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新たな中毒系サイコロローグライク『ダイス・タバーン』で“最強ビルド”を作って、無双して、叩き潰された。つらい。気持ちいい。やめられない
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パブリッシャーのHARRISONWORLDは9月8日、Cavi Studioが手がける『ダイス・タバーン:運命の一投』を発売した。対応プラットフォームはPC(Steam)で、現在はリリース記念として通常価格の20%オフとなるセールも実施中。デモ版も配信中だ。本稿では製品版の先行プレイに基づき、カジュアルな見た目の裏で延々と決断を迫ってくる、ヒリつくようなプレイ体験をお届けしよう。
『ダイス・タバーン:運命の一投』は、伝統的なダイスゲーム「Farkle(ファークル)」をベースに、ローグライクのビルド構築を融合させたダイスバトルRPGだ。物語の原点となるのは、北境の貧しい村の酒場で育ち、幼いころからFarkleに親しんできた少女「エレナ」。ダイスを振るたびに生まれる挑戦と逆転の面白さに魅了された彼女は、成長後に「ダイス・タバーン」を開き、その楽しさを王国中の旅人たちへ広めていく。プレイヤーはそんな世界で6つの酒場を巡り、特殊なルールを持つ30人のギャンブラーたちと勝負を重ねながら、王都で待つ王国最強のダイスプレイヤーを目指すことになる。
シンプルなルールの裏に潜む“安全策”の限界

本作のルールは極めてシンプル。ターン開始時に6個の6面ダイスを振り、1や5といった単体で得点になる「単騎」や、同じ数字の複数揃い、ストレートなどを作ってスコアを稼ぐ。得点になるダイスをロックしたあとは、その時点のスコアを確定する「バンク」か、残ったダイスを振り直す「スコアリロール」を選択可能だ。ただし、振り直してひとつも役が成立しなければ「ファークル」となり、そのターンの未確定スコアは“すべて”消失。制限ラウンド内に目標スコアに達すれば勝利となる。
デモ版を遊んでいた筆者は、序盤ではとにかく“欲張らないこと”を心がけた(関連記事)。数百点から1000点ほど稼いだらバンクし、少しずつ安全に積み上げる。最初の「村の酒場」では目標スコアも1500点から3500点ほどで、この慎重な立ち回りがよく機能した。リスクを避ければ着実に点数を重ねられるわけだ。しかし、ステージが進むにつれて要求スコアは一気に膨れ上がり、ボスクラスでは2万点、3万点を超える。こうなると少額を大事に持ち帰るだけでは、そもそも制限ラウンド内に届かない。大きな事故を起こしていないのに、淡々と点数不足で負けるのだ。
脳を焦がす「振るか、降りるか」のジレンマ

ならばもっと攻めればいい。そう考えた筆者は、それまでならバンクしていた場面でもリロールを選ぶようになった。1000点を超えても振る。2000点まで伸びても、まだダイスが残っていれば振る。役が連続して数千点を稼げた際の高揚感は凄まじいが、ファークルを引けばすべてが消える。失った点を取り返そうと無理をして、またファークル。先ほどまで慎重すぎて負けていた人間が、今度は欲をかきすぎて自滅するようになった。伸び続けていた点数が一瞬にして無に帰す分、慎重な立ち回りをしていたときよりもメンタルに来る。
安全策だけでは届かず、攻め続ければどこかで足元をすくわれる。結局重要なのは、現在のスコアや残りダイス、残りラウンドを見ながら「今回はここまで」と判断することだった。分かってしまえば当たり前だが、実戦ではこの引き際がとにかく難しい。ダイスが4個も残っていれば1か5のひとつくらい出る気がするし、2000点まで来れば3000点まで伸ばしたくなる。ダイスを振るゲームでありながら、実際には「振るか、降りるか」を迷う直前の数秒間がもっとも苦しく、そして面白いのだ。
確率を捻じ曲げる“ダイス魔改造”

