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Steamの新たな中毒系ローグライク『ダイス・タバーン:運命の一投』は地味……なのに強烈な“運ゲー連鎖”のエクスタシー。ビルドが「欲」を呼ぶダイス沼、デモ版配信中
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パブリッシャーのハリソンワールドは、Cavi Studioが手がける『ダイス・タバーン:運命の一投』を2026年第3四半期末に配信予定だ。対応プラットフォームはPC(Steam)。ゲーム内は日本語表示に対応予定。現在Steam Nextフェスにあわせてデモ版が配信されており、本稿では本作の素朴ながらも惹き込まれる魅力を紹介していく。
『ダイス・タバーン:運命の一投』は、伝統的なダイスゲーム「ファークル」を題材としたデッキ構築型ローグライクゲームだ。プレイヤーは6つの酒場をめぐり、羊飼いから占い師まで、あらゆる博徒たちにファークル勝負を挑んでいく。村の酒場から王の御前まで、すべての酒場で勝利をつかみ取るのだ。

本作のデモ版を遊んで印象に残ったのは、見た目の落ち着きに反して、実に欲深い遊びであることだ。『Balatro』や『CloverPit』のように派手な演出でプレイヤーを魅了するタイプではなく、UIは視認性重視で、SEやエフェクトも落ち着いている。だがそのぶん、サイコロを振り、役になる目を固定して確実にスコアを増やすか、さらに勝負に出るかを選ぶファークル本来の駆け引きが際立っている。さらにその駆け引きはローグライク要素によってより深く、より“欲深く”押し広げられているのだ。
そもそも「ファークル」とは

まずは題材となっている「ファークル」について紹介しておこう。ファークルは、サイコロを振って出た目で役を作り、得点を稼いで「ここでやめて得点を確定するか」「さらに振って得点を伸ばすか」を選ぶダイスゲームだ。基本的な流れはシンプルで、まず複数のサイコロを振り、役が成立した場合は、得点となる出目を取り分ける。そこでスコアを確定してもいいが、まだ振れるサイコロが残っていれば、追加で振って追加得点を狙ってもいい。ただし、振り直した結果、役がひとつもできなければチャレンジは失敗。「ファークル」となり、そのターンで稼いだ得点をすべて失ってしまう。つまりファークルとは、目の前の得点を安全に持ち帰るか、それとも失敗の危険を承知でさらに欲張るか。サイコロを振るたびに、引き際の判断を迫られるダイスゲームなのである。
日本でファークルを知っている人は少ないかもしれないが、ようするにサイコロを振って出目に一喜一憂する遊びと考えれば楽しみが想像しやすいはずだ。良い目が出ればもう一度振りたくなり、積み上げた得点が大きくなるほど、失う怖さも増していく。『ダイス・タバーン:運命の一投』は、そうした単純な賭けの気持ちよさに、ダイスの強化やビルド構築、相手ごとの特殊ルールといったローグライク要素をくわえた作品だ。
ファークル+ローグライク=底なし沼

では、ファークルにローグライク要素をくわえるとどうなるのか。結論からいえば“底なし沼”である。本作ではラン開始時にそれぞれ能力が異なるキャラクターを選択でき、デモ版では旅人、農夫、鍛冶屋の3人が存在する。旅人は能力なし、農夫は初期ゴールドを100所持、鍛冶屋は最初からアイテムを所持しているなど、同じランでも、どのキャラクターを選ぶかによって、狙いやすいビルドや動き方が変わってくるわけだ。ひとまず今回は、最初から選べる“旅人”で酒場の扉を叩いた。

本作では相手を倒すことでゴールドを獲得できる一方、敗北すればランはその場で終了する。また必ずしも順番に全員を倒す必要はなく、リスクを承知でいきなりボスへ挑むことも可能。ここでも“欲張る”ことができる設計となっている。

しかしながら、筆者はファークルを一度もプレイしたことがない。いきなり強敵に挑んで酒場の床に転がる未来は避けたかったため、まずは最も目標スコアが低い「老農」に挑むことにした。バトルが始まると、画面にはサイコロを転がす盤面と目標スコア、1ターンで獲得した合計スコアなどが表示される。そして「ロール」ボタンを押せばサイコロが転がり、役が成立した出目をロック、つまり確定していく。最初は役を知らなかったため戸惑ったが、役はゲーム内でいつでも確認可能。さらに、選んだサイコロで役が成立するか、どれだけスコアを得られるかも表示されるため、遊びながら流れを覚えることができた。

