『仁王2』β体験版レポート。遊べば遊ぶほど製品版への期待が高まる体験版

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彼の行く先は「変化ではなく進化」―― 東京ゲームショウ2019(以下TGS2019)で開かれた試遊体験にて、その方向性をプレイヤーへまざまざと見せつけた『仁王2』。しかし私達はまだその明確な目的地を知ることは叶わずにいた。そうして幾日が経ち11月1日。期間限定という形でβ体験版が登場したわけだ。果たしてβ体験版では、ゲームが目指す先についての手がかりを掴むことができるのだろうか。蓋を開けてみれば「製品版に向けた将来性」という面で非常に期待ができる内容であった。

『仁王2』は魑魅魍魎あふれる戦国時代を舞台に据えたアクションRPG。妖怪の力をその身に宿す主人公と、不思議な力を持つ鉱石「霊石」を売り歩く商人「藤吉郎」。美濃国にてひょんなことから出会った両者が、やがて時の一大権力者「秀吉」へと成り上がっていく物語が描かれる。俗に「死にゲー」と呼ばれる、何度もリトライを繰り返して攻略を進展させていくゲームコンセプト。そして一つ一つが微妙に異なるステータスを持った装備品を収集、装備し、自由に調整可能なステータス要素と合わせながら、個々人オリジナルのビルドを作り上げていくシステムが特徴である。発売日は2020年3月12日を予定している。

美麗なOPの上映後、筆者の体験版は始まった。早速New Gameのボタンを押すと、まずは自らの分身を作り上げるよう要請される。TGS2019の時点では複数あるプリセットから1つを選択する形式であったが、今回は顔や肉声をはじめ、ある程度であれば体格すら自分好みに設定できる。さらには既に公開された情報として話題となった中世時代特有のファッション「お歯黒」や「おしろい」なども実装されており、ゆくゆくは総じて独自性の高いキャラクタークリエイトが可能となることを予感させてくれる。なお外見の設定に関してはプレイ途中でも変更可能だ。

キャラクタークリエイトが終了すると、次にプレイヤーは湖にそびえ立つ大樹の足元にて、武器を2種類選択するよう指示される。以前から『仁王2』に実装される新しい武器種として「中距離」の間合いを得意とする「手斧」が追加されることが判明しており、今回の体験版においても彼は続投している。さてどれにしようかなと悩みあぐねていたところ、見慣れぬ顔が一つこちらを眺めていた。「薙刀鎌」である。この薙刀鎌、その名の通り薙刀と鎌、両方の特製を兼ね備えた変形武器だ。上段は叩き潰す大鎌、中段は薙ぎ払う薙刀、下段は刃が折りたたまれた状態で細やかに切り割くことを得意とする形状と、上中下段それぞれ明確な個性を有しており、武技によって流れるようにその形態を変化させながら戦うことを良しとする。3種類に変形するというだけで垂涎ものだが、構えを切り替える度に鳴く「ガギン、ガギン」という鋼の擦れる音がまた心地よく、筆者の心をまたたく間に撃ち抜いてしまった。

友を見つけた後は早速任務へ向かおう。え?「チュートリアルは無いのか」だって?本体験版において基本操作を覚えるためのチュートリアルは任意性となっており、必要とあらば修行場から一通り受けることができる。またゲームオーバー時にも受けられるため、ミッション中にふと操作をど忘れしてしまったという時でも安心してほしい。今回のβ体験版では、かの有名な秀吉の武勇伝のひとつ「墨俣一夜城」にまつわる物語の一端、そして斎藤道三の屋敷を舞台に妖蛇を狩るミッションなどを遊ぶことができる。なお本記事では「墨俣」におけるミッション進行を中心に論を進めていく。

墨俣の森に降り立ったプレイヤーはまず秀吉の提案で、後の腹心として知られる蜂須賀小六を探しに行くこととなる。挑むステージは全体的に道幅が狭く、落ちれば即死するポイントも多く設けられており、『仁王』らしい「初見殺し」のギミックが所狭しと仕込まれている。

大まかなプレイフィールに関してはTGS2019のレポートでも触れたように、操作方法自体が変わっていないということもあり、それ自体は旧作となんら遜色ない内容であると感じられた。しかし細かな点を観ていくと、敵の攻撃をガードで受け止めた際の気力消費が多くなっていることや、避けるしか無い投げ技の存在など、難易度という点に関して言えば、よりハードな調整へと至っている。