こうして引き際の重要性を思い知らされた筆者は、次に「そもそもファークルしにくいダイス袋(デッキ)を作ればいいのでは?」と考え始めた。本作には出目の傾向が異なるダイスが35種類存在し、「布巻きダイス」は1と5が出やすく、「不人気ダイス」は1と6の確率が低い。「鉛入りダイス」のように1へ極端に偏ったものまであり、見た目は同じ六面体でも中身はまるで別物だ。さらに、「改造パーツ」を使えば特定の出目の確率を上げたり、「注鉛工具」で1と6だけが50%ずつ出るダイスへ変えたりできる。加えて、特定の役やバンク時の得点などを強化する「バッジ」も約30種類用意されているのだ。

そして筆者が頼り切るようになったのが、単騎を軸にしたビルドだ。1の基礎点を300にする「壱点至尊」や、5を強化する「伍点加持」といったバッジに加え、「銀メッキシール」でファークルへの保険を用意し、「反転鏡」や「賽ずらしカード」で出目を強引に調整する。ショップへ入るたびに1と5の出現率を確認し、改造まで重ねるうち、筆者のダイス袋は着々と「1と5を出すための袋」へ変貌していった。
もちろん、ほかにも3を揃えるビルドや、ストレート得点を倍化する「歯車咬合」、未ロックダイスが少ないほど強くなる「薄氷の舞」、リロールで倍率を伸ばす「連撃狂熱」を中心としたビルドなど、選択肢は多彩だ。筆者も何度か別ビルドへ浮気したものの、ローグライクなので欲しいパーツが都合よく揃うとは限らない。3へ寄せたのに必要なダイスが出ず、その途中で強力な1特化ダイスが並ぶ。結局「やはり信じるべきは単騎」と単騎ビルドへ帰っていくことを何度も繰り返した。
「引き際」すら変えるシナジーの奥深さ

単騎へ傾倒していくうち、筆者はダイス同士の組み合わせで発動する「シナジー(共鳴)」にも手を出し始めた。シナジーは43種類存在し、たとえば黒巾ダイスと小幸運ダイスを揃える「闇市取引」は、バンク時に特定のダイスが揃っていればスコアが1.1倍になる。一方、布巻きダイスと騎士ダイスを組み合わせる「血誓の刃」は、ロック計分時に騎士ダイス1個につき500点が加算される。前者のシナジーなら早めにバンクしたくなるし、後者は騎士ダイスをひとつでも多くロックしてからバンクしたくなる。同じダイスを使っていても、組み合わせる相手ひとつで「引き際」のタイミングまで変わるのだ。
慢心を生む“ビルド構築”

そして、あるランでのことだ。初期状態から複数の改造パーツを持つ「鍛冶屋」でスタートした筆者は、序盤から順調に資産を増やし、ついに理想的な構築を組み上げることに成功した。第3層にあたる「城の酒場」へ到達した時点で、ダイス袋の中身は3つの「騎士ダイス」と3つの「黒巾ダイス」という、我ながら完璧な単騎ビルドに仕上がっていたのである。
このビルドの真髄は、1の目を“毎回ひとつだけ”ロックし続けることにある。単騎をひとつロックするたびに「草冠の王」や「連撃狂熱」、「薄氷の舞」といったバッジやシナジーが連鎖してスコアが爆発的に増え、同時に「吸金の磁石」の効果でチャリンチャリンと大量のゴールドまで稼ぎ出してくれるのだ。さらに万が一の事故も銀メッキシールの力でファークルを防げるという、まさに非の打ち所がない布陣だった。実際、城の酒場に立ち塞がる目標スコア2万8000点の「城壁守備兵」や、目標スコア3万2000点の「女騎士」といった屈強な敵たちも、このコンボの前では赤子も同然であり、目標を上回る大勝を連発していた。
ビルドを粉砕する無情な「特殊ルール」