役そのものも分かりやすい。大きく分けると、1もしくは5の出目一つで得点になる「単騎」、同じ目をそろえる「連番」、1から5、または2から6など連続した数字をそろえる「ストレート」、そして役が何も成立しない「無効」がある。単騎は成立しやすいぶん得点は控えめで、連番やストレートは成立しにくいぶん高得点を狙える。しかしファークルで重要なのは、振り直した際、役がひとつもできなかった場合だ。この場合はゲームの名前通り「ファークル」となり、そのターン中に稼いだ得点がすべて失われてしまうのである。
ここでようやく、ファークルの怖さがわかってきた。サイコロを振り、役をロックする。そこで「バンク」、つまりターンを終了すれば同ターンのスコアは確定し、得点として持ち帰れる。一方で「得点&再ロール」を選べば、残ったサイコロでもう一度勝負に出られる。役ができれば得点はさらに伸びるが、もしできなければファークルとなり、それまで稼いだターンスコアはゼロ。目の前の点を持ち帰るか、もう一投に賭けるか。やることはシンプルだが、リスクとリターンで常に頭を悩まされるわけだ。
ビルド構築で広がる「もう一投」の誘惑

辛くも老農に勝利すると、ゴールドを獲得できた。対戦で得たゴールドは、酒場にいる行商人のもとで使用可能。ここではダイスをはじめ、プレイヤーにパッシブ効果を付与するバッジ、ダイスに追加効果をくわえる改造パーツなどを購入できる。行商人が販売している商品はさまざまだ。たとえばダイスには、奇数の目が出やすい奇数ダイスや、1と2が出やすいイカサマダイスなどが存在する。通常のサイコロであれば、どの目が出るかは等確率に近い。しかし本作では、ダイスごとに出目の傾向が異なるため、どのダイスを袋、つまり本作におけるデッキに入れるかによって、狙う役も変わってくる。1や5の単騎で細かく稼ぐのか、連番やストレートを狙い大きく伸ばすのか。あるいは、特定のダイス同士を袋に入れることで発生する「シナジー」を狙うのかを考えていく。

このシナジーが本作の見どころのひとつだ。シナジーはさまざまあり、たとえばラテン語ダイスと騎士ダイスを同時にロックすると得点が伸びる「十字軍の聖戦」が発動。黒巾ダイスと騎士ダイスをそろえることで得点&再ロールごとにゴールドを獲得できる「盗賊騎士の追いはぎ」が発動するなど、単なるスコア上昇に留まらない組み合わせが用意されている。効果はひと目で理解しやすいものもあれば、難解な分、強力なコンボの可能性を感じさせるものも。堅実か、ハイリスクハイリターンかの選択を迫られるのはダイス選びにおいても例外ではない。。

パッシブ能力を付与する「バッジ」もまた、ビルドの方向性を大きく変える要素となる。得点&再ロールごとにターンスコアが増えるものや、特定の条件で得点を倍増させるものなど、効果はさまざまだ。手に入れた段階では強さを実感しづらいものもあるが、実際に勝負の中で条件が噛み合うと、スコアが跳ね上がることもある。ただしこうしたバッジの効果を狙い始めると、自然と引き際の判断も難しさを増していく。
ダイスで役を作り、バッジで得点を伸ばし、改造パーツやメッキといった装備品でさらに出目や効果を調整していく。本作はファークルの単純な駆け引きに、少しずつ自分だけのサイコロビルドをくみ上げるローグライクの面白さが加わっているわけだ。
ただし、対戦相手も一筋縄ではいかない。一部の相手と戦う際には「特殊ルール」が発動し、バンクに必要な最低スコアを指定されたり、ファークル時に合計スコアへペナルティを受けたりする。単純に高得点を狙えばいいわけではなく、相手のルールに合わせて、攻め方や引き際を変えなければならない。最初の酒場は難易度こそ控えめだが、欲張った得点&再ロールでターンスコアを失う場面もあり、ファークルの恐ろしさはしっかり味わわされた。
「特殊ルール」で揺さぶるボス戦

そうして何度か辛酸を舐めつつ、最初の酒場のボスへとたどり着いた。しかし今回のボス戦では、すべてのストレートの得点が半減する特殊ルールが発動。これまで高得点役として頼りにしていたストレートを素直に狙いづらくなり、いきなり動きが制限される。とはいえ、安い役ばかり狙っていると、規定ラウンド内に目標スコアへ到達せず勝利できない。まさに、ファークルらしい引き際の判断と、ローグライクらしい対応力の両方を試される一戦だった。
ここで背中を押してくれたのがBGMだ。本作は全体的にUIやエフェクトがシンプルな一方で、音楽は個性的であり、勝負の熱気を高めてくれる。ボス戦では楽曲も変化し、乾いたギターの音色と歯切れのよいアップテンポなリズムが、プレイヤーの心を鼓舞してくれるのだ。また中世風の酒場でダイスを転がしているはずなのに、どこかラテン調の華やかさもあり、特にボス戦のBGMは筆者のお気に入りである。

