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赤坂アカとSCRAPと集英社が手がけるゲーム『カミとミコ』は”16万字“テキストびっしり、その半分が「読まなくていいもの」。だからストーリーが面白い。異色のADV誕生の秘話を訊いた
本作はSCRAPが開発をリードし、赤坂アカ氏がキャラデザやシナリオを担当。集英社ゲームズがとりまとめる異色のコラボレーション作品。3者に話を訊いた。

集英社ゲームズは4月23日、SCRAPと共同製作した『カミとミコ』を発売した。PCやスマートフォンのブラウザ上で、スクラップチケットで購入することでプレイ可能。価格は「いますぐプレイ版」が税込3500円。特典を封入したカミとミコの想世記は税込6930円で販売されている。
『カミとミコ』は、少女ミコと共に現代知識を駆使して人類史上の問題に立ち向かっていく、世界創造謎解きアドベンチャーゲームである。本作の舞台となる100万年前の世界では、ある集落が滅亡の危機に瀕していた。凍えるような風にさらされ続ける中、イノシシにも襲われて、人々は疲弊していた。
本作のメインキャラクター・ミコは、そんな集落に住む一人の少女である。自ら巫女として生贄になる道を選んだ彼女は、禁術を使用してカミを呼び起こす。プレイヤーはカミ様となり、ミコに神託を与えることで、まずは集落の危機に立ち向かう。また本作ではミコが転生を繰り返し、時代ごとに異なる姿を取りながら、カミと呼ばれるプレイヤーと共に人類の歴史を歩んでいく。現代知識で飢餓や疾病などに立ち向かう、カミとミコの人類史を追う旅が繰り広げられる。

本作は、リアル脱出ゲームなどの謎解きゲームに定評のあるSCRAPが開発をリード。「かぐや様は告らせたい」作者であり「【推しの子】」などの原作を務める赤坂アカ氏がキャラデザやシナリオを担当。集英社ゲームズがとりまとめるなど、異色のコラボレーション作品となっている。どのようなきっかけで本作は生まれたのか。3者に話を訊いた。
――まずは自己紹介をお願いします。
加藤隆生(以下、加藤)氏:
株式会社SCRAPの加藤です。

