セガは10月17日、2Dアクションゲーム『ソニックスーパースターズ』を発売した。対応プラットフォームは、PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/PS4/Nintendo Switch/Xbox Series X|S/Xbox One。3Dソニック最新作である『ソニックフロンティア』はオープンワールドのようなフィールドを採用し“新境地”にチャレンジした作品だった。一方で本作はメガドライブ時代のような丸っこい“クラシックソニック”デザインでふたたびステージクリア型2Dアクションスタイルに回帰しつつ、3Dグラフィックの採用や新たな能力など新要素を備えている。


本作では、ソニック、テイルス、エミー、ナックルズの4人が集結し、巨大メカ軍団を作ろうと企むDr.エッグマンの野望の阻止を目指す。久々に登場する悪役ファングや、謎多き新キャラトリップなど、キュートなキャラクターが多数登場するのも特徴だ。

2Dソニックとしては、公式ファンメイド作『ソニックマニア』からは6年ぶり、純粋な公式作品である『ソニック・ザ・ヘッジホッグ 4 エピソード2』からは11年ぶり。初代『ソニック』のキャラクターデザインを担当した大島直人氏が率いるゲームスタジオ・アーゼストも開発に参加し、本格的な「2D『ソニック』の新作」として作られているというわけだ。


数あるゲームジャンルの中でも、2D横スクロールアクションゲームは筆者が子どもの頃からプレイしてきた大好きなジャンルのひとつだ。2D『ソニック』シリーズももちろんプレイしてきたが、新作が長らく出ていなかったこともあり、正直にいえば「古びてしまったシリーズ」という印象を持っていた。

しかし、完全新作である本作『ソニックスーパースターズ』をプレイした後、それは間違いであったことに気づく。本作には、2D『ソニック』が元々もっていた魅力がしっかりと内包されていて、現代でも替えが効かない作品であることを証明しているからだ。本稿では、『ソニックスーパースターズ』および2D『ソニック』シリーズがもつ、アクションゲームの強みを紹介していこう。

「ただ操作しやすい」とは違う、クセを掴んでいく操作感


2Dアクションゲームにおける操作感は、ふつうは素直な挙動を目指すもので、現代であればなおさらだ。比較的シンプルなジャンルである分、下手にクセのある挙動を採用してしまうと、ダイレクトにストレスを感じやすいと思う。

2D『ソニック』作品のキャラの挙動は基本的に、素直ではない。本作は過去作と比べると操作しやすくはなっているが、走り出しから最高速になるまではやや遅く、ジャンプ中の大きな方向転換も難しい。また、慣性が強くはたらいており、急にストップすると動きが不安定になったり、勢いづいていないと坂が登れなかったり……と、いわば本作ならではの強めな「クセ」がある。


この操作感は意外とほかに例が少なく、『ソニック』シリーズの代わりになるようなものは少なくとも筆者の観測範囲では生まれていない。『ソニック』はハイスピードなアクションであることも特徴だが、アクションのクセを掴んで慣らしていく上達感と、ステージ上の仕掛けや地形をうまく利用して素早く駆け抜ける爽快な体験が組み合わさることで、2D『ソニック』でしか味わえない気持ちよさを生む。この気持ちよさは古びておらず、2Dアクションが成熟した現代においても独自の味として十分に楽しめるだろう。

面クリア型にもかかわらず、探索しがいのあるステージ


2D『ソニック』のもうひとつの特徴は、ステージに複数のルートが用意されていて、自由なルート進行や探索の余地が用意されていることだ。地上に近いルートを進んで素早く走り抜けてもいいし、上の方にいって少し変わった仕掛けを楽しんでもいい。思わぬところに隠されたルートも多く、収集アイテムや強力なパワーアップなどの嬉しいご褒美が隠されていることも多い。

今2Dアクションゲームで探索要素を重視するとしたら、多くの場合はマップがひとつなぎになったメトロイドヴァニア方式が採用される傾向にあるように思う。そんな中、本作は「メトロイドヴァニアほどこってりでもなく、シンプルにゴールを目指すゲームよりもじっくり遊べてリプレイ性がある」という中間をとったバランスになっている。


