eスポーツクラブ「INSOMNIA」、東大などと共同研究プロジェクト発足。eスポーツ選手の“脳の謎”に挑み、勝利を科学的に引き寄せる取り組み

プロeスポーツ組織「INSOMNIA」 は5月22日、「INS×LAB(インス・ラボ)」 を発足したことを発表した。

プロeスポーツ組織「INSOMNIA(インソムニア)」 は5月22日、eスポーツ選手の心身について研究するプロジェクト「INS×LAB(インス・ラボ)」 を発足したことを発表した。同プロジェクトは選手のパフォーマンス向上および心身の健康維持を目的としており、東京大学など複数の大学研究機関と共同でおこなわれる。

INSOMNIAは株式会社INSが運営するeスポーツ組織だ。日本初の公民学連携eスポーツクラブとして、東京都墨田区を拠点に活動している。「眠れないほどの熱狂を」を組織ミッションとし、『VALORANT』や『Pokémon UNITE』 など複数のタイトルでプロ選手・ストリーマーを擁している。なお今回の発表に合わせてINSOMNIAは従来の「eスポーツチーム」という枠組みから脱却し、新たに「eスポーツクラブ」 としてリブランディングすることを発表している。

そんなINSOMNIAはこのたび、東京大学など複数の大学研究機関と共同で「INS×LAB」を発足したことを発表した。同プロジェクトでは、eスポーツ選手が最高峰のパフォーマンスを長期的に発揮できる環境の実現を目的としている。前提として、トッププレイヤーに生じる心身の負荷や、ミリ単位の判断を支える脳のメカニズムについてはまだ科学的な解明が進んでいないという。そこで医学・認知科学・データサイエンスなどさまざまな専門知見を結びつけ、「勝利の再現性を科学的に獲得するプロジェクト」 として複数の大学・研究者と共同研究をおこなう。

当プロジェクトの出発点として、2つの領域で共同研究を推進していくという。1つは「認知科学的アプローチに基づく競技能力の可視化と育成モデルの構築」であり、eスポーツにおける卓越したパフォーマンスのメカニズムを、脳科学/認知科学の観点から紐解くことで、科学的な選手育成および評価の基盤構築を目指すという。具体的には、試合中の選手の視線移動や集中状態をデータ化し、それを多角的に分析することで意思決定のスピードや正確性との関連性を調査する。さらに抽出したデータを基に、選手の課題に合わせた特化型の能力向上メソッドも確立する。こうした次世代の選手育成、評価システムの開発も目指しているという。同研究は高知工科大学・東京大学 Jeong氏 共同研究チームでおこなわれる。

もう一つは「生体データを活用したeスポーツコンディショニング研究」と呼ばれるものだ。鍼灸師であり慶應義塾大学メディアデザイン研究科後期博士課程に所属する平松燿氏が中心となって研究をおこなう。選手の身体状態を定量的に把握し、パフォーマンスを最大化するための生活習慣の改善や身体ケア、リカバリー手法の確立に取り組む。具体的には、選手の睡眠状態や活動量など日常の生活情報を取得し分析をおこない、日々の生活習慣がゲーム内パフォーマンスやチームコミュニケーションに与える影響について研究する。またこれらの生体データを活用することで、選手のコンディションを客観的に把握することも目指している。これにより個々の選手に最適化された身体ケアやリカバリー手法、さらには鍼灸治療の導入も可能になるとし、選手が長期的に活躍できる支援体制構築の実現を目指すそうだ。

こうした「INS×LAB」で得られた研究成果は、INSOMNIA所属選手の日常的なトレーニングや公式戦のフィードバックに活用されるとのこと。そして将来的には研究成果を論文として一般公開することで、国内eスポーツ育成機関全体の強化をも目指すそうだ。なお、共同研究の連携先は今後も拡大していくとし、関心のある研究機関からの問い合わせを受け付けている。 

eスポーツチームと研究機関が一体となった取り組みは近年増えつつあり、今年3月にはZETA DIVISIONが東京大学との共同で実証研究を実施すると発表している(関連記事)。同研究では、「eスポーツ選手の寿命を延ばす」ことを目標に掲げ、選手がトップレベルで戦い続けられる環境を長期にわたって実現するための調査をおこなうとのこと。実スポーツと比べ選手寿命が短いとされるeスポーツ分野において、選手を科学の観点からサポートしていこうとする流れが広がりつつあることがうかがえる。

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Kousetsu Taguchi
Kousetsu Taguchi

レトロゲームショップに入ると真っ先にセガサターンのコーナーを確認するタイプです。

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