赤坂アカ(以下、赤坂)氏:
漫画家の赤坂アカです。

ミヤザキユウ(以下、ミヤザキ)氏:
本作の共同制作やプロモーションを担当しております、集英社ゲームズのミヤザキです。

『カミとミコ』が生まれるまで
――『カミとミコ』はどのようなゲームですか。
加藤氏(SCRAP):
『カミとミコ』はプレイヤーが神様となって、ミコという相棒に指示を出すことで人類の文明を発展させていくゲームです。物語も人類文明の発展とともに進んでいきます。ゲームのシステムとしては、ミコに発展のためのヒントを伝えるところが最大の要素になっていて、そのためにできることはふたつあります。ひとつは天候を操作すること。
もうひとつは、さまざまな紋様が描かれた「カミノイシ」と言われる石をミコに提示することによって、ミコの閃きを誘発することです。まだ何も知らない、何もできない人類にヒントを与えることによって、何かを閃いてもらうということに主眼を置いたゲームです。
――育成ゲームのような、文明開拓ゲームのような、謎解きゲームのような要素があります。一言でこういうゲームですと表現するのが難しそうですが。……文明育成ゲーム?
赤坂氏:
文明育成ゲームにしましょう。
ミヤザキ氏(集英社ゲームズ):
(笑)ジャンル名は「世界創造謎解きアドベンチャー」でやらせていただいてます!
――本作はどういうゲームを目指して作られたのでしょうか。
赤坂氏:
僕はどうしても中二病の人間なので、規模がデカければデカいほど良いと思っている節があるんですね。漫画でそういうデカいことをしようとすると、“セカイ系”と呼ばれるようなジャンルになったりします。ゲームでやるなら、ドット絵のゲーム感にあるデフォルメを使えば、意外とこういう大きな世界観と相性が良いというのがありまして。
僕は、(SCRAP)加藤さんと一緒にゲームを作るなら、僕が一番好きなものでやってみたいという気持ちがありました。そこではじめに、このように人類、地球、歴史というデカいものをテーマにした謎解きのゲームを作りたいと提案させていただきました。
――つまり、赤坂先生が“言い出しっぺ”だと。
赤坂氏:
というか、加藤さんに作ってほしい、それをプレイしたいという純然たる欲望で。
――加藤さんはそれを受け止めたと。
加藤氏(SCRAP):
そのときは、「何か作りたいゲームがあるんですか?」と赤坂先生に訊いたら「世界を創造するゲームが良いですね~」というワードだけ置いて、帰っていかれちゃって……(笑)
一同:
(笑)
加藤氏(SCRAP):
僕はテキストアドベンチャーゲームがすごく好きなんですね。たとえば小学生の頃に遊んだ『ポートピア連続殺人事件』とか、堀井雄二さんの三部作とかが本当に好きだったんです。でも、コマンド選択型のアドベンチャーゲームは、フラグを立てることだけを目的に総当りしていく形になりがちなんです。それがだんだん進化していって『弟切草』のようなものが出てきたり、『逆転裁判』という名作に繋がったりしてきた。
そういう中で、アドベンチャーゲームの新しい仕組みやシステムでは、どのようなものが考えられるかというのを日常的にぼんやり思っていたところがあったんです。そこで、言葉ではなく紋様を送ることで物語が進んでいくというアイデアが、ずっとうっすら自分の中にあって。
原宿の中華料理屋で赤坂先生とご飯食べていて、その時に言われた「セカイ系やってみたいんですよね~」が、ぼんやりリンクしたんですよね。それで、その夜のうちにワァーっと企画書を書いて、次に赤坂先生と会う時にその企画書を持っていったという流れで、このゲームが生まれましたね。
――そこからどのように集英社ゲームズさんのプロデュースに繋がっていったのでしょうか。
加藤氏(SCRAP):
僕と赤坂先生の間でアイデア交換のやりとりを何往復かしているうちに本格的に進めた方がいいというのを、ふたりともなんとなく感じまして。そのタイミングで、赤坂先生はお忙しく、かつSCRAPだけでは赤坂先生の名前を最大化することはできないと思いまして。……そもそも集英社で作品を発表されている作家さんなので集英社さんに相談に行こうと。それに加えて、もともと僕と赤坂先生の出会いのきっかけを作ってくださったのも集英社の方だったので、まずその方に「ゲームができそうなんだけど、いかがですか」と相談に行った格好です。
――ミヤザキさんは集英社ゲームズの一員としてどのように参戦されたのですか。
ミヤザキ氏(集英社ゲームズ):
お二人が相談に行かれた方からお話をいただいて、「ではぜひ集英社ゲームズでやらせてください!」ということで参加したという経緯ですね。ゲームの開発自体は、SCRAPさん自身もオンラインリアル脱出ゲームという形ですでにされていたので、我々はデジタルゲームの会社として、マーケティングやアドベンチャーゲームとしてのシナリオ面などを見させていただくという担当での座組ですね。
――ゲーム開発において、具体的にどのような役割分担をされていますか。
ミヤザキ氏(集英社ゲームズ):
メインのゲームデザインや開発をSCRAPさんの方でされてまして、SCRAPさんから外部の開発会社さんにも委託しています。それに対して我々の方は、シナリオ面やゲームデザインの流れなどについてコメントをさせていただく形です。そこでは、マーケティングの上での見せ方や扱い方について助言するイメージですね。
――チューニング、プロデュースということですね。赤坂先生はゲームのどのような部分を担当されたのでしょうか。
赤坂氏:
僕は彩色済みのラフっぽいデザイン絵を仕上げ、ドット絵は石田芙月さん(X:@fuzuzu) 別の方に進めてもらいました。キャラクターデザインやパッケージデザイン、章のはじまりの扉絵、一部のイベントCGだけはちょっと参加させてもらっているという形ですね。長らく絵を描いていなかったので、だいぶリハビリみたいになりました。それとシナリオも、ですね。テキストはおおむね書かせていただきました。


