パブリッシャーのWangyuan Shengtangと2P Gamesは11月12日、古剣奇譚(こけんきたん) ~星夜に謡い継ぐ万世の夢~』の日本語対応を開始する。本作は2018年に『古剑奇谭(Gujian3)』としてSteamで配信開始された作品。Steamでは高い評価を獲得しており人気の様相がうかがえる。とはいえ、ゲーム内容がわからないので購入しづらい。そんな人もいるのではないか。本稿ではWangyuan Shengtangから提供いただいた日本語版を、もとにゲーム内容を紹介しよう。


古剣奇譚 ~星夜に謡い継ぐ万世の夢~』は、中国のデベロッパーAurogon Shanghaiが手がけるアクションRPG。舞台となるのはファンタジー色の強い古代中国だ。シリーズ作品ではあるものの、第3作となる本作まで翻訳されていなかったため、日本での知名度はいまひとつかもしれない。

だからといってマイナーなゲームということではない。シリーズ作品の総売上は600万本を突破。MMORPGとしても展開しているほか、実写ドラマ「古剣奇譚 ~久遠の愛~」が日本で配信/レンタルされている。また『古剣奇譚 ~星夜に謡い継ぐ万世の夢~』のSteamのレビュー数は記事執筆時点で3万1000件を超え、評価は「非常に好評」となっている。2020年1月には130万本を売り上げたことが報じられた。最新作を含め、各国や日本の華流ファンから高い評価を得ているフランチャイズである。

そして実際にプレイしてみると、本作はゲームシステム・物語ともに丁寧に制作された王道のアクションRPGという印象だった。ナンバリングタイトル3作目といっても、ストーリーは独立している。本作から始めても十分に理解できるはずだ。今までは中国語と英語のみの対応だったため、遊びづらい事情があった。日本語に対応したことで、気軽に遊びやすくなった。



中国ファンタジーの世界観

主人公は北洛という青年。義理の両親のもとで剣の修行にはげみ、兄弟子として門下生の面倒をみている。しかし彼はある日突然、妖怪族「辟邪(ひじゃ)」の王位を継承することになってしまう。北洛は、辟邪王の双子の弟であったのだ。魔界と常世の結界を守るため、北洛は冒険の旅へ出ることになる。これが本作の物語のあらすじである。

ゲームを起動してまず驚くのが、マップの美しさだ。本作では3Dのフィールドを探索しつつ世界を旅していくことになる。マップはエリアごとにロードする形式だ。それなりに広いエリアもあり、各エリアのテーマがはっきり分けられているのが特徴的だ。いずれのマップも古代中国や中国神話の世界観を再現しており、幽玄な世界の中を観光するのが楽しい。ゲーム全体のパフォーマンスも安定しており、美麗さと快適さが両立できている。

ちょっと変わったマップに「龍宮」がある。「龍宮」は夢の世界にのみ存在する場所で、海の中の竜宮城がテーマのマップ。ほかのフォトリアルなマップと比べるとかなり異色な景色が広がっている。全体が紙芝居のようになっており、敵もエビやカニ、タコの切り絵になっている。プレイヤーが影絵として表現されることもあり、アーティスティックな表現に振り切ったロケーションであった。


「蓮中境」で研究&クラフト

システム周りは、アクションRPGとしてはかなりオーソドックスだ。ストーリーの分岐などはなく、物語にそってリニアに進行する。マップを探索して、敵と遭遇したらシームレスに戦闘へ移行。敵を倒してまた目的地へ進んでいくという流れだ。クリアにかかる時間は40時間ほど。とはいえこれは、ストーリーに集中した場合のプレイ時間である。収録されているミニゲームやサイドクエストなど寄り道を含めれば、さらに遊べる作品であるはずだ。

やりこみ要素もしっかり存在する。たとえば、本作には「蓮中境」というシステムがある。文字通り蓮の実の中にある不思議な空間で、ストーリー中盤あたりから利用できる拠点のような場所だ。研究やクラフト、アイテムの採集が可能となっている。基本的に戦闘中でなければ、いつでもアクセス可能。戦闘でHPが削れたらすぐに帰って休息できるわけだ。

蓮中境には工房、研究所、農園、鉱山などの施設が存在する。本作ではここで武器や防具、回復薬など何でもクラフトできてしまう。まずは研究所でアイテムのレシピを作成し、農園や鉱山で素材を収集。そして工房で実際にアイテムをクラフトするという流れだ。お金を稼ぐ方法が限られている本作では、店で購入できる回復薬も多くない。そのため、素材を集めて自作したほうが効率的。自給自足することは必須だと感じた。


農園や工房を稼働させるには人手が必要になる。そこで各地で職人をスカウトして、蓮中境の機能を拡大させてゆくのだ。しかし彼らは働くと疲労がたまり、食事をしないと回復しない。そんなときは、料理を振る舞って回復してあげよう。また人間だけでなく妖怪も契約種族として、蓮中境の仲間に入れることができる。各地で妖怪の首領を倒すことで、妖怪の種族を蓮中境に招待できるわけだ。人間と妖怪を集めて、蓮中境を拡充したいところだ。

