『ファイナルファンタジーVII リバース』シナリオの野島氏、「オリジナル版でティファとエアリスが不仲に見えたこと」を長い間後悔していた。ついに新作で払拭

 

『ファイナルファンタジーVII リバース』のストーリーおよびシナリオを担当した野島一成氏は、スクウェア・エニックスの英語向け公式ブログにて、同作リリースに際したコメントを寄せた。その中で、オリジナル版にて「ティファとエアリスの不仲説」が出たことを踏まえ、それを払拭できたことに喜びを示している。

『ファイナルファンタジーVII リバース』は、PS向けの『ファイナルファンタジーVII』のリメイク三部作の二作目だ。対応プラットフォームはPS5。グラフィックは最新技術を用いたフル3Dになり、ターンベースだった戦闘はアクションベースに変化。前作『ファイナルファンタジーVII リメイク』ではミッドガル脱出を果たすまでの物語が描かれた。第二作目である『ファイナルファンタジーVII リバース』では、ミッドガル脱出からのクライマックスに向かう旅が展開。自由な探索をコンセプトに、広大なワールドマップの中でセフィロスの影を追っていくことになる。


同記事ではさまざまなスタッフがコメントを寄せている。その中で野島氏はオリジナル版『ファイナルファンタジーVII』の開発を終えた頃、「ティファとエアリスは互いを好きじゃないみたいですね」と、シニアプログラマーから言われたことを振り返っている。野島氏は、長い旅を一緒にした仲間であるがゆえに友情関係があると考えていたので、「不仲に見える」とのコメントにショックを受けたそうだ。

一方で、「不仲じゃないように描写できたか」と自問してみると、自信がないことにも気づいたという。具体的なシーンではなくフレーバーで友情を強調していたそうだが、十分ではないとも振り返った。そして「不仲に見える」という点を、長い間後悔していたという。それゆえに、『ファイナルファンタジーVII リメイク』プロジェクトでは、ティファとエアリスの友情を描くというのを、自身の宿題のひとつにしていたそうだ。そして、『ファイナルファンタジーVII リメイク』シリーズでは、ティファとエアリス、そしてその他のキャラ同士の多彩な関係性をさまざまな言葉やシーンを通じて表現すべく奮闘したそうだ。


『ファイナルファンタジーVII リメイク』シリーズでは、物語のキー・コンセプトとして「つながり」という言葉が顕著になってきており、キャラだけでなく惑星をもつながっていく。野島氏はこの“惑星的つながり”を重要視しており、そうしたワードが『ファイナルファンタジーVII リバース』の描写にも反映されているとのことである。そして野島氏は、前述した「ティファとエアリスは不仲に見える」というコメントを寄せたプログラマーに対し、長き時を超えてあらためて感謝を述べている。

ティファとエアリスは、クラウドにとっては重要な人物のふたりだ。容姿や性格などタイプも大きく違う。ともにクラウドに好意を寄せるキャラであるので、当時のユーザーとしては「ティファとエアリスは恋のライバルなので、互いを好んでいないように見える」というのは、自然な考えであろう。そもそもオリジナル版『ファイナルファンタジーVII』は物語展開が(リメイク版と比べれば)駆け足で、それぞれのキャラの掘り下げが難しい。そもそもティファとエアリスが会話するシーンが少なかった。尺の事情もあるので、野島氏が表現をするだけの容量もなかったといえる。のちに解体新書などでは、ティファとエアリス間の友情を補足する情報が出ていたものの、不仲と感じるのも無理はない。

一方で『ファイナルファンタジーVII リメイク』においては、ティファとエアリスが打ち解けるのはかなり早い。クラウドをとりあうシーンなども存在するが、かなりコミカルな演出である。ふたりの会話シーンも随所に挿入されていた。『ファイナルファンタジーVII リバース』では、そうしたふたりの関係性描写はさらに補強されている。互いに過去を話し合い、“秘密”を共有するなど、かなり仲睦まじげ。タイプは違うものの、タイプが違うからこそ仲良くなるという友情模様が描かれている。


少なくとも、2作品においては、ティファとエアリスの仲が悪いとは見えないだろう。むしろ、ふたりの関係性はリメイクシリーズにおけるほっこりシーンのひとつとまでいえるかもしれない。まだ道半ばであるが、野島氏の宿題は着実にこなされており、不仲説についても自然と消えていくのだろう。

なお、『ファイナルファンタジーVII リバース』に出てくるエピソードは一部、野島氏の著書小説「FINAL FANTASY VII REMAKE Traces of Two Pasts」にて登場しており、それが映像化したものもあるという。ティファとエアリス、そして本作の世界観への理解を深めたい場合は、同小説を読み込んでみるのもいいだろう。

『ファイナルファンタジーVII リバース』は、PS5向けに発売中だ。