クリエイターごとの「らしさ」が出ているところ
――本作においてSCRAPさんらしさが出ていると感じている部分を、赤坂先生とミヤザキさん目線でお聞かせください。
赤坂氏:
僕はSCRAPさんの「おうちで遊べる」作品を結構遊んでいまして、そこでSCRAPさんらしさのイメージはもともとちょっとだけあったんですね。今回、こういうゲームでここまでの規模のものは初めてだと思うんですけど、以前から感じていたすごく細かいところにある「ここをこだわるんだ」というところが、また感じられてSCRAPらしいなと思ったりしました。
あとは質感にこだわってくれるところがSCRAPらしさかなと思いました。本作では、64色縛りのドット絵という謎にすごいことをしていて、作品ごとににじみ出てくるカラーが異なる中、バランスをとっておしゃれにこなしている。その作品ごとの雰囲気や味が出てくるこだわりの部分は、加藤さんたちが作ってくれたからこそだな、と思いました。

ミヤザキ氏(集英社ゲームズ):
ブラッシュアップのときの「良くなるグラフ」の線がいつもすごい角度だなって思っていて。「大丈夫かな……」と思っているとガッと急激に良くなって、「あ、じゃあ大丈夫ですね」となるタイミングが開発過程にたくさんありました。「僕がよく見えていないだけでした、すみません」となりました。
赤坂氏:
こだわりという名の執着がすごくて(笑)ここまでやらないとSCRAPじゃないんだなぁという安心感や嬉しさがありましたね。
――加藤さん目線ではいかがでしょうか。
加藤氏(SCRAP):
今回、完成して振り返ってみて一番嬉しかったのは、システムと物語がリンクするものが作れたというところですね。僕の中で、システムと物語が連動するもっともすごいゲームは『ゴースト トリック』なんです。もちろん、それを超えたとは口が裂けても言えませんが、今僕が思いつくもっとも高いレベルで、本作ではシステムと物語を連動させることができた感じがします。しかも、ただ石を投げ込むだけという単純なルールを用いて、このシステムでないと表現できない奥深い物語を表現できたと思います。
ミヤザキ氏(集英社ゲームズ):
途中に「そこはこだわらなくてもいいのでは」と思うこともたびたびありました。そこは絶対譲れないところで、結果的にそのままこだわりきって良かったですねという決着になる。そういうことが何回かありましたね。
――集英社ゲームズさんはどのような立ち位置でしたか。
加藤氏(SCRAP):
指摘していただく部分が、かなりユーザー目線に立っているというのが大きな要素だなと思いました。僕らももちろんユーザー目線を持ってはいるのですが、集英社ゲームズさんはデジタルゲームにおけるユーザー目線という点での視野が広く深かったので、そこがすごく道しるべみたいで助けになりました。
それから、問題点と合わせて必ず対案を出してくるところです。物によっては、僕はパッと見て「これ以上良い修正案は思いつかない」と、そのままコピペして次の工程に流したりしました。でも、その間もずっと「もっと良い言葉はないか」「より良い対案はないか」ということを考えて、見えない敵と戦っているみたいにして。直接的に見るのはスプレッドシートなんですが(笑)
それと夜な夜な戦う。その上で修正しないという判断をするときもある。6割くらいは言われたままの修正をするのだけど。もっと良いぞ、というアイデアが浮かぶときもある。そういう風にこっそり自分の中で化学反応を起こしていました。
――ポジティブな意味で、加藤さんと集英社ゲームズさんの間でバチバチやり合った、と。
加藤氏(SCRAP):
そうですね。「プロデューサーってこんなことまで言ってくるの!?」と驚きました。今まであまり言われたことがないレベルのことまでどんどん言われるから、最初はすごく面食らった部分もありました。途中からはずいぶん楽しかったですね。
ミヤザキ氏(集英社ゲームズ):
むしろちょっとやりたくなってきちゃったというところがあって。
一同:
(笑)
ミヤザキ氏(集英社ゲームズ):
本当に初期はマーケティング面のみで携わらせていただくつもりだったんですけども、仕上がってくるにつれて徐々にウズウズしてきて。「これ、こうした方がもっと良くなると思います!」と言いたくなってきたんですね。それを受け入れていただけたので、すごくやりやすかったです。
加藤氏(SCRAP):
ありがたかったです。
――赤坂先生らしさが出た部分はどこでしたか。加藤さんとミヤザキさんにお聞きしたいです。
ミヤザキ氏(集英社ゲームズ):
キャラをいつの間にか「好きになっちゃってる」というところですかね。ミコが一人で喋っているだけなのに、それを聞いているうちにミコのことが好きになっちゃってる。いちプレイヤーとして開発中にどんどんミコが可愛くなっていく推移を見られて、こんなに贅沢な仕事があるのか、と思いました。同じ女の子のはずなのに、章で時代の設定や立場が違うからいつも新鮮に出会えるというところが、もはや発明だなと思いました。