完全にゲームを支配したと慢心した筆者は、次の対戦相手である「軍需官」に意気揚々と挑んだ。目標スコアは3万7000点と極めて高いが、与えられた制限ラウンドも12ラウンドと長い。この無敵の単騎コンボなら、12ラウンドもあれば余裕でお釣りがくる。そう高を括り、敵ごとに設定されている「特殊ルール」をろくに確認せず、勢いよくダイスを振った。狙いどおり1が出たので、いつものようにひとつだけロックしようとする。すると、画面に「FARKLE!」の表記が。次のターンでも1がひとつ出るが、また「FARKLE!」。「ここまで来てバグか?」などと的外れな文句を漏らしつつ、ようやく軍需官のルールを確認して血の気が引いた。
「毎回のロックで、最低2個のダイスを選択しなければならない。」
ダイスを“ひとつだけロック”することで、全てのアドバンテージを引き出す筆者の完璧な構築は、このたった一行のテキストの前に、音を立てて崩れ去った。1個だけをロックする動きそのものが封じられ、単騎をひとつずつ積み上げることで成立していた各種効果も満足に活かせない。結果として、3万7000点という遥か彼方の目標に対し、最終スコアはわずか7560点という大敗北。手塩にかけたダイスや大量のバッジが無惨に並ぶ最終構築の画面をただ呆然と見つめながら、筆者は何もできずに幕引きを迎えたのだった。
敗北を糧に成長するのは“プレイヤー自身”

しかし、この痛烈な敗北の直後、新たなプレイアブルキャラクター「収集家」の解放通知が表示された。固有能力は「究極共鳴の発動条件がマイナス1になる」というもので、これまでとは異なるシナジー構築を試せそうな性能だ。完璧だと思っていたビルドを特殊ルールで粉砕されたばかりだというのに、新しい攻略の選択肢を見せられると、悔しさはたちまち「次はこのキャラクターで別の構築を試したい」「今度こそ相手のルールまで読み切って出し抜きたい」という意欲へ変わっていくのだから、自分でも驚きである。
本作のプレイアブルキャラクターは計11人。「博徒」はラウンド数が減る代わりにバンク得点が1.5倍、「道化師」はバンク時に65%で得点が倍、35%で1点になる。「錬金術師」のように特定アイテムを安く買える者もおり、選ぶキャラクターによって資金管理やビルドの狙いも変化する。その一方、遊ぶほどに基礎能力が上昇し、数字の力で押し切れるようになる“恒久強化要素”は存在しない。
つまり、ランを重ねてもっとも大きく変わるのはプレイヤー自身だ。どこまでリロールするか。ゴールドを今使うべきか。せっかく完成したビルドでも、相手のルールと噛み合わなければ捨てるべきなのか。最初は「運が悪かった」と済ませていた敗北にも、遊び続けるほど別の選択肢が見えてくるのだ。
運と実力が交差する、試行錯誤の楽しさ

筆者自身、製品版を何度遊んでも、新しい構築を試しては途中で迷走し、また1へ戻り、ようやく整ったと思えば強烈な特殊ルールに叩きのめされることを繰り返している。それでも敗北するたび、「次はここでバンクしよう」「あの相手を無理に倒す必要はなかった」「今度こそ別のシナジーを試したい」と次の手を考えてしまう。この終わりのない反省会が次の一投へ繋がっていく感覚こそ、本作の魅力なのだろう。
『ダイス・タバーン:運命の一投』は、間違いなく運が絡むゲームである。運を読み、確率をいじり、ゴールドを管理し、敵のルールに合わせて構成を変える。それだけ準備しても、最後の一投だけはダイスへ委ねるしかない。本作の面白さは、運を完全に排除することではなく、自分でどうにかできる領域を少しずつ広げながら、それでも最後まで残る不確定さと付き合っていくところにある。サイコロを振って一喜一憂するカジュアルな見た目の裏には、想像以上にストイックで、何度負けても反省したくなる奥深い勝負が待っていた。
なお本作はSteam Deckにも対応しているため、自宅だけでなく外出先でもプレイ可能。1周目を終えたあとには全15段階の「法令レベル」も控えており、ひとつのビルドを完成させて終わりではなく、遊び込むほど新たな条件のもとで戦略を練り直すことになるだろう。また、進行に応じて残局モード「終盤チャレンジ」も解放され、通常のランとは異なるダイス勝負に挑戦できる。一投ごとに引き際を見極める、悩ましくも小気味よいダイス勝負を、ぜひ製品版で味わってみてほしい。
『ダイス・タバーン:運命の一投』はPC(Steam)向けに配信中。リリース記念セールとして、9月8日10時から9月22日2時までは定価から20%オフの税込1200円で販売されている。現在はデモ版が配信中。
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