BGMにも後押しされ、どうにかボスを撃破すると、次の酒場へ進めるようになった。意気揚々と先へ向かおうとしたところで現れたのが、「行商人」だ。どうやら次の酒場におけるラウンド数を代償に、ゴールドやアイテムを獲得できる取引をおこなえるらしい。ラウンド数が減れば当然、目標スコア到達の猶予は短くなる。しかし提示された報酬はいずれも魅力的で、ここでもまた「安全に進むか、目先の強化に手を伸ばすか」という選択を迫られる。
欲望に忠実な筆者はもちろん取引を選択。ここではランダムにバッジを一つ獲得できる取引を選んだ。ランダム要素のあるゲームで、さらにランダムな報酬を選び取るあたり、自らのギャンブル脳っぷりが身に染みる。それでも結果として、得点&再ロール時に未ロックのダイスが2個以下なら得点が倍になるバッジ「綱渡り」を獲得できた。単騎でコツコツ攻めるビルドと相性がよく、今後の伸びしろにも寄与してくれそうな逸品だ。
取引や買い物を重ねるうちに、所持品の取捨選択も悩ましくなってくる。本作では保有可能なサイコロ、バッジ、消耗品などに上限があり、いくらでも抱え込めるわけではない。今あるビルドに合うものを残すのか、将来の伸びしろを見て新しい効果に賭けるのか。ダイスの出目だけでなく、買い物や報酬選びの段階でも小さな賭けが積み重なっていく。ファークルの「もう一回いくか、踏みとどまるか」という迷いが、ラン全体のデッキ構築にも広がっている印象だ。
敗北から見える“勝利への近道”

ただし、勢いだけで最後まで突き進めるほど、本作の酒場は甘くない。筆者の初挑戦は、ファークル時にスコアが大きく減少する特殊ルールの前に敗北となった。順調にビルドが育ってきたと思った矢先、欲張った一投で流れが崩れ、積み上げてきたものが一気に遠のいていく。想像以上に悔しかったが、敗北後には、そのランで使っていたデッキ構成を確認できる。さらに各出目の出現回数もチェックできるため、単に負けて終わりではなく、次に向けた反省材料が残るのはありがたい。
条件を満たすことで新たなダイスやアイテム、キャラクターも解放される。敗北こそしたものの、ランの中で得た発見は次に持ち越される。次は別のキャラクターで挑むのか、今回見つけたシナジーをもう一度狙うのか、それともまったく違うビルドを組んでみるのか。失敗して酒場を追い出されたはずなのに、気づけば次の一投のことを考えている。この後味の悪くない敗北感も、本作を続けたくなる理由のひとつなのだろう。
製品版でさらに広がる“ダイス沼”

以上が、本作のデモ版をプレイして得た所感である。本作はファークル本来の押すか引くかという駆け引きが、ローグライク要素と絡まりつつ、ゲーム全体に根を張っている。射幸心を煽るような派手な演出こそないものの、すべてを失いかねないリスクのなかで、サイコロを転がす、ランダム報酬を選ぶといった運の絡む要素から幸運を引き当てる快感はシンプルながらも強烈だ。舞い上がり、欲をかき、そしてすべてを失う。その繰り返しで、プレイヤーを欲望の底なし沼へと引きずり込んでいくのである。
とはいえ、筆者が遊んだのはまだデモ版にすぎない。製品版ではダイスは23種類、キャラクターは10人登場するという。さらに6軒の酒場に挑戦可能で、特殊なルールをもつ強敵たちは30人におよぶそうだ。ダイスやバッジ、キャラクターの組み合わせが増え、攻略対象も増加する製品版では、この沼がどこまで深くなるのか目が離せない。
なお本作は6月開催のSteam Nextフェスに参加予定。デモ版は日本語表示に対応しており、序盤の酒場3軒を3人のプレイアブルキャラクターで攻略できる。欲望の沼にハマりたい方は、デモ版を一度試してみてはいかがだろうか。
『ダイス・タバーン:運命の一投』はPC(Steam)向けに今年第3四半期末に配信予定。
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