その中でも特筆すべきは、妖怪側に有利なフィールド「常闇」の存在だろう。「常闇」とはいうなれば「常世」が空間全体に広がった強化版。敵である妖怪が大技を放った時に少々湧き出る妖怪側の世界「常世」は、そこに近づくと、『仁王』というゲームにおいて命綱である「気力」の回復を大幅に遅らせてしまう効力をもっている。通常の「常世」であれば残心を用いて打ち消すことができるが、これが空間全体に広がる「常闇」だとそうはいかず。また常闇にいる妖怪は専用モーションを使用してくるなど大幅に強化されてしまう。TGS2019の時点ではボスキャラが一時的な強化方法として使用し、一定時間が経過するか妖力を0にすることで解除することが可能だったが、本体験版ではステージ中のギミックとしても採用されているのだから驚きである(ギミックとしての常闇は発生源である中ボスクラスの敵を倒すことで消失する)。

ではこうした障壁に対してプレイヤーは如何に立ち向かえばいいのだろうか。その答えは明確な形でゲーム内に用意されている。主人公が妖怪と人間のハーフ「半妖」である背景を活かした、妖怪にまつわる能力の数々である。

最初に取り上げたいのは、前作の九十九武器に変わる大技「妖怪化」だ。アムリタゲージを全て消費することで発動する妖怪化は名が示す通り、主人公の姿が前もって装備している守護霊の属性に対応する妖怪へと一時的に変化。それに伴う形で通常攻撃、強攻撃の内容が強力なものへ変貌する。またカウンターや守護霊を敵へと放つ新たなモーションも追加され、正に無双の力を振るうことができる。

次に紹介するのは、妖怪を倒すことで得られる「魂代」を装備することで発動する「妖怪技」だ。妖怪技は、魂代の入手先の妖怪が繰り出す技を主人公も使用できるというコンセプトとなっており、その内容はさまざま。β体験版では装備する魂代に応じて包丁や槍を飛び上がりつつ投げたり、地中に潜航して急襲することだってできるようになる。また「魂代」自体にランダムなステータスアップの効力があるため、『仁王』という作品における旨味のひとつ「ハックアンドスラッシュ」の新規要素も兼ねているのだ。

これら2つの要素はどちらも常世、常闇に触れている間、威力が強化される。すなわち妖怪が繰り出す攻め手に対し強力な返し技として機能する。肉を切らせて骨を断つ。時にはあえて常世に飛び込み妖怪技を放ったり、アムリタゲージを無闇に使用せず、常闇に対する切り札としてとっておくといった立ち回り方も必要となるだろう。

返し手と言えば「特技」の存在も忘れてはならない。ザコ敵、ボス敵、妖怪、人間に関わらず、全ての敵は赤いオーラをまとった後に強力な大技を放ってくる。装備した守護霊によって内容が異なる「特技」は、タイミングよく繰り出すことで、いずれも大技の発動をせき止め、相手の妖力を大幅に削る能力を持っている。これを如何に上手く活用できるかが今作における勝負の分かれ目と言っていいだろう。特技は気力を消費すること無く、妖力ゲージという独自のゲージを消費して発動する性質をもっており、大技が出る直前まで敵を切り刻み、すんでのところで特技を放つというコンボに組み込む形での使い方も可能だ。また探索の末に入手することが叶えば、強力な妖怪武器の使用も一考に値する。

主人公自身が抱える妖怪にまつわる能力は、『仁王2』にて新たに追加されたスキルツリー「半妖」の項において強化できる。中には常世、常闇中での気力回復速度の低下を抑えるものなど、ほぼ必須級と考えられるスキルも用意されているため、体験版を遊ぶ際には是非一通り目を通すことをオススメしたい。

妖怪の力を振るう以外の攻略方法としては、まれびとや義刃塚といったマルチプレイ要素を頼るのもいいだろう。利用するには「お猪口」というドロップアイテムが必要となるが、孤独な旅路において側にいてくれる存在というのは、それだけで心強い味方としてこの上ないものだ。逆に誰かを助けたいという場合でもしっかりと見返りは存在しているため、興味があるプレイヤーは是非活用してみてほしい。

