ゲーム会社カイロソフト、パートナーの中国パブリッシャーを告発。コード盗用や契約料不払いなど、被害を明かす

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国内デベロッパーのカイロソフトは10月16日、ゲーム配信プラットフォームTapTapにて中国国内ユーザー向けに公開状をリリースした。公開状には、同社が中国にてパブリッシュ契約を結んだ現地ゲーム企業が、契約に違反した行動を取っているとの主張が綴られている。

カイロソフトは1996年創業の国内ゲームデベロッパーだ。同スタジオはシミュレーションゲームをモバイルおよびコンソール向けに多数リリースしている。例としては売れっ子漫画家を目指す『まんが一本道〆』やゲーム開発会社経営シム『ゲーム発展国++』などがあり、馴染みやすいピクセルグラフィックと中毒性のあるゲームプレイで好評を博している。また、同スタジオは過去に『ゲーム発展途上国ⅡDX』などWindows向けフリーゲームも手がけており、現在も公式サイトからダウンロードとプレイが可能。カイロソフトは、長きに渡り堅実なシミュレーションゲームをプレイヤーに届けてきたスタジオなのだ。


今回カイロソフトがリリースした公開状によれば、同スタジオは2017年に中国のゲーム企業である北京识君互娱网络科技有限公司(北京識君娯楽ネットワーク会社、以下識君)とパブリッシング契約を締結。以降、カイロソフト作品の中国国内向け展開を識君が担当していた。しかしその後、識君は突如としてカイロソフトから許諾されていない作品である『常夏プールパレス』の中国国内向け事前登録を開始。最終的には、カイロソフトへの契約料の支払い拒否にまで至ったという。さらに識君は、『Inn in Chang’an』や『锄战三国村』など、カイロソフト作品に似通ったシミュレーションゲームを公開。公開状の主張によれば、これらの作品はカイロソフトから提供したコードを流用した“コピー作品”だという。


カイロソフトは2018年9月、識君に向けて公式に契約打ち切りを勧告していたという。しかし、識君側はこの勧告を無視していたとのこと。そして現在に至るまで、識君からカイロソフトに対してTapTap上での売上などの情報は公開されておらず、一部の契約料を除いては売上金などの振り込みも一切なされていないそうだ。また、今回の公開状はTapTapフォーラム上で何度も削除される憂き目に遭っている。TapTap運営の公式見解によれば、この削除をおこなったのは削除権限を持った識君のモデレーターだという。


現在、カイロソフトはゲーム再リリースを視野に入れ、信頼できる中国国内パブリッシャーとの契約を模索中であるという。また、識君との問題について、法的な解決にも取り組んでいるそうだ。カイロソフトは「ユーザーたちの動揺を誘う発表はしたくなかった」としつつ、国外訴訟の難しさについて触れている。今回、カイロソフトが公開状の投稿に踏み切った背景には、中国市場での再スタートに向けて同国内ファンたちに現況と同スタジオの正当性を伝える意図もあるのだろう。

カイロソフトの苦心の理由のひとつと見られるのが、中国ゲーム市場の特殊な状況だ。まず、中国にて有料ゲームをリリースするにあたっては、中国共産党設置機関からのライセンスを受ける必要がある(関連記事)。言語の壁はもちろん、国の審査を通過しなければいけない点は国内デベロッパーにとって高い障壁だ。そうした背景もあり、ゲームの中国向け展開については現地パブリッシャーを頼らざるを得ない側面があるのだ。

また、規制はモバイル向けストアにも及んでおり、iOSのAppストアでもライセンス未認可ゲームの取り締まりがおこなわれている。AndroidのGoogle Playストアに至っては、中国国内では基本的に利用できない。そのため、中国国内のAndroid向け市場では、サードパーティーのアプリストアが群雄割拠している現状があるのだ。なかでもTapTapは、ゲームに特化したアプリストアとして中国のゲーマーの人気を集めているプラットフォームだ。

前述のカイロソフトによる投稿に対して、TapTapの運営元XD Inc.(心动公司)のCEOである黄一孟氏も見解を示している。同氏は今回の一件についてカイロソフトに寄り添った意見を述べており、識君のTapTap上での一部権限について規制するとともに、カイロソフトと話し合って今回の一件を解決すべく取り組むとしている。また、TapTap上の識君のユーザーレビュー欄には、現地ユーザーからの識君への批判の声が続々と投じられている。


カイロソフト作品は中国国内ユーザーにも好評だったようで、識君がTapTap上でリリースしたカイロソフト作品はいずれも多数のフォロワーを集め、高い評価を受けている。しかし、記事執筆現在はどの作品もダウンロードできない状態となっている。また、カイロソフトの公開状に対しての識君側からの公式見解は、筆者の観測範囲内では見られなかった。

今回の一件は、中国展開にあたっての高いハードルが招いた事態ともいえる。また、国境をまたいだ問題でもあり、解決にはまだ長い時間を要するだろう。一方で、現地ゲーマーの反応からは、カイロソフトが海を超えて愛されている様子も見て取れた。問題が解決に向かい、カイロソフトの良質なシミュレーションゲームがふたたび中国のユーザーの手に届くことを願う。

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