加藤氏(SCRAP):
僕もミコというキャラクターが生まれてきたことの素晴らしさを感じます。それとはまた別に、僕が赤坂先生との作業の中でずっと「守らなきゃ」と思っていたことは、赤坂先生が作る物語が持つすごさです。物語全体の起伏というか、少しずつ盛り上がっていく物語が、突然ガシャーンと風景が変わるように展開して、それが決して我々の望んだ方向に変わるとは限らない。しかし、その驚きがちゃんとあとで回収されていくという、本来物語が持っている喜びみたいなものが凝縮されているんです。
赤坂先生がこれまで作ってこられたお話と比べれば、本作は短い物語になるとは思うのですが、その中に小さな喜びの積み上げ、衝撃的な驚き、そしてその驚きが反転する別の衝撃みたいなものが凝縮されて入っていて、これを絶対に守らなくてはいけないと思っていました。
ミヤザキ氏(集英社ゲームズ):
確かに最初のプロットの段階から完成まで、大きな流れそのものは変わっていないので、全体の見通しの精度の高さが凄まじいと思いました。
総テキスト量16万文字、ミスしても楽しく読める
――赤坂先生は、ここはうまくできたと手応えがあった部分はありますか。
赤坂氏:
シナリオが初期プロットの状態から変わることがなかったというのは、最初に思いついたお話の筋がすごく良かったからだと思っています。最後までプレイしていただければわかると思うんですけど、筋が優秀で、多分僕が書かなくても面白いものになるんじゃないかと思うくらいなんです。そういう普遍的に面白い話を掘り出して提案できたところが、僕の一番の良い仕事だったんじゃないかと思います。
――お三方ともに、ストーリーはよく褒められますね。結構良いのでしょうか。
加藤氏(SCRAP):
「結構」なんてもんじゃないです。とてつもなく面白いです。見渡す限り、こんなに面白い物語は見当たらない。
一同:
(笑)
――開発中に出てきた課題と、そこへのアプローチと、結果としてどのように良くなったかなどを教えてください。
加藤氏(SCRAP):
多々あるのですが、特に大変だったのは難易度調整の部分かと思います。本作には、ミコに間違った指示を出してしまった時に表示される膨大な量の「失敗用」テキストがあるんですね。赤坂先生が書かれた、その失敗テキストのクオリティが異常に高いんですよ。だから、間違いをしても楽しく読めるんです。
一方で、謎解きの観点から言うと、間違うことによって少しずつ前に進んでいけるというのもとても重要だと思っています。そこで、たどり着くべき場所がわかっているのに指示の判断が間違っていたというときに、絶妙なヒントを言うものを用意しました。我々は「ニアピンテキスト」と呼んでいたんですけど。ミコのキャラクターを守りつつも、じわっと正解に寄っていけるような言葉にするという調整を、長い時間かけてやりました。
普段僕らは、謎解きではバン!と一瞬で閃いて0が100になる瞬間を快楽と呼んでいたのだけれど、今回のゲームでは0がまず10になって、次に20、40になって……という風にじわじわわかっていく。そして最後に乗り越えた時に快楽が発生するという構造になっているんです。それを一つ一つの謎に対して個別に丁寧にトリートメントしていくというところに苦労しましたし、同時にものすごくうまく行った部分だとも思います。