冒険の最中、小六との出会いと別れを経て森の奥地へとたどり着くと、そこに待ち受けるはボス敵「鎌鼬」。秀吉から半ば押し付けられる形で突入する彼の者との戦いは、まさしくボスの名にふさわしい激闘となること請け合いだ。筆者が提案する攻略法としては、常に敵と自分との間に一本、太い木を挟む立ち回りを心がけることである。鎌鼬は戦闘中身体に生えた大鎌でもって、大気を斬撃として飛ばしたり、ホーミングする竜巻を発生させてくるが、太い木の影に隠れてさえすれば彼が放つ飛び道具の一切を無効化できる。その他の攻撃は大技を除いてガードで受け止めることが可能なため、鎌鼬が技を振り終えた隙に一撃二撃と刃を差し込むことができれば、自ずと戦いの出口が見えてくることだろう。

鎌鼬との戦闘において注意すべき点は、体力を4分の1ほど減らしてから度々使用してくる「常闇」の展開だ。先述したとおり常闇という状況下では気力回復速度が低下。また分身して突撃する専用モーションが追加されることも重なり、プレイヤーは一転防御に回らざるを得なくなってしまう。妖力の減少や時間経過で常闇は解除されるが、間を置けば再び展開を行ってくる。随時展開される常闇をどうしのぎ切るかにこの戦闘の勝敗全てがかかっていると言っても過言ではない。

常闇が広がったときは、まず落ち着いて「御神水」を飲むといいだろう。敵からのドロップなどで入手できる御神水は、気力回復速度向上の効果を持ち、ある程度常闇の影響を軽減できる。そしてガードではなく回避を中心とした立ち回り方を心がけることだ。常闇中における鎌鼬の攻撃は連続攻撃が多く、下手にガードしていると簡単に捲られ細切れになってしまう。しっかりと「かわしながら」隙をついて攻撃を行っていこう。ここでもオブジェクトの活用を忘れずに。そして常闇中は妖怪化や妖怪技の使い所でもある。妖怪技に関しては、道中で入手できる「わいら」の潜航急襲が攻防一体の技として活用できるためオススメだ。回避困難な連続突撃に対する札として、ココぞという場面で切っていきたい。

見事鎌鼬を突破できればミッションは終了。報酬としていくつかの素材とキャラクタークリエイト画面で使用できる小六のアセット……「姿映し」を手に入れることができるほか、製品版で使用できる装備品のデータをダウンロードすることができるようになる。また新たなステージも開放される。ちなみに筆者は前作プレイ済みにも関わらず、鎌鼬との戦闘だけで数時間かかってしまった。クリア時点でのレベルは9。少なくとも10前後がなければ安定したクリアは難しいと思われるため参考にしてほしい。戦いに際して奉納を利用した回復アイテムの収集や溜まったスキルポイントの使用もお忘れなく。

レビューとしては、随所に妖怪化をはじめとするプレイアブルな新しい要素が盛り込まれているものの、一つ一つが旧作の延長線上にあるがゆえに地味。体験版では出来ることが少ないということも相まって「仁王らしい新鮮味」を感じることは少なく、逆に常闇をはじめとする、プレイヤーのアクションを縛り、難易度を上昇させるシステムやレベルデザインが悪目立ちしてしまっている印象を受けた。さまざまなステータスを強化し、強力な武具を揃えていく過程を味わうことができるようになれば、また違った感想を抱くのであろうが、現時点では困難を乗り越える達成感よりも、重圧からの開放による疲労感の方が大きい。

しかしこれは『仁王2』からの新要素が単純に「悪いものだ」と断じることではないことに注意してほしい。スキルツリーの細分化や妖怪にまつわる新システムの数々は将来性という面から鑑みれば、体験版の時点で既に非常に期待できる内容となっている。たとえば「特技」に関しては、極めさえすれば敵に張り付き無傷で攻撃をし続けることが可能であろうし、より細分化されたスキルツリーは今後さらなる項目が追加されていくことだろう。現時点では障壁の一つとして文中に上げた常闇も、妖怪方面にビルドを特化していけば最終的にボーナスタイムになりうるかもしれない。またボス戦における守護霊の自動回収をはじめとして、利便性の改善のためさまざまな部分に細かく手が入っていることが確認できたりと、「変化ではなく進化」というコンセプトの一端をしっかりと感じさせる体験版であった。

『仁王2』は2020年3月12日に発売予定。β体験版は11月1日から11月10日までの期間限定で配信されている。現在体験版を遊んだプレイヤーに対し、製品版の品質向上に向けたアンケートも同時開催中だ。プレイの中で湧いた疑問点・改善点はぜひ開発陣へ提案として送ってみて欲しい。

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