『Apex Legends』のコースティック強化は本当に必要か。ガスおじの是非を巡る議論に開発者が反応


なぜ『Apex Legends』のコースティックは強化を受けたのか。毒性トラップの使い手にまつわる議論に、開発者のひとりが反応したようだ。明日1月6日に開催を控えた「ファイトナイト」イベント。開催にあたっては期間限定モードや限定スキンが発表されたほか、一部レジェンドや武器の調整も告知されている(関連記事)。ヘムロックの弱体化や、かねてより強化が望まれていたランパートに強化が入る。一方、意外な人物も恩恵を受けている。ガストラップ設置で防衛型の戦術に長けたレジェンド、コースティックだ。戦術アビリティNoxガストラップのクールタイムが25秒から20秒に短縮された。
 

 
最近のコースティックといえば、確かにシーズン7から活躍の場が減ったといえなくもない。第3のマップ、オリンパスは開けた環境が特徴で、篭城戦に長けた博士にとってはやや厳しい環境。同じくディフェンス型のワットソンとともに、特性を活かせるシチュエーションが少なくなっていた。さらに大きな要素が、「Noxガストラップ/Noxガスグレネードによる視界不良効果」が削除されたことだ。これまでコースティックのガスは敵にダメージを与えるだけでなく、煙幕のように周囲を覆って目くらましの効果を発揮していた。バンガロールと同様に射線切りとして利用することが可能だったものの、新シーズンにて本効果が廃止に。戦術/アルティメットアビリティの弱体化というだけでなく、パッシブのNoxビジョン(ガス内でコースティックのみ敵を透視できる)も実質恩恵が減ったとされていた。

ただし、彼が不遇一辺倒だったかというとそんなこともない。視界不良が廃止された際、合わせてガスによるダメージが4〜10ティック→6〜12ティックへと上昇した。このダメージ増加の効果はかなり大きく、ガスによるダウン性能がかなり凶悪に。かする程度でも相当痛い威力となったため、ガスの中を突っ切る選択肢はかなり厳しいものとなった。また、視界不良が大きく軽減されたとはいえ見えやすいとは言いがたく、Noxビジョンをもつコースティックのアドバンテージも健在。侵入忌避では変わらず無類の強さを見せ、オリンパス以外のマップでは猛威を振るう姿が報告されていた。
 

 
こうして一面では追い風を受けていたコースティックに、このたびさらなる強化が入ったわけだ。TwitterにてデザイナーのDaniel Zenon Klein氏に対し、ユーザーから「なぜ誰も頼んでいないのにコースティックを強化したのか」と、やや厳しい意見が飛んだ。確かに、並んで強化を受けたランパートが強化を熱望されていた不遇レジェンドだったことを考えると、あえてもうひとりの調整枠としてわざわざ博士がチョイスされた理由は興味深い。Klein氏いわく、今回の調整はガスの視界不良削除に付随するものだという。当時は引き換えにダメージ増加を実装したものの、「それでもコースティックは苦戦していた」とのこと。そこで、より直接的な強化として今回の調整に至ったようだ。クールタイム減少に着手した理由としては工数が少ない点がポイントだったそうで、実装までに10分、バランス検証のプレイテストは2〜3回で済んだとのこと。
 

https://twitter.com/danielzklein/status/1345510306248704000

 
議論を招いたのは、この後のひとことだ。Klein氏はコースティックについて「ゲーム内でもっとも弱いキャラクターのひとりです」と発言。この意見に対してはコミュニティから広く反発の声が招かれた。先述のとおり、ダメージが向上したガスの威力はかなり悪辣だ。ユーザーのひとりが「どの時点でコースティックに強化が必要だと考えたのか」と尋ねると、Klein氏は「2020年3月ごろからコースティックの戦績は非常に悪かった」と説明。特に視界不良の削除以降は著しく低いパフォーマンスだったという。続くツイートにて、「ゲームバランスの目的はすべてのキャラクターで多様なプレイ体験を可能にすることだが、コースティックはそれができない方向へと滑り落ちていた」と述べた。
 

https://twitter.com/danielzklein/status/1345512232197603328

 
一連の説明を受けても、依然として一部プレイヤーの疑問は残る。プロプレイヤーのひとりTSM Snip3down氏は、パブリックシーンと競技シーンを分けて考える必要があると指摘。コースティックは、篭城を気にかけないカジュアルチームや連携の取れていない野良チームでは確かに活躍しづらい。一方、直近の開発チームスタッフの説明では、ヨーロッパ圏における公式試合ALGSではコースティックのピック率は30%程度だと伝えられている。シチュエーションによっても大きく評価が変わるため、今回のコースティック調整の是非はまだ見通せないのが実情だろう。これまで『Apex Legends』チームはレジェンドごとのピック率や勝率などのデータも詳細に公表してきた実績があるため、コースティックの先行き次第ではさらなる情報がもたらされるかもしれない。

それにつけても不安げなのは、コースティックをメインに使うプレイヤーたちだ。強化は嬉しいポイントではあるものの、素直には喜べない。なぜならコースティックの使い勝手がよくなるほど、彼の天敵——毒性トラップが効かない、敵方のコースティックも増えるからだ。果たして『Apex Legends』にガスおじ群雄割拠の乱が訪れるのか。ハンマーで扉を粉砕しながら見守ろう。