「くまのプーさん」のピグレットを“サイレントヒル送り”にするネットミームが生まれる。実は約20年前に発揮されていたホラーとの親和性

「くまのプーさん」のピグレットを“ホラーゲームに登場させる”という一風変わったネットミームが広まりを見せている。きっかけは、海外向けに2003年に発売されたゲームにあるようだ。

「くまのプーさん」のピグレットを“ホラーゲームに登場させる”という一風変わったネットミームが広まりを見せている。きっかけは、海外向けに2003年に発売されたゲーム『Disney’s Piglet’s Big Game』のホラー要素にあるようだ。海外メディアDestructoidが伝えている。

先日より海外Xユーザーを中心に、ディズニー映画「くまのプーさん」のピグレットをモチーフとするコラージュ画像やイラストなどをさまざま投稿する流れが賑わいを見せている。中にはホラーゲーム『サイレントヒル2(SILENT HILL 2)』になぞらえた画像やイラストが多く見られ、いずれも明るい作風の「くまのプーさん」でのイメージからはかけ離れた組み合わせといえる。


奇妙な現象の背景には、『Disney’s Piglet’s Big Game』というゲームがあるようだ。『Disney’s Piglet’s Big Game』は、フランスのDoki Denki Studioが手がけたアクションアドベンチャーゲーム。海外にてPC(Windows/Mac)/PS2/ニンテンドー ゲームキューブ/ゲームボーイアドバンス向けに、2003年に発売された。

本作はディズニー映画「くまのプーさん」を題材とするゲームで、主人公となるのはピグレット。プラットフォームごとに内容に違いがあるものの、コンソール向け作品ではピグレットがGranosorusと呼ばれる影の怪物に立ち向かう物語が描かれる。


“ホラーゲーム”として20年越しの注目

そんな本作が、なぜ今になって不思議な注目を浴びているのだろうか。発端とみられるのはXユーザーのJaxonloid氏の投稿だ。同氏は『Disney’s Piglet’s Big Game』のサウンドトラックにおける楽曲「Foreboding 1」を紹介。明るいパッケージイラストと大きなギャップを感じる、憂鬱で寂寥感のある曲調だ。本作のサウンドトラックにはこうした“ホラーゲーム風”の楽曲が11種類も収録されているとのこと。

さらにそんな「Foreboding 1」について、別のユーザーが『サイレントヒル2』リメイク版の楽曲「Chthonic Symphony」に似たサンプリングが用いられているとの考えを示している。本格的なホラーゲーム『サイレントヒル2』と“ピグレットのゲーム”にBGMのほんのり類似している意外性からか、大きく注目を集める格好となった。


怖いのはBGMだけじゃない

その後別のユーザーは『Disney’s Piglet’s Big Game』ではBGMだけでなく、ゲーム内にもホラー演出があることを紹介。同ユーザーが紹介した映像では、憂鬱なBGMと共に薄暗い食堂や不気味な美術展示ギャラリーなど、ひと気のない宮殿内を探索する内容が確認できる。ロード画面で表示される明るいアニメーションと対照的なところも、シュールさに拍車をかけているかもしれない。


なお上述のユーザーが紹介したのは、本作中でも特にホラー演出の際立つ場面だ。本作PS2/ニンテンドー ゲームキューブ版ではプー、ルー、オウル、ラビット、イーヨー、ティガーの夢の中を巡り、問題を解決していく。夢によってはお馴染みのキャラとの交流が描かれるなど、「くまのプーさん」らしい雰囲気の場面が多い。一方で先述の城は、イーヨーの夢の中におけるステージ。ほかの夢と比べてひときわ不気味であり、「くまのプーさん」の作風とのギャップを一段と感じられるステージだろう。

そうしてBGMや作中のホラー演出などから脚光を浴びることとなった『Disney’s Piglet’s Big Game』。SNS上ではやや“こじつけ気味”に同作と『サイレントヒル2』の類似点を探す遊びも楽しまれているようだ。たとえばあるユーザーは、『Disney’s Piglet’s Big Game』におけるピグレットが檻に入ったプーと出会う場面や、ピグレットが穴に飛び降りるシーンなどを、『サイレントヒル2』のシーンになぞらえている。それぞれ『Disney’s Piglet’s Big Game』においては少しコミカルさもあるシーンながら、比較してみると妙に共通点が多く感じられるかもしれない。


ちなみに「くまのプーさん」の原作である、イギリス人作家A.A.ミルンによる児童小説「クマのプーさん(Winnie-the-Pooh)」は、2022年1月に著作権切れによりパブリックドメインとなった。ディズニー映画「くまのプーさん」におけるキャラクターのデザインなどは依然としてディズニーが著作権を有するものの、“プーという名の黄色いクマ”といったモチーフは二次創作や商用利用が可能となっている。これまでにはホラー映画「プー あくまのくまさん」やホラーローグライトゲーム『ウィニーズ・ホール』など、ホラー仕立ての「クマのプーさん」題材作品がさまざま打ち出されてきた(関連記事)。

そうした作品のはるか以前に、妙にホラー要素の色濃い公式作品があったことが報告されたことも、話題性の大きさに繋がったのだろう。なお先述したような小説「クマのプーさん題材作品ではアートデザインでホラー要素が押し出されているのに対し、『Disney’s Piglet’s Big Game』はBGMも含めてまさに『サイレントヒル2』のようなサイコロジカルホラーといった怖さ。言い知れぬ恐怖や不安を覚える巧みな恐怖演出も、「くまのプーさん」の作風とのギャップを引き立てているのかもしれない。

いずれにせよピグレットは、一部ユーザー間でホラーのイメージも定着しつつある様子だ。ちなみにピグレットは、原作小説でも同様のデザインのキャラとして登場する。今後プーさんではなくピグレットを主役とするホラー二次創作が生まれる可能性もありそうだ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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