『マリオカート8 デラックス』にて「トゲゾーこうらで自爆」最速チャレンジ。謎すぎる世界記録の背後に、コミュニティ有志の叡智

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マリオカート8 デラックス』にて“謎の”世界記録が樹立されたようだ。その内容とは、「トゲゾーこうらに自分で当たるまで」の最速記録。一体何のために、というのはさておき、そのレコードは堂々の37秒850。新記録の背後にはほんの少しの運、緻密な計算と強靭なチャレンジ精神、そして何よりコミュニティの連帯が秘められていた。 
 

 
「トゲゾーこうら」とは、『マリオカート』シリーズに登場するお助けアイテムのひとつ。投げると1位のプレイヤーのもとまで飛んでいき、衝突して走行を妨害するというものだ。先頭のプレイヤーに追いつくまで周囲を弾き飛ばしたりもしくは着弾時に爆発したりと、破壊力はかなりのもの。下位に甘んずるプレイヤーにとっては、先行くプレイヤーたちを邪魔して一発逆転を狙えるアイテムだ。ところがこのトゲゾーこうらには、取り扱い注意点がある。『マリオカート8 デラックス』では、後方にいる時点でトゲゾーこうらを入手し、その後自力で逆転1位を獲ってから使用すると、「自分自身に」当たってしまうのだ。アイテムの性質から当然ではあるものの、いささか理不尽な仕様となっている。 

ところがこの欠陥を逆手にとって、一部のプレイヤーは新たなチャレンジを生み出した。それが、「トゲゾーこうら自爆タイムアタック」である。チャレンジの内容はシンプルに、レース開始からトゲゾーこうらを獲得し、その後1位になって自分でトゲゾーに当たるまでの最速タイムを競うというものだ。一見無意味にも見える課題だが、少し考えると本チャレンジがなかなか奥深い要素を備えていることがわかる。 

というのも、単に1位を獲るだけならスピードランナーにとって造作もないこと。しかしトゲゾーこうらは、実はトップを走っているときには出現しないアイテムなのだ。もっといえば、下位であるほどゲットしやすい存在となっている。すなわち最速でトゲゾー自爆を達成するためにはまず、なるべく最低の順位で走行してアイテムボックスからトゲゾーこうらを引き当てる。その上で、今度は可能な限り早く1位に返り咲き、その時点でアイテムを使用する必要があるというわけだ。あえて後列に甘んじたうえで逆転するまでのスピードが問われる、高度な技術を要する競技なのである。 
  

 
数多くのスピードランナーが挑戦する中、今回の世界記録を打ち立てたのは『マリオカート8 デラックス』 コアプレイヤーのSkilloz氏。同氏はeスポーツチームSKL Esportsにてテクニカルディレクターも務める人物である。Skilloz氏がどのように世界記録を叩き出したかをチェックしてみよう。挑戦に選ばれたコースは「GBA マリオサーキット」。『マリオカートアドバンス』から移植されたオーソドックスなコースだ。レースが始まると、Skilloz氏はまずいきなりコースを逆向きに走行し始める。というのも本コースでは、ゴール直前の分岐路にアイテムボックスが存在。Skilloz氏はあえて一旦逆走することで最下位になるのと同時に、早々にアイテム確保に動いているわけだ。 

とはいっても、この時点でSkilloz氏はトゲゾーこうらを狙っているわけではない。最初に入手したアイテムはスーパースター。一定時間無敵になり、スピード増加や相手カートを弾き飛ばす効果を発揮することができる。そして所定のコースに戻ると、間も無く最初のジャンプ台にて2番目のアイテムをゲット。ここでSkilloz氏はトリプルダッシュキノコを獲得している。早々に、加速用のアイテムを4つ確保したわけだ。その間も着実に順位を追い上げ、真ん中の6〜7位程度で安定させている。このときSkilloz氏は「CPUはかなりいい感じの位置取りだ」とも発言。実はRedditにおけるSkilloz氏の書き込みによれば、スターとキノコのアイテム2種は「1位から自身がどれだけ離れているか」を調節することである程度狙って入手することが可能だという。CPUの現在位置を確認しながら、計算づくでアイテムと順位をキープしているわけだ。 

