無許可の「バイオ2」リメイク『Resident Evil 2 Reborn』が向かう先は?開発会社「カプコンに公認してほしい」

イタリアのデベロッパーInvaderGamesは、『バイオハザード2(Resident Evil 2)』のリメイクタイトル『Resident Evil 2 Reborn』を開発中だ。

イタリアのデベロッパーInvaderGamesは、『バイオハザード2(Resident Evil 2)』のリメイクタイトル『Resident Evil 2 Reborn』を開発中だ。本作は1年以上前から開発が続けられているタイトルであり、新たなゲームプレイトレイラーが先週解禁され、国内外のメディアより大きな注目を浴びた。しかし開発・販売元であるカプコンより一切の許可を得ておらず、その代わりに無料で公開することをInvaderGamesは約束している。

版権元に許可を得ずに開発したリメイクタイトルとしては、Valveが手がけた『Half-Life』のフルリメイクMod「Black Mesa」が有名だろう。「Black Mesa」は後にValveにも認可され、Steamで有料で販売することを許された。

ただ、「Black Mesa」はファンがフルリメイクしたのに対し、この『Resident Evil 2 Reborn』を手がけているInvaderGamesは、スタッフ20余名が所属する開発会社である。AUTOMATONの取材に対し、PR担当者のマイケル氏は「InvaderGamesは昨年9月に設立された独立系のソフトウェアハウスだけど、コーダーや2Dおよび3Dアーティスト、サウンドアーティストなどのメンバー20人以上が所属しているよ」とコメントした。PC/モバイル/Google Cardboard向けに3つのゲームを開発中であり、来月にもリリース予定だという。

他社のIPを無断で使用してリメイクゲームを無料で公開するという行為は、日本でもイタリアでも著作権侵害に相当するとみていいだろう。リメイクに抽出したアセットや3Dモデルなどを使用している可能性もある。彼らはなぜ会社の名前を晒してまで『バイオ2』のリメイクに挑戦しているのだろうか。InvaderGamesのPR担当者マイケル氏へと、単刀直入に疑問をぶつけてみた。

開発の動機は“情熱”

InvaderGamesの公式サイトにて公開されているもう1つのプロジェクト「The Hardest」は、Google Cardboard向けに開発が進められている無料公開の技術デモだ。今回話題に挙がっている『Resident Evil 2 Reborn』と同じくホラージャンルのタイトルであり、マイケルは「没入感があり、身の毛がよだつほど怖い」と説明する。ほか開発中の3タイトルの詳細は伏せられたが、会社のロゴにある「バイオハザード(生物災害)マーク」などを見ても、ホラーゲームが好きなメンバーたちによって設立されたことは間違いないようだ。

『バイオハザード2』のリメイクを開発した理由について聞くと、マイケル氏は「情熱だ」と返答した。「オリジナルのファンとして、我々は自身のビジョンとクリエイティビティに従った新しい『バイオ2』を欲していたんだ。計画立ててゲームを開発し、それを将来的な次回作への糧ともしたかった。簡単に言うならば、『バイオハザード2』を我々のやり方で祝福したかったんだ」。

当初はUnityで開発が続けられていた『Resident Evil 2 Reborn』は、後にUnreal Engine 4へと切り替えられ、より美麗なビジュアルへと強化された。グラフィック面だけではない。InvaderGamesは、もともとあったゲームの機能を考慮しつつも、古いメカニックを新しいアイディアで一新したいと考えているという。「ノスタルジックな感情を呼び起こす旧来のシステムは尊重しつつも、より現代的に改善されたゲームプレイやメカニックを紹介したいとも思っている。新たなヘルスシステムはまさにその一例さ」。

“カプコンに公認してほしい”

とはいえ、彼らがいかに情熱を抱き、現代と旧来のバランス感覚を突き詰めても、結局のところ『Resident Evil 2 Reborn』は無許可のリメイクである。それに気になる点はほかにもある。公式サイトでは、本作が“『バイオハザード ダークサイド・クロニクルズ』のアセットをベースにしている”と記述されており、3Dモデルなどを使用しているのではないかという疑いがある。

この点について聞くと、マイケル氏は「単なる基本的なアセットだ。我々は作りなおして、キャラクターやゾンビ、オブジェクトに環境といった新たな3Dモデル、テクスチャ、ライトシステム、アニメーション、ゲームプレイメカニック、パーティクルエフェクト、スクリプト、サウンドエフェクト、サウンドトラックなどを追加している」と返答する。

「『バイオハザード2』リメイク開発の著作権侵害についてはどう思うか?」と単刀直入に質問すると、マイケル氏は「『Resident Evil 2 Reborn』は収益の発生しないプロジェクトであり、我々は一切利益を得ることはない」とお決まりのセリフを並べた。一方で、カプコンが同プロジェクトを停止することは「わかっている」とも伝え、それでも公認して欲しいと一縷の望みを抱いているようだ。

「恐らくカプコンが我々を止めるであろうことはわかっている、でも同時にカプコンが我々に『バイオハザード2』の公式リメイクへと参加するよう頼んでくれるのではないかと夢も持っている。単なる夢だ、そうだよな、でもファンやオリジナルゲームを祝福するために、ベストを尽くすのが我々の義務だ」

彼らが逆転ホームランでカプコンに認められるのか、あるいは企業でありながら著作権の存在を無視した愚か者として後に報じられるのかは不明だ。とはいえ『Resident Evil 2 Reborn』は多くのメディアに取り上げられ、ユーザーたちも大きな反響を示しており、あらためて『バイオ2』リメイクを多くのユーザーが求めていることがわかる。2012年9月には海外の請願サイトにて、3万7000人のファンが『バイオハザード2』をリメイクしてほしいと訴えている。また今年1月には、初代に続き『バイオ2』のHDリマスター版が2016年にリリースされるとのもささやかれ、ソースのない情報に多くのユーザーが群がった。

『Resident Evil 2 Reborn』は2015年冬に無料公開される予定だ。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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