『FF14』吉田P/Dが実際にコーヒークッキーを製作しTwitterトレンド入り。漆黒プレイヤーたちの懐事情を支える陰の立役者


昨今ではゲーム開発者が生放送などに出演し、ゲーム内容のトークをおこなうだけでなく体を張った企画をおこなうことはさして珍しいことではないだろう。しかしスクウェア・エニックスが開発・運営するMMORPG『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FF14』)では4月5日、生放送内で開発者がクッキーを製作しただけでTwitterのトレンド入りを果たし、異様な盛り上がりを見せた。

コーヒークッキー製作が行われたのはスタジオNGCの『FF14』7周年記念生放送での出来事だ。ゲストとして『FF14』のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏(以下、吉田P)が出演し、生放送の企画として実際にコーヒークッキー製作をおこなった。
 

なぜコーヒークッキーなのかというと、『FF14』においてコーヒークッキーとはプレイヤーたちにとってさまざまな意味で馴染み深いものとなっているからだ。コーヒークッキーは「漆黒のヴィランズ」からゲーム内に実装されたレシピであり、調理師が製作可能レベルに到達しているプレイヤーであれば誰でも気軽に製作することができる。そんなコーヒークッキーの主な用途はリーヴ納品という形でNPCへ渡すことで経験値を得ることができるというもの。調理師のいわゆるレベリング用のアイテムだ。しかしこのコーヒークッキーの真価は副産物としてNPCからギル、つまりお金を受け取ることができるという部分にある。

オンラインゲームにおいて金策とはプレイヤーにとって非常に重要な要素のひとつだ。昨今のMMORPGにおいてマップを徘徊するエネミーを倒すだけではお金を得ることは難しく、クエストやダンジョンの報酬として用意されていることが多い。それ以外にはクラフターやギャザラーといったジョブで素材を調達し、素材を用いてアイテムを製作し、他のプレイヤーへと売却することで金策するのが当たり前になってきている。

常日頃からプレイヤーたちはさまざまなかたちで試行錯誤し、時には運営からの修正を受け、そして時には見逃されている穴を突いて金策をおこなっている。その刹那的なゲーム体験もまたMMORPGの醍醐味のひとつといえるだろう。そしてこのコーヒークッキーこそ『FF14』において誰でも簡単にNPCからお金を引き出すことができるアイテムとして、プレイヤーたちから注目が集まったのだ。

もちろん無制限に可能な金策というわけではない。毎日NPCへと渡すことができる数にも限りがあれば、もっと効率の良いとされる納品もほかにある。そして何より1か月で稼げる金額も決して多くはない。しかし主な金策がギャザラーやクラフター、あるいは宝の地図と呼ばれるコンテンツが現在の主流となっている『FF14』においては、初心者がひとりでもお手軽におこなえる貴重な金策だったというわけだ。そのあまりのお手軽さに修正されるのではないかという不安の声も多くあったものの、幸いなことに現在まで修正されることなく、いつしか「コーヒークッキー金策」という呼称が定着するまでに至った。

そんなプレイヤーたちの懐事情を長らく支え続けてきたコーヒークッキーだが、人気の理由はそれだけに留まらない。「漆黒のヴィランズ」において、プレイヤーたちが納品し続けたコーヒークッキーが巡り巡ってとある主要人物たちに嗜まれているという設定があるのだ。そしてこの設定はただのフレーバーだけに留まらず、ついには「漆黒のヴィランズ」の主要ストーリーのひとつである「希望の園 エデン」において登場し、とある役割を果たすこととなった。詳細はネタバレのため伏せるが、人によってはおそらくコーヒークッキーを納品し続けてよかったと感じたはずだ。

金策でもストーリーでもプレイヤーたちに親しまれてきたコーヒークッキー。それを吉田Pが配信で実際に作ろうというのだからプレイヤーたちの間で瞬く間に話題となるのも当然だろう。
 

 
そうして生放送内では吉田Pが悪戦苦闘する中、1万5000人を越える視聴者たちに見守られつつ無事にリアルコーヒークッキーが完成した。サイズが大きいとツッコミを入れられつつ、意外にもおいしいと食した方々には好評なようである。Twitterの世界トレンド8位に入るなど大きな賑わいを見せた。パッチ5.5を目前に控え、突然やってくるかもしれない「コーヒークッキー金策」修正の可能性に怯えつつも、プレイヤーたちは今日も大量のクッキーを作り続ける。そこには間違いなくさまざまな思い出が詰まっているに違いない。


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