また蓮中境にはハウジング要素も存在する。蓮中境の区画のひとつに庭園があり、建築物や家具を配置できる。小屋や壁、テラス、植物、椅子などを集めて、庭園の中に配置が可能だ。

ちなみに蓮中境で必要になる素材は、自分で各マップを探索することも重要。中盤以降のアイテム集めは妖怪を鉱山に遠征に出し農園で働かせるのがメインの方法となるが、序盤はプレイヤーの集めたアイテムでやりくりする必要がある。プレイヤーキャラはパルスを放って周辺数十メートルのアイテムをハイライトすることが可能だ。発見できる素材は薬草やキノコ、鉱石などさまざま。冒険のついでにアイテム収集もやっておくと、のちのち便利であるはずだ。


シンプルで直感的な戦闘

プレイヤーキャラクターの北洛は、基本は剣一本で戦う。基本攻撃で「元気」ゲージをためて、「特技」とよばれるスキルを発動できる。さらにスタミナを消費して、回避か敵の攻撃を見切って防御。敵の防御可能な攻撃は黄色のインジゲーター、防御不可能な攻撃は赤色のインジゲーターが表示される。赤色の場合はダッシュで避けるか、特技で攻撃をキャンセルさせる。またタイミングよくガードしてから攻撃すると大ダメージが発生するカウンターのような技もできる。反射神経と判断力がそれなりに求められる。

本作の戦闘は、アクションゲーム寄りの操作である一方、レベリングも重要となる。こちらのレベルに対して敵のレベルが高いとまったくダメージが入らないし、攻撃を受けたら瞬殺されてしまう。逆にレベルが低い敵は倒しても経験値が一切入らない。敵と同じ程度のレベルまでレベリングするか、装備を強化することが必須。そのうえで攻撃と回避または防御などのアクションが必要となり、剣客としての腕が問われることになる。

もちろん味方も戦闘に参加してくれる。ただし操作できるのは主人公の北洛だけで、味方はは大まかな方針に従って動く。回避重視や攻撃重視といった指示をあらかじめ決めておこう。全体的にかなりシンプルで癖の少ない戦闘システムであり、混乱する要素はないはずだ。


星韻 (せいうん) システム

基本の弱攻撃/強攻撃以外にも、スキル(特技)を使用しての攻撃が可能。各キャラクターに星座のようなスキルツリーがあり、ツリーにそってスキルを取得していく仕組みだ。スキルはいつでも振り直しができる。とりあえず気になったものを取得してみるのがいいだろう。

主人公北洛の特技は範囲攻撃だったり、単体の敵へ大ダメージを与えたりと攻撃中心にさまざまな種類がある。とくに与えたダメージを体力へ変換する初期スキル「風切り」が便利だ。仲間もそれぞれ対応した星座をもっており、各々育成していくことが可能である。

さらに戦意スキルとよばれる必殺技的な要素も存在する。戦闘中にゲージが溜まって、MAXになれば使用可能になる。「吠戻」と「炎解」の2種類の戦意スキルが存在しており、ゲームを進めることで手に入る。「吠戻」は自分の周囲に大ダメージを与える範囲攻撃。「炎解」はガードができなくなる代わりに攻撃方式を変更して、両手から素早い攻撃を繰り出しスタミナの回復も早くなるスキルだ。いずれも敵が硬めの本作において、貴重なダメージリソースとなってくれる。

旅の道中にはカードゲームも

『古剣奇譚~星夜に謡い継ぐ万世の夢~』の世界では、カードゲームを嗜む人間も存在する。ゲームの名前は「千秋戯(せんしゅうぎ)」。歴代の『古剣奇譚』シリーズキャラクターを題材としたゲームである。役をつくって点数を競うという点で、ポーカーに若干似ているルールだ。カードゲーマーはそれぞれの街にいて、ゲームに勝利すればレアカードをゲットできる。カードゲームに興じるほか、釣りをしたり、蓮中境で農作物を育てたりと、冒険のついでにミニゲームも楽しむことが可能だ。


『古剣奇譚 ~星夜に謡い継ぐ万世の夢~』は、ひとつひとつの要素が丁寧でクオリティの高い作品だ。システムとしては王道なRPGである一方、世界観としては中国ファンタジーという点で、多くの国内ゲーマーにとって新鮮なテーマだろう。同規模のAAA作品と比べて非常に良心的な価格でもある。日本語字幕UIに対応したことで、さらに気軽に遊びやすくなっているはずだ。

『古剣奇譚 ~星夜に謡い継ぐ万世の夢~』は11月12日、日本語対応を開始予定。対応プラットフォームはPC(Steam)。価格は3090円となっている。