報」にかわってしまった。きっかけとなったのは、TwitterユーザーオードリーAudrey氏による英語での発信だ。前出の鳥山氏によるコメントはとても興味深いと言及。コンサート配信では、特別な小さなコーナーもあり、『FF7リメイク』についてのいくつかの情報が明かされるようだと伝えた。


オードリーAudrey氏が誤った情報を発信しているわけではない。実際に鳥山求氏のコメント動画も添えられており、情報を捻じ曲げる意図もないだろう。しかしそこに“誤解を生む余地”は存在する。英語化するにあたり、「小ネタ」が「情報」(info)に代わったからだ。海外メディアVGC はオードリーAudrey氏のツイートを引用し記事を作成。「『FF7リメイク』共同ディレクターが週末に新情報を明らかにするようだ」と報道。

同記事では、「日本限定のコンサートなので、重要な情報は明かされないだろう」といった補足も入っているものの、より目に入りやすいのは「『FF7リメイク』共同ディレクターが今週末の新情報発表を約束」というタイトルだ。海外メディアやフォーラムでは、『FF7リメイク』の新情報が今回公開されるという情報が拡散されている。その後、日本のブログなどでも、英語の情報をもとに、『FF7リメイク』の新情報が公開間近と伝える様子が散見され始めた。


たしかに、それらしい周辺情報は揃っている。本作のディレクターを務める野村哲也氏は、『キングダムハーツ』シリーズにおいては、オケコンにて新情報を発表する手法を採ってきた。同じような情報公開がおこなわれてもおかしくはない。さらに『FF7リメイク』は、2021年4月には1年間のPS4時限独占が終了する。時限独占終了後に向けて新たなプラットフォームへの展開が発表される可能性は捨てきれない。さらには、続編の新情報が出る可能性もあるだろう。それらしい周辺情報が存在するがゆえに、新情報公開というトピックが全世界を駆け巡ったわけだ。

しかし、鳥山氏が披露すると伝えたのはあくまで“『FF7リメイク』のちょっとした小ネタ”だ。「小ネタ」が「情報」という言葉に変換されたことで含まれる意味が広まったが、日本語のニュアンスを見る限りでは、海外で報道されているような伝えられ方は誤りである。日本のゲーム情報に強い海外メディアGematsuも一連の報道が不正確であると指摘。よりニュアンスの近い英文を出している。該当箇所については「(鳥山氏が)ほんの少しだけ『FF7リメイク』について話す」だけと表現している。前出のオードリーAudrey氏もまた、より正確なニュアンスで鳥山氏の語った言葉を訳し再発信している。

誰かが、悪意をもってミスリードを誘っているわけではない。しかしながら、日本語と英語のニュアンスが違うこと、英語圏の人々が日本語を聞き取れないこと、日本向けイベントであるがゆえに英語圏向けに情報発信がなかったこと、そして『FF7リメイク』が人気作品であることなどが重なり、誤った情報が駆け巡ることとなった。翻訳によって生まれた伝言ゲームとも言えるだろう。

とはいえ、『FF7リメイク』の新情報が同コンサートで明かされる可能性はゼロではない。時期としても、そろそろ新展開があってもおかしくはない。昨年末にはさまざまなアワードにてノミネートされ、多くの賞を獲得した人気作の今後を、全世界のゲーマーが期待している。『FF7リメイク』は、PS4向けに発売中だ。