『ノーモア★ヒーローズ3』の海外レビュー解禁時間が繰り上げ。“発売から9時間後”では遅すぎるとのメディアの反発を受けて

 

明日8月27日に発売を迎える『No More Heroes 3(ノーモア★ヒーローズ3)』の海外レビュー解禁時間が、繰り上げになったようだ。Axiosが伝えている。同作のレビューは東部標準時8月27日9時に解禁される予定であった。しかしそれでは、遅すぎるとして、解禁時間は東部標準時8月27日0時に変更された。

『ノーモア★ヒーローズ3』は、グラスホッパー・マニファクチュアが手がける殺し屋アクションゲーム『ノーモア★ヒーローズ』シリーズの最新作だ。主人公は、伝説の殺し屋トラヴィス・タッチダウン。本作では、銀河の彼方からやってきた極悪王子「FU」率いる10人のランカー宇宙人による地球侵略を阻止するため、トラヴィスは銀河系スーパーヒーローランキングの頂点を目指す。シリーズではおなじみの、須田剛一氏がディレクターを務める。

https://www.youtube.com/watch?v=i-YFWZndpzI


ゲームの発売に際しては、ゲームメディアがメーカーから発売前にゲームROMをもらい、指定時間にレビューを公開するというケースが多い。メーカーとしては、多くのメディアが一斉にレビュー記事を出すことで話題づくりができる。またレビューが集まることでレビュー集積サイトMetacriticのメタスコアが公開され、そのスコアがさらなる話題を呼ぶケースもある。発売レビューは、作品の認知を広めることができるPRのひとつなのである。それゆえに、ある程度の規模の作品においては、発売日にあわせた解禁レビューはよく見られる。

そしてこの方法は、ゲームメディアとしてもメリットがある。新作をいち早くプレイし一足先に批評をすることで、一定のページビューが得られ るのだ。それゆえメディアにとってレビュー解禁は、ゲームの発売当日、あるいは発売前であるほど好ましい。単純に、多くのユーザーがゲームを触る前に出る情報のほうが、価値が高いからである。


『ノーモア★ヒーローズ3』の海外レビューの解禁時間は、もともと東部標準時8月27日9時であった。しかしながら、アメリカではゲームは同日の0時に発売される。9時に解禁となれば、すでにユーザーがプレイしている段階であり、情報的な価値は薄まる。一部メディアはこの解禁時間に不満を持っていたようで、たとえばFanbyteのスタッフライターであるKenneth Shepard氏は、『ノーモア★ヒーローズ3』のレビューを待つ読者に向けて解禁時間を伝えつつ、レビュー公開はゲーム発売よりも後になると語った。

さらにShepard氏の投稿を引用RTするかたちで、Fanbyte編集者のImran Khan氏が激怒。発売から9時間後のレビュー解禁措置について不満を述べ、パブリッシャーはリリース後のレビュー解禁をやるべきではないと主張した。Shepard氏とKhan氏の投稿に対しては、多くのライターや編集者が同意を示している。

https://twitter.com/shepardcdr/status/1429896388645642241


レビュー解禁が発売よりも後になることは、過去にも何度か問題視されてきた。 反対する理由として、メディア側の都合以外で頻繁にあがるのは、ユーザーが購入前にゲームの評価に関する情報を得られにくくなるというものだ。パブリッシャーがゲームに自信をもっているのであれば、レビュー解禁を早めることに問題はないはず。それができないのは、ゲームの出来が悪いことを発売後まで隠すためではないか。そのようなケースを避けるためにも、レビュー解禁はできるだけ早い方が好ましいと、レビュー解禁日が問題になる際にはメディアから度々唱えられてきた。

ただ、『ノーモア★ヒーローズ3』に関しては、レビュー解禁を遅らせたい別の理由があったようだ。広報担当者によると、『ノーモア★ヒーローズ3』は久々のナンバリングタイトルであるということで、ファンへのネタバレを避けるために、発売から9時間後という解禁時間を定めていたとのこと(Axios)。つまり、ファンに配慮してあえてメディアのレビュー解禁時間を少し遅らせていたわけだ。同作の北米のパブリッシングはグラスホッパー・マニファクチュアが自ら手がけている。開発・販売元としてネタバレの早期拡散を避けようとしたのかもしれない。ファンの要求を見て、解禁時間を早めたとも担当者は説明している。実際に、レビュー解禁時間が東部標準時8月27日0時に変更された と、先述したShepard氏は報告している。


メディアレビューとネタバレは切っても切れない関係。ネタバレを記載したメディアレビューが広まれば、物語を楽しみにしている一般ユーザーの体験が損なわれかねない。それゆえに、大きなメーカーなどは、ROMを提供する際に、ネタバレに関するレギュレーションをメディアに課すパターンもある。一見合理的だが、レビューという批評行為に“枷”が生まれるという点で、メディア側にはあまり喜ばれない。今回の『ノーモア★ヒーローズ3』に関しては、厳しい制限を設けないかわりに、解禁日時を遅くすることでネタバレによる影響をやわらげようとしたのかもしれない。

弊誌AUTOMATONは、レビュー記事をそれほど多く扱っておらず、事前レビューの機会を得ることもあまりない。とはいえ、早い内にレビューを出しておきたいというメディアの気持ちは理解できる。一方でメーカーとして情報統制をしておきたい意図もわかる。ネタバレを避けたいメーカーと、情報価値を損ないたくないメディア。両者に言い分があるわけだ。今回はメーカー側が折れたかたちであるが、必ずしも最初のメーカーの判断が誤っていたわけではないだろう。ゲームを宣伝する時の苦労が垣間見える一件であった。

『ノーモア★ヒーローズ3』は、Nintendo Switch向けに8月27日発売予定だ。