ゲームのフレームレートの「ヌルヌルorカクカク」は人によって見え方違う可能性。“周波数見分け能力”の個人差示す研究結果

トリニティ・カレッジ・ダブリンの研究チームにより、「人間の視覚の時間分解能には大きな個人差がある」傾向を示す研究論文が発表された。

アイルランドのトリニティ・カレッジ・ダブリンの研究チームにより、「人間の視覚の時間分解能には大きな個人差がある」傾向を示す研究論文が発表された。視覚の時間分解能とは、「どのくらい素早く動いているモノを視認できるか」といった能力だ。今回の研究結果を受けて、たとえばプロゲーマーは平均よりも視覚の時間分解能が高いのではないかといった仮説も伝えられている。


今回、視覚についての研究論文が掲載されたのは、査読付き科学ジャーナルPLOS ONE。トリニティ・カレッジ・ダブリンの研究チームによる、臨界融合頻度(Critical fusion frequency、以下CFF)の個人差を研究する論文である。CFFとは、素早く明滅する光がちらついて見えるか、持続光のように見えるかの境目となる発光周波数を指す。

たとえば、日常でよく見る蛍光灯やLED照明などは、地域によって1秒間に100~120回の高速点滅を繰り返している。この点滅は通常、肉眼でははっきりと認識することはできない。しかし、点滅の頻度を秒間60回・30回と落としていけば、肉眼でも「点滅している」と認識できる頻度となる。この境目となるCFFの測定により、視覚の時間的分解能、いわば「どれだけ素早い視覚の変化をその人が識別できるか」を簡便に評価できるとされる。

視覚の時間分解能には個人差があり、特に年齢を重ねるにつれて低下する傾向があることは先行研究でも示されていたという。一方今回の実験では比較的年代の近い、18~35歳の88名の参加者を対象としてCFFを測定する実験を実施。LEDライトを備えたゴーグル型の測定装置を利用し、複数の方法で実験がおこなわれたそうだ。上昇系列(ascending measurement)と下降系列(descending measurement)の2種類をおこなう極限法、および恒常法に分けて実験は実施されたとのこと。それぞれの実験を通して、光の点滅が認識できるかどうかの境目となる発光周波数が記録された。

Image Credit: PLOS ONE


そして実験結果として、CFFにはかなりの個人差がある可能性が示されたという。つまり、参加者間で光が点滅していることを知覚できる発光周波数に差が生じたかたちだ。論文によれば、今回の実験結果に基づき、CFFのおおまかな個人差(予測区間の広さ)は約21Hz(および誤差±10.6Hz)になることが推算されたとのこと。

この違いは自然界においては、たとえば狩りにあたって動きが速い獲物を好む種と、動きが遅い獲物を好む近縁種間などの視覚の時間分解能の違いに匹敵するといい、(少なくとも自然界においては)視覚機能に重要な影響を及ぼしうる差だという。そのため視覚の時間分解能の個人差が、実生活や運動能力、対戦型ゲームなど、素早い知覚や行動を必要とする場面にどのように反映されるのかは興味深い研究対象であるとして、論文は締めくくられている。

この論文についてはThe Guardian紙も報じており、同紙はClinton S. Haarlem氏ら研究チームのコメントを掲載。Haarlem氏は先述したような対戦型ゲームのほか、球技スポーツなど高速で移動する物体の位置を見極める状況では知覚速度の差が影響を与えるのではないかとの考えを示している。また、一流アスリートやプロゲーマーは、平均よりも視覚の時間分解能が高いのではないかとの推察も伝えられた。

一方で視覚の時間分解能がどの程度訓練で向上可能なのかは現時点で不明だという。Haarlem氏によれば、視覚の時間分解能の個人差が目や脳といった体のどの部分から生じているのかも現段階では不明とのことだ。


視覚の時間分解能は個人差が大きい可能性が示された今回の研究。論文やコメントにて対戦型ゲームに触れられたように、フレームレートの異なるゲーム画面の見え方も人によって違うのかもしれない。たとえば、しばしばゲーマー間で巻き起こるフレームレートの「30fpsと60fpsの違い」に関する議論も、そもそも人によって見え方の違いがあることから、さまざまな意見が生じている可能性はある(関連記事)。いずれにせよ、今後のさらなる研究で視覚の時間分解能の差による影響や、向上させるための方法が明らかになっていくかは注目されるところだろう。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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