赤坂氏:
漫画の描き方は、基本的に「とにかく誰にでも分かりやすく、伝わるように」という風にするものなのですけども、謎解きはこの真逆で、分かりやすい上で分かりづらくしなきゃいけない、難しくしなきゃいけないという、バランスを取るのが大変ですよね。
ミヤザキ氏(集英社ゲームズ):
確かに、「これだとまだ全然分かりにくいです」という指摘は何度かさせていただいたような気がしますね。
――テキスト量はかなり多いということでしょうか。
加藤氏(SCRAP):
今数えてみたところ、16万ですかね。
赤坂氏:
そんなに書いてましたか。
一同:
(笑)
――失敗しても面白いテキストを読めるというのは、ある意味ご褒美だと思います。
赤坂氏:
そうなんです!ありがとうございます!僕は、謎解きで失敗する苦しみを知っているからこそ、そこを楽しくしたかったんです。

加藤氏(SCRAP):
16万文字あるけれども、進行上読まなくちゃいけないものはその半分くらいなんですよね。もちろん読みたい人はいくらでも掘ってもらって良いんですけれども、シナリオが気になる場合は先へ進んでいただいても大丈夫です。すごく単純なシステムで、昔ながらのアドベンチャーゲームの形をとってはいますが、プレイヤーそれぞれの個性や好みに寄り添えるゲームになっていると思います。
――失敗テキストのバリエーションを豊富に用意するのは大変だと思いますが、量産できた秘訣はなんだったと思いますか。
赤坂氏:
時間をかけることですかね。僕は「三題噺」という、3つのお題をもらってお話を作るというのが得意なんですけれども、それを即興でやらされているような気持ちでしたね。
加藤氏(SCRAP):
2千本ノックでした。
ゲーマー赤坂アカが見たいものを注ぎ込んだ
――赤坂先生はゲームを作りたいという意思が以前からあったのではないかと思うのですが、今回悲願がひとつ叶ったような感覚ですか。
赤坂氏:
そうですね。結構満たされてはいるし、良いものが作れたという感じもしています。でも、「ゲームを作りたい」という気持ちは不思議で。僕は今まで漫画やアニメなど、いろいろなものをやらせていただいて、作品が完成する姿を何度か見てきている中、ゲームの完成の姿はちょっと違うなって思っていますね。
より「みんなで作った感」が強いからなのかもしれません。僕が足を引っ張らなくて良かった、という気持ちかもしれないし……まだうまく表現できませんが、なんとかまずゴールできたという喜びはひとしおですね。
――赤坂先生は普段からゲームをよく遊ばれる印象ですが、最近はどのようなゲームを遊ばれましたか。
赤坂氏:
最近は『ぽこ あ ポケモン』を遊びましたね。優しい世界に癒されると同時に、結局僕って物を作るのが好きなんだなぁと思いました。『ドラゴンクエストビルダーズ』もすごく好きだったので、またそういうものを遊べたという喜びがありましたね。
――赤坂先生のゲーマーとしての目線から、本作に対して「ここをこうしてほしい」ということはありましたか。
赤坂氏:
僕のゲーマーとしての「これが見たい!」は、本作にはかなり注ぎ込んでいますね。地球規模の話をすると決めた時に、僕の中のオタク心が、あれが見たいこれが見たいと叫び声をあげて。地形や文明を育てていくようなジャンルを面白そうだと思った人には、「そう、そこそこ!」と思ってもらえるんじゃないかなと思います。オタクの自分が喜ぶ作品になっています。
――本作では、ストーリー、キャラ萌え、謎解きなどの複数の要素が絡み合っていますが、互いが互いを邪魔しないような配分はどのように意識されましたか。
加藤氏(SCRAP):
パーセンテージで分けるというよりは、これらが一つの物として感じられるようにしたいと思いました。システムと物語がリンクしているという話に通じるんですけど、萌えるためには物語を進めないといけないし、会話をしてフラグを立てなくてはいけない。そのために謎を解く。謎を解いた結果、ミコというキャラクターの良さがさらに伝わってくる。そして、物語の先が読めるようになる。
その結果、システムの中にあるソフト、つまりカミノイシを理解して適切に提示する必要がある。そのためには会話が必要になる――こうして、システムを理解すること、会話をすること、そこから感情が発生して萌えが生まれるという各要素がぐるぐる一定のタイミングで循環していくところが重要だと思っていました。僕は理屈でしかゲームを作れないので、ひたすら理屈でそれを回していました。

