高評価インディーゲームのオンラインサービス終了へ。開発者向けサービスGameSparksの終了を受けて

 

デベロッパーのLiquid Bitは10月4日、『Killer Queen Black』のオンラインプレイサービスを11月30日に終了すると発表した。バックエンドサービスGameSparksの終了を受けた決定となるようだ。

『Killer Queen Black』は最大8人で戦う2D対戦ゲーム。対応プラットフォームはPC(Steam)/Nintendo Switch。BumbleBear Gamesが手がけた最大10人対戦のアーケードゲーム『Killer Queen』に触発された作品とされている。各プレイヤーは女王バチや働きバチなどから役割を選択。4対4のチーム戦にて、先に勝利条件を達成すべく競い合う。勝利条件としては、カタツムリに乗ってゴールまで動かす、ベリーを集め終える、敵の女王を倒す、のいずれかの達成が必要となる。

働きバチは兵隊バチに進化可能で、剣や鉄球といった武器で戦うこともできる。一方で、戦闘のみに注力して相手の女王バチの撃破を狙い過ぎると、カタツムリやベリーでの勝利を奪われてしまうことになる。一辺倒に戦うだけでは勝てない戦略性が持ち味となるゲームだ。

Steamユーザーレビューにおいては約400件中93%の好評受けて「非常に好評」ステータスを獲得。日本語表示にも対応するほか、国内Nintendo Switch向けにもダウンロード版が販売されている。ゲームはローカルまたはオンラインのマルチプレイに対応。クロスプラットフォームプレイも可能なほか、ゲーム内ボイスチャット機能も用意されている。


今回、本作の公式サイトにて開発元Liquid BitのCEOを務めるMatthew Tesch氏が声明を掲載。本作を現地時間11月30日にオンラインプレイのサービスを終了する旨を告知した。理由としてはGameSparksのサービス終了があるという(声明ではAmazon GameSparksと表記)。

GameSparksはゲームにバックエンド機能を提供するクラウドゲーミングサービス。本サービスでは、ユーザーの目に触れないさまざまなデータ処理を実現できる。オンラインプレイなどのサービスに必要なデータ処理も実現可能。『Killer Queen Black』においてはユーザー間の対戦だけでなく、クロスプラットフォームプレイやボイスチャットといったさまざまなオンライン機能構築にも活用されていたのだろう。

しかしながら本サービスは9月30日での終了が告知されていた(IndieGamesJp.dev)。GameSparksは2017年、Amazonにより買収。GameSparksをもとに再構築されたAmazon GameSparksが開発中である。Amazon GameSparksは現在プレビュー版が公開中。プレビュー版には、Unityゲームエンジンと事前に統合されたバックエンド機能を搭載。クラウドサービスのシステム開発経験がほとんどなくとも、ゲームのバックエンド機能を容易に構築できるとされている。ようするに、新サービスであるAmazon GameSparksが開発されており、旧サービスであるGameSparksの提供が終了した格好となるわけだ。

Tesch氏の声明によれば、『Killer Queen Black』はGameSparksによって構築されており、別のサービスへの移行にはゲームコードをほぼ完全に書き直す必要があるとされている。現時点でLiquid Bitにとって、そうした作業をおこなうことは難しいようだ。一方で同氏は、本作をオープンソース化する計画を明かしている。ユーザーからのサポートに恵まれれば、将来的に復活する可能性もあるとのことだ。

なお本作はGameSparksのサービス終了から2か月先となる、11月30日までのサービス継続が予定されている。Tesch氏によれば、本作のランクマッチ(Ranked Play)におけるリーグ戦(League Play)が途中で終わることのないよう、AmazonにGameSparksの延長利用を交渉した結果だそうだ。またLiquid Bitは現在、新たなタイトルの開発も進めており、まもなく情報が発表されるとのこと。新作では、途中でオンラインプレイのサービスが終了することはないので、安心してほしいとのことである。そして同氏の声明は、本作のプレイヤーたちへの感謝で締めくくられていた。

バックエンドサービスの終了を受けてオンラインプレイのサービス終了が決定した『Killer Queen Black』。類似例として、同じくGameSparksを利用して開発が進められていたと思われる『Buriedbornes2』についても、リリース時期の延期が発表されたことがある。バックエンドサービスを利用したオンラインプレイをはじめとする機能実装は、開発工数を大きく短縮するなど、開発者にさまざまな恩恵をもたらす。一方で今回のように、ゲーム内機能がバックエンドサービスの運営状態に左右されるといった、デメリットも存在するようだ。