セガは2月22日、『龍が如く 維新! 極』を発売した。対応プラットフォームはPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/PC(Windows/Steam)。本作は2014年にPS3/PS4で発売された『龍が如く 維新!』のフルリメイク作品で、グラフィックの刷新のほか、近年発売されたシリーズタイトルで登場したキャラクターを中心にキャストが変更されているなど、追加・変更要素もあるタイトルだ。好評だったシナリオや基本システムはそのままに、Unreal Engineで表現された美麗なグラフィック、シリーズオールスターキャラクターの刷新、更に爽快感の増したバトルシステム、新規コンテンツ等の追加など現行機向けにブラッシュアップされたフルリメイク作品だ。
筆者は『龍が如く』シリーズをまばらにしか遊んでいない。PS2版の『龍が如く2』とPS4版『龍が如く7 光と闇の行方 』をプレイした経験はあり、キャラクターのおおよその人柄や関係性を把握している程度。リメイク前の『龍が如く 維新!』は未プレイである。『龍が如く』シリーズに触れる機会は少なかったものの、幕末という舞台が好きで、大河ドラマの「新選組!」や2021年公開の映画「燃えよ剣」など、幕末の動乱を描いた物語は幕府側に肩入れして楽しみがちな人間である。
そんな人間が『龍が如く 維新! 極』をプレイしたところ、思わぬ部分を楽しむことができた。スローライフ要素である。幕末の京を舞台とした本作では、坂本龍馬として当時の風景を練り歩きつつ、釣りや農業などの生活要素を満喫することも可能なのだ。筆者はこの部分をいたく気に入り、『龍が如く 維新! 極』に生活シミュレーションのような楽しさを見出すことができた。本稿はそんな筆者による、『龍が如く 維新! 極』のスローライフ生活のススメである。
畑作業に釣りに行商に、まったりスローライフ
『龍が如く 維新! 極』の主人公は言わずとしれた坂本龍馬だ。本作で龍馬は斎藤一という偽名を用い、新選組の三番隊隊長として任務に臨むことになる。土佐の風雲児と新選組の隊長、ふたつの顔を使い分けて物語が進んでいくというわけだ。
しかし、本作の魅力は骨太な幕末物語だけではない。京において坂本龍馬は「寺田屋」という宿を拠点に活動しているが、物語が進むと田舎にある龍馬の「別宅」が解放され、そこで遥という少女とのんびりした平和な生活を楽しむこともできる。筆者でも知っている、『龍が如く』シリーズではおなじみのあの遥である。龍馬不在のときは部屋の掃除などをかいがいしくこなしているこの少女の待つ家で、本作では自給自足の暮らしをすることもできるのだ。『龍が如く』シリーズはサイド要素が豊富なゲームだとは知っていたが、農業や料理を楽しみつつ暮らしを営むという、生活シム的な楽しみ方までできるのは意外だった。
本作では生活要素として、川や海で釣りをして、別宅の畑で野菜を作り、それらを素材に料理をすることができる。料理はミニゲーム仕立てとなっており、完成したものは回復アイテムとして使用することが可能。また、犬や猫、鶏を飼育することができたり、遥との親密度も高めていきながら、まったりとしたスローライフを送ることが出来るのだ。
また、生産物は遥に「行商」を頼むことで取引をおこない、お金に替えることもできる。汗水垂らして農業や釣りに勤しみ、かまどに息を吹きかけて料理をし、それをお金に替えて暮らしを営む。遥とともに過ごす、平和で温かな時間を味わう。シリアスな物語の傍ら、一滴の清水のような穏やかな暮らしを送ることもできるのだ。
お金を稼いだら街に出て少し遊んでみるのもいい。本作は『龍が如く』シリーズらしくプレイスポットも豊富。質素な暮らしの合間に競鶏に挑戦したり、お座敷遊びで遊女と戯れたりと刺激的な日常を送ることが可能だ。なお、筆者は競鶏で何両ものお金を溶かしてしまった。遥と一緒にコツコツ稼いだお金が一瞬で消えてなくなる絶望感は、いやにリアルな感じがした。
また、本作では『龍が如く』シリーズらしく、街を歩いていると至るところでサブストーリーが発生する。サブストーリーはシリーズの伝統を守り、物語がしっかりしている個性的なものばかり。このサブストーリーに巻き込まれることで生活がルーチン化せず、日々この街で暮らしているのだと実感することができた。生活しつつ、街の人々を助けつつ、たまに新選組の屯所に顔を出して仕事をしつつ、京での暮らしを満喫することができるのだ。
個性的な同僚と遊ぶことも
新選組の隊長同士である沖田総司や永倉新八とは、歌声酒場(カラオケ)で一緒に歌うこともできる。この要素が筆者にとって、職場で仲良くなった人とプライベートでも付き合っているような感覚でとても楽しかった。
本作で何よりも筆者が驚いたのは沖田総司の外見だ。大河ドラマ「新選組!」の藤原竜也氏、2021年公開映画「燃えよ剣」の山田涼介氏のように、沖田総司という人物は線が細い美形として描かれることが多い。しかし、『龍が如く 維新! 極』の沖田総司のキャストには、リメイク前から変わらず真島吾朗が抜擢されている。一人称が「ワシ」で「ヒヒ」と笑うタイプの沖田総司は、筆者が他でほとんど見たことがないような異質なキャラクターだ。結核で死にそうな儚さはなく、作中でも龍馬が「どこが美少年だ」とツッコんでおり、沖田が何か話すたびにプレイ中の笑いが絶えなかった。
そんな彼と一緒に歌って踊れるのだから、行かない理由はない。沖田の歌声のテンポは少し独特で、合いの手を入れるのが少し難しかった。いや、笑いすぎてボタンを押すどころではなかったというのが正しいかもしれない。とにかく、彼とのカラオケは必見だ。プレイの合間に是非訪れてみてほしい。
剣の腕を生かして生活してもいい
生きるためには働かなければならない。それは現代でも、幕末の京の街でもおなじことだ。幸い坂本龍馬は腕っぷしも強く、畑仕事や料理以外の手段でもお金を稼ぐことができる。骸街と呼ばれる物騒なエリアにある闘技場で対戦相手を薙ぎ倒して賞金を稼いだり、お尋ね者を倒すことで懸賞金を獲得したりといった生活費稼ぎも可能である。
それだけでは味気ない、もっとお国に奉仕するような働き方がしたい、という方には新選組屯所へ通うことをおすすめする。坂本龍馬は斎藤一という新選組三番隊隊長としての顔も持っており、屯所から部下の隊士を引きつれて、幕府から新選組に与えられた極秘任務に出ることができるのだ。京のはずれの洞窟を根城とする盗賊の討伐をして、倒幕を目論む勢力を一掃しよう。
農業や釣りで質素に生活するもよし、バリバリ働いてたくさんお金を稼ぐもよし。幕末の動乱で不安定な京の街で、さまざまな生活スタイルを表現できる点も本作の魅力だと感じられた。
『龍が如く 維新! 極』はリメイク前から物語の完成度を高く評価されており、本作でもその魅力は健在である。しかし、やはり幕末ということもあって血なまぐさい展開が続く。そんな動乱の時代のなかで一息つきたいときはスローライフに切り替えてみるのはいかがだろうか。職場の人斬り仲間とカラオケをしたり、遥と一緒に自給自足の生活を楽しもう。『龍が如く 維新! 極』はPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/PC(Windows/Steam)向けに発売中だ。
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