ということで、あとはトゲゾーこうらを確保して1位まで上り詰めるだけ。しかしここからがもっとも難しいポイントだ。動画の1分15秒ごろ、Skilloz氏はアイテムボックスの直前でカートを止め、順位を落としてしまっている。実はここでは、すぐさまアイテムを獲得できない事情があったのだ。というのもトゲゾーこうらは、先述のスターとキノコに比較して入手確率を操作するのが難しい。まずプレイヤーは、1位のCPUから2000ユニット分後方に位置取っていなくてはならない。くわえてもうひとつの条件として、トゲゾーこうらはレース開始から30秒以上経ってからでないと出現しないという制限があるのだ。Skilloz氏が3つ目のアイテムボックスの手前に到達した時点ではタイムは29秒と、わずかに条件を満たさない時間。よってSkilloz氏は順位を落とすリスクを負っても、あえて一旦ブレーキをかけタイムが30秒を過ぎるのを待ったわけだ。 
  

Image Credit : Skilloz 

 
ここまでの条件を満たして、トゲゾーこうらが出現する可能性は5%となる。あとはテクニックの及ばぬ領域、人事を尽くして天命を待つしかない……果たして、そのときはきた。Skilloz氏は最後のアイテムとして、見事トゲゾーこうらを引き当てたのだ。ボックス開封直前からスターとキノコを消費していたSkilloz氏は、無事にトゲゾーを入手したと見るやストレートで一気に加速し1位を奪取。即座にトゲゾーを発動し、見事に自身に命中させている。そのタイム、37秒850。世界記録を打ち立てた瞬間、それまで張り詰めた表情をしていたSkilloz氏は思わずコントローラーを取り落としている。そして両手で口元を覆い「何てこった」を連呼。自分で自分の打ち立てた記録に驚きを隠せない様子で、「間違いなく新記録だ」と喜びをあらわにしている。 

動画のコメント欄にてSkilloz氏は、GsFlint氏なる人物に謝辞を記載している。動画を見れば確認できるとおり、GsFlint氏はSkilloz氏の直前にセルフトゲゾーチャレンジの世界記録を打ち立てていたプレイヤーだ。実はSkilloz氏が今回のコースとして「GBA マリオサーキット」を選択したのは、GsFlint氏による先行研究にもとづいてのこと。「1位のCPUから2000ユニット背後に位置取れるタイミング」と「タイムが30秒を過ぎる瞬間」が同時になりうることを発見したのは、GsFlint氏だったという。 

そう、トゲゾーこうら自爆の挑戦は、Skilloz氏だけがアタックしていた奇行ではない。『マリオカート8 デラックス』コミュニティ全体で研究が重ねられ、実績が生み出されていたのである。GsFlint氏は自身のTwitterでSkilloz氏の功績について言及。その中で、今回の偉業がSkilloz氏やGsFlint氏だけの努力で生み出されたわけではなく、『マリオカート8 デラックス』コミュニティに属する多くの優秀なメンバーによって到達できた結果であると表明している。 
 

*英語における「Blue Yourself」とのチャレンジ名は、『マリオカート8 デラックス』プレイヤーのひとりAmber氏によるものだという。 

 
『マリオカート』シリーズでは「周回遅れから1位を獲る縛り」など、国内外で尖ったチャレンジに挑むプレイヤーが多い。一見、無意味にも見える「トゲゾーこうらに自分で当たる」タイムアタックも、その背後には、今なお研鑽を続ける『マリオカート8 デラックス』プレイヤーたち有志の知恵と努力が隠されていた。今後も数多くの、尖った研究成果と実績が生み出されてゆくだろう。 

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