このバランスはじっくり探索する楽しみと、サクサク進む楽しみの両方を受け入れてくれる。探索しながらステージの多彩な仕掛けを楽しむも良し、ゴールを目指してひたすら走って疾走感を味わうも良し、と、どちらの楽しみも同時に引き立てられている。

気分によってプレイスタイルを変えるのもありだし、「次はちゃんとアイテムを探してみよう」「次はサクサク走り抜けてみたい」というように、クリアしたステージを再訪する理由にもなる。これまた現代においては『ソニック』ならではの魅力となっているのだ。

加えて、探索の楽しさへの新たなアプローチとして、2D『ソニック』初となる能力要素が導入されている。本作にはシリーズ恒例の「カオスエメラルド」という収集要素があり、各ステージのどこかにあるビッグリングに触ることでスペシャルステージに移動し、カオスエメラルドの入手を目指すミニゲームが始まる。これを入手することで、「エメラルドパワー」という能力を得ることができる。

 


エメラルドパワーを使えば、背景の滝を登れるようになる、火の玉になって空中を突き進む、見えない足場を見えるようにするといったアクションが可能になり、通常時には行けないような場所にも行けるようになるなど、主に探索の幅を広げる能力が拡張される。パワー入手前にクリアしたワールドでも使える場所が用意されていることもあり、思わぬ場所に発見があるので、再びじっくり探索したくなるのだ。

独特な要素も、キャラ性能差によって遊びやすく


本作や2D『ソニック』シリーズがもつ「現代でも十分に輝く魅力」という部分はここまでお伝えした通りだ。ここから初めて2D『ソニック』を遊んでみたい!というユーザーも多くいることと思うが、やはりほかのアクションゲームとは異なる部分の多い本作は、最初のうちは慣れないことも多いだろう。思い通りに操作できるようになるまでは時間を要するかもしれない。

そんなときは、ソニック以外のキャラの使用をおすすめしたい。テイルスは長時間の空中飛行、エミーは二段ジャンプとハンマーによる広範囲の攻撃、ナックルズは滑空と壁登り、といった具合に固有のアクションがあり、難しいステージでも選ぶキャラによって攻略しやすさがぐんと上がるはずだ。

 


また、本作のアクションとの向き合い方についても意識すると遊びやすくなる点がある。『ソニック』といえば、ハイスピードでガンガン進む!というイメージがあるが、実際のところ初見でそれをこなすのはかなり難しい。ハイスピードプレイを極めるのももちろん面白いが、それは後の楽しみにとっておき、最初は探索重視でステージの仕掛けを楽しみながらゆっくり確実に進んでいくのがおすすめだ。

なお、本シリーズはミスに至るまでの仕様も少し変わっている。2D『ソニック』にはHPなどの概念は存在せず、ダメージを受けても所持しているリングが散らばるだけで、ミスになるのは基本的にリング所持数が0のときにダメージを受けた場合のみだ。これは裏を返せば1つでもリングを取っていればミスになることはないということであり、険しい場面でもとにかくリングさえ取っておけば良い。ステージ最後に訪れるボス戦でも、多くの場合は途中でリングを補給できることが多いので、意識すれば生存率があがるはずだ。


過去作の復刻版などはあったものの、ここ数年で発売された『ソニック』シリーズのほとんどは3D作品であったため、「2Dソニックはもう古いものだ」と認識している人は筆者以外にもいるだろう。しかし筆者は完全新作である『ソニックスーパースターズ』をプレイし、本シリーズが抱える独特さは現代でも十分通用すること、そして2D『ソニック』の魅力を受け継ぎアップデートしたタイトルは本作以外にないことを再認識した。2D横スクロールアクションはかなり成熟しきった印象のあるジャンルだが、そんな中でも2D『ソニック』の魅力は古びていない。

ソニックスーパースターズ』はPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/PS4/Nintendo Switch/Xbox Series X|S/Xbox One向けに発売中だ。