人気商店街シム『Minami Lane』開発者、成功に喜びつつもDLCや続編は作らないと明言。ビジネスを追求するより新たな挑戦をしたい

 

デベロッパーのDoot/Blibloopは2月29日、商店街運営シミュレーションゲーム『Minami Lane』を配信開始した。対応プラットフォームはPC(Steam)。本作はSteamにて「圧倒的に好評」ステータスを得るなど人気を博しており、開発チームのひとりであるDoot氏は海外掲示板Redditにて本作について見解を投稿。高い評価を受けたのは嬉しいが、ビジネスには走りたくないためDLCや続編制作の予定はないなど、本作の成功に際した心境などを語っている。海外ゲームメディアGamesRadar+が報じている。

『Minami Lane』は商店街運営シミュレーションゲームだ。プレイヤーは日本風の街の道路沿いに商店街を作り、お店や住居などを建てて発展させていく。お店は建てるだけでなく、商品をカスタマイズすることも可能だ。たとえば花屋だったら花束にバラやチューリップを何輪含めるか変更でき、ラーメン屋なら麺やチャーシューの量を決めることができる。お客さんはそれぞれ要望を出すため、多くの住民の満足度を高めるべくお店の商品や商店街の景観を改善していく。

ゲームモードはミッションモードとサンドボックスモードが用意されている。ミッションモードでは、しゃべるタヌキの指示を受けてミッションをこなし、さびれてしまった商店街にかつての賑わいを取り戻していくことになる。サンドボックスモードにはさらに2つのモードが存在。少ない初期予算からはじめて経営を楽しむプランナーモードと、初期予算が豊富で建設条件のないクリエイティブモードが用意され、思い思いのプレイが楽しめるようになっている。


本作は2024年2月29日に配信開始された。Steamユーザーレビューでは、本稿執筆時点で約1500件中98%が好評とする「圧倒的に好評」ステータスを獲得。かわいらしい和風の世界観や、気楽に楽しめるゲームプレイなどが好評を得た。コンテンツ量がそれほど多いわけではないが、値段以上に楽しめる作品であるとする意見も複数見られる。

そんな本作の好評を受けて、開発チームのひとりであるDoot氏は、海外掲示板Redditにて本作の開発経緯や現在の心境について投稿。同氏によると、本作は3人の開発チームにより、6か月で制作されたそうだ。少人数にて短時間で制作するために、ゲームの規模を意識的に小さく保ってきたという。本作に似ているシンプルな街づくりシムの作品の例としてカイロソフトの名前をあげつつ、そうした同ジャンルの作品よりさらにシンプルで短いゲームにすることを心がけていたそうだ。当初は3か月で完成させる予定だったとのことで、見積もりが甘く予定より長引いてしまったが、開発自体はスムーズに進んだとのこと。

そうしてリリースされた本作は最初の1週間で2万7000本売り上げ、1か月で5万本に到達したという。売れ行きは極めて良好とのことで、開発チームの予想よりはるかによい結果となっているそうだ。また同氏は収入についても赤裸々に語っており、現時点での売り上げの合計は22万ドル(約3400万円)で、Steamの取り分を引いて開発チームに入った金額は15万ドル超(約2300万円)だという。そこからさらに税金などを差し引き、開発チームで分配した結果、同氏が実際に手にした金額は3万ユーロから4万ユーロほど(約500万円から660万円)とのこと。開発チームは次のプロジェクトを始めるのに十分な資金を手にすることができたことを喜び、本作が末永く売れ続けてくれることを願っているという。


一方で、同氏は本作からさらに利益を「搾り取る(milk this)」つもりはないという。本作の成功にあやかってDLCや続編を作ったり、似たような別の作品を制作したりするつもりはないとのこと。利潤を追求する企業であればそうするのが正しいかもしれないとしながらも、同氏にとって利益は最終目標ではないそうだ。むしろ手にした資金を使って、新しいことに挑戦したいと思っているという。一方で同氏には本作に向けての新たな計画もあるようで、ローカライズの実施とコンソール機向けへの配信をあげている。多言語対応とコンソール機向け移植は、同氏がずっとやりたいと思っていたものの、お金がかかるため断念していた要素だったという。資金を得た現在は本作についてのそれら作業に取り組んでおり、6月までに作業を終わらせて本作の開発は終了する予定とのこと。

またDoot氏は今後の計画についても語っている。次の計画についてはまだ未定であり、本作のアート面を担当したBlibloop氏は次回作に参加しないかもしれないとしている。次回作が本作と同じような成功を得られる保証はないことはわかっているとしながらも、本作の成功をなぞることはしたくないと改めて強調。Doot氏はさまざまなゲーム制作に挑戦して、ゲーム開発者として経験を積んでいきたいと考えているという。また同氏は投稿の最後に、インディゲーム制作の“秘訣”について言及。自分はインディゲームを成功させる魔法の方程式は知らないとしながらも、自分自身の内面をゲームのシステムと上手く融合させられたとき、きっと作品は成功することができるはずと思いを語っている。


『Minami Lane』は小規模開発チームにより制作され高評価を得つつも、新たな挑戦をしたいという開発者により、続編制作の予定はないと明言されるかたちとなった。Doot氏ら開発チームにとって、お金はゲームを作る目的ではなく、ゲームを作るための手段ということなのだろう。同氏らの新たな挑戦となるであろう、今後の作品の展開が期待されるところだ。

『Minami Lane』はPC(Steam)向けに配信中だ。価格は税込580円。