――SCRAPさんはさまざまな謎解きを出す中で、今回は特にここがよくできたという際立った要素はありますか。
加藤氏(SCRAP):
最初にも挙げた、システムと物語がリンクした作品にするというところは上手くできた点のひとつだと思うのですが、謎解きという観点では「ゴールが決まっている謎解きを作る」というのが、割と難しいながらに上手くできたかと思います。
先に物語ありきなので、この章では農業を思いつかなくてはならない、この章ではワクチンを、この章では文字を発明、この章では時間の概念を理解しなければいけない――というゴールが決まっている。時間の概念なんて、一体どうやったら何も知らない人類がそれを閃けるんだ? という、歴史的なレベルの閃きですよね。それと個人で戦うところが大変でした。
僕一人きりで人類を背負っているみたいな闇の中に入ってしまって、何も思いつかないまま一週間くらい経過してしまったことがあったんです。そこで久しぶりに権力を使って、会社中のいろいろなプロジェクトのエースを一週間だけ引き抜いて、「お前たち、今から時間の概念を閃く方法を思い付け!」とお願いして(笑)リアル神になって、歴史的な発明を思いつく方法を、会社ぐるみでブレインストーミングして、その一週間で飛躍的に謎解きとしてのレベルが上がっていったんです。
これは謎解きファンにとっても、とてつもなく素晴らしい体験になるし、そのシステムから生まれる閃きの質がものすごく高いレベルで成立していると思います。このシステムでやるからこその謎解きを追究し、それに完全に成功している作品に仕上げられたと思います。
――最後に、本作をどのような人に遊んでほしいと思いますか。
加藤氏(SCRAP):
もちろん全人類に遊んでほしいのですが……今回は図らずも歴史を感じるゲームを作れたので、現代に対して少し居心地の悪さを感じていたり、現代と自分の距離感がうまく見えない人に届いてほしいです。僕自身も、現代と自分の折り合いをつけることが年々難しくなってきてないかと思うところがあって。3年もするともう世間の常識が変化していると思うようなときがあるんですけれども、そういうときに人類の歴史をすごく短い時間で凝縮しながら体感できる本作のようなゲームを遊んでみることで、「現代における私」の立ち位置が少しだけクリアになるところがあると思っています。
つまり、すべての悩める人がこのゲームをやればいいなと思っています。その悩みに対しての答えは提示できないけれど、システム・物語・謎すべてがささやかな光のようなものになって感じられる作品にできたと思います。ドット絵というものだから表現できる面白さ――完璧じゃないから自分の中で想像する余地があり、その想像が自分の心情とリンクする。そういうゲームが結果として作れたので、今違和感をいだいているすべての人が遊んでくれたらと思います。
赤坂氏:
特別な人間になりたかったけど、世界の仕組みに気付いてしまって個人は個人でしかないと、肥大化した自意識が収まっていく過程があると思います。でも、子供だった頃の「自分は神様になれるかもしれない」と無邪気に思った万能感というのを、僕はこの作品に込めているところがありますね。「世界創造謎解きアドベンチャー」という言葉にちょっとでも惹かれるものがあったら遊んでほしいです。その単語のオタクが作ったゲームなので、その期待を裏切らないやつです! ピンと来たあなたに届きますように。
ミヤザキ氏(集英社ゲームズ):
加藤さん・赤坂先生のコメントが素晴らしすぎて気後れしているところですが(笑)時間がなくても、ゲームで気持ちよくなりたい人ならぜひ遊んでほしいと思っています。こんなに短いプレイ時間で、こんな高密度の話とスケールを楽しめるんだと驚いてほしいです。ともすれば短く密度が薄いという印象の作品になりかねないところを、ストーリーと謎解きのインタラクションによって「しっかりとゲームを体験できた!」という気持ちになるゲームにできていると思うので、「でも、大変な話なんでしょう?」と思う人にこそ手に取ってもらいたいですね。
――ありがとうございました。
『カミとミコ』は、ブラウザ(PCおよびスマートフォン)向けに4月23日配信予定だ。PCやスマートフォンのブラウザ上で、スクラップチケットから購入することでプレイ可能である。
[執筆:Kei Aiuchi]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]
©SCRAP / 赤坂アカ / SHUEISHA, SHUEISHA GAMES
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