『バーチャファイター』新作『VIRTUA FIGHTER CROSSROADS』山田理一郎氏インタビュー。“新生バーチャ”が「6ではない理由」や「一人用モードをがっつり作りこむ」理由を訊いた

『VIRTUA FIGHTER CROSSROADS』の名を冠する『バーチャファイター』最新作。本稿ではプロデューサー兼クリエイティブディレクターの山田理一郎氏に、本作にかける想いや、最新作になるにあたっての変化などを訊いた。

セガは6月6日、『VIRTUA FIGHTER CROSSROADS(バーチャファイター クロスロード)』を正式に発表、2027年リリース予定と告知した。本作は2024年に「New VIRTUA FIGHTER Project」として発表されたタイトルで、このたび正式タイトルが決定したかたち。日本時間6月6日にはゲームの祭典「Summer Game Fest 2026」にて、トレイラーも公開された。

さらに「VIRTUA FIGHTER CROSSROADS SHOWCASE」では本作開発者のメッセージのほか、本作から新たに登場する「シエロ」を中心としたストーリーの一部も公開。架空都市「ヴィラサパラ」を歩き回るかたちのアドベンチャーモードや進化したバトルが明らかになった。

弊誌ではこれらのトレイラー公開に先駆け、本作のプロデューサー/クリエイティブディレクターを務める山田理一郎氏にインタビューを実施。最新作はなぜナンバリングの「6」ではなく『VIRTUA FIGHTER CROSSROADS』という名前になったのか、そしてゲームとしてはどう進化していくのか。“再構築されたバーチャファイター”として、本作が目指す地点を山田氏に訊いた。

“家庭用”をメインの戦場に据えるにあたって

――『VIRTUA FIGHTER CROSSROADS』は、これまでのシリーズ作品と違い、数字によるナンバリングではありません。そこに意味や思いなどはありますか。

山田理一郎氏(以下、山田氏):
プロジェクトを最初に発表した頃は、正式タイトルもまだ決まっておらず、「New VIRTUA FIGHTER Project」という仮題でした。タイトル名については、社内を含めて多くの人がなんとなく「6になるんだろう」というイメージを持っていたと思います。

一方で僕自身は、“新しいものを作る”という意識が強く、単純にナンバリングを継ぐ形にはしたくなかったんです。いくつかのアイデアを検討する中で、今回目指している方向性を最も表している言葉として、『VIRTUA FIGHTER CROSSROADS』というタイトルに決まりました。今までの『バーチャファイター』から大きく変わるタイミングなので、ロゴデザインも刷新しています。

――今回はストーリーを語る専用モードも実装され、物語の演出面も大きく強化されるようですが、このモードは、本作においてどういった位置付けになるのでしょうか?

山田氏:
本作ではアーケードではなく家庭用ゲーム機向けをメインとしてリリースする以上、シングルプレイを充実させなければ意味がない、と考えています。これまでアーケード中心で発展してきた本シリーズですが、色々な人に遊んでもらうためには遊びの幅を広げる必要があると考え、本作の形に至りました。

こうした取り組みに関しては過去作でもおこなっており、『4』でクエストモードを追加したことなどがあります。その際には海外プレイヤーからも好評をいただきました。今回はその先を目指し「格闘ゲームのシングルプレイモード」に留まらない、シングルプレイだけでも楽しんでもらえるようなものを作っています。このモードをメインに据えつつも、対戦部分をおろそかにせず、しっかり作り込んでいきます。

――街を歩いている映像や敵との戦闘は『龍が如く』や『シェンムー』を彷彿とさせるものもありました。

山田氏:
「格闘ゲームのバトルにシナリオを入れただけ」にならないように、ゲームプレイとして新しいものを入れたつもりです。そういう意味では、『シェンムー』らしいと言われるのは……ちょっとエモい(※)ですね(笑)

一同:
(笑)

山田氏:
いずれにせよ、「魅力的な物語」「プレイヤーに与える体験」を突き詰めていった結果、舞台設定も相まって『シェンムー』を彷彿とさせたのかもしれないです。

※『シェンムー』は当時、仮題「バーチャファイターRPG」として開発が進められていた

――本作では新主人公として「シエロ」をはじめ4人のキャラたちが登場します。ストーリーではここに、旧キャラクターたちも関わっていくのでしょうか?

山田氏:
はい、その予定です。とはいえただ単に登場するということではないです。本作ではリアリティを重視しており、長い時間が経過した世界の中で、それぞれがどのような人生を歩んできたのかも描いていきたいと考えています。その象徴として、年齢を重ねた「パイ・チェン」も登場します。

そもそも『バーチャファイター』は“格闘”に対するリアリティ、という文脈を背景に出てきたゲームだと考えています。だから物語もリアリティがある方がふさわしいなと思い、旧キャラは歳を取り、成長した姿に刷新しつつ、話に絡ませています。

――確かにシリーズ過去作では、パイは幼さの残る印象で、今回トレイラーでは初めて登場した際に一瞬わからなかったくらいです。

山田氏:
過去作との時代の違いとして、パイは象徴的なキャラですね。歳を重ねた女性をかっこよく描く、というのは今やるべきことだとも思いました。昨年お披露目したウルフも同様に、歳を取った時の渋さに加え、その間にどうしてアメリカンレスラーのような見た目になったのかという背景があり、あのような風貌に変わりました。

――新たに登場したシエロはどういったファイトスタイルになりますか?

山田氏:
シエロはボクシングをベースにした総合格闘技(MMA)の打撃主体ファイターです。従来はカンフー映画の影響が強く、拳法を使うキャラクターが多かったのですが、今回は主人公としてより現代的な格闘スタイルを意識しました。その結果として、ボクシングや総合格闘技を取り入れたスタイルになっています。

――シエロをはじめとした4人の主人公はアドベンチャーモード専用ではなく、対戦でも使用できるプレイアブルキャラクターになりますか?

山田氏:
もちろんプレイアブルキャラクターとして使用できます。4人とも主人公なので、それぞれ操作して遊べますし、ストーリーの中で触れたキャラクターを、そのまま対戦でも使ってもらえればと思っています。シングルプレイで学んだことが対戦につながる導線も意識しています。

――アドベンチャーモードと対戦モードで相互に作用しているのですね。

いろんなものが「クロス」しあう体験

――ところで、本作のストーリーの舞台は東南アジアの架空都市「ヴィラサパラ」になるとうかがいました。あまり舞台に選ばれることは少ない印象の地域ですが、今回東南アジアを舞台に選んだ理由を教えてください。

山田氏:
リアリティのある世界を描こうと考えたときに、日本の街は『龍が如く』で何度も描かれているし、ビルが多くて味気なさもあったりする。多国籍で独特のエネルギーを持った場所を舞台にしたいのですが、欧米の街ではリアリティという観点で、僕たちが作ると違った雰囲気になってしまう。そこで描きやすさも含め、「東南アジア」に白羽の矢が立ちました。

僕が学生の時分に訪れたタイの印象もあり、東南アジアの街並みや空気感には、人の活気や異文化が混ざり合う魅力を感じていました。そんなエネルギッシュな雰囲気が、作品の世界観やリアリティとも合うと感じています。

――ヴィラサパラの規模感やボリュームについて教えてください。

山田氏:
ヴィラサパラ自体はかなり広く、島そのものも大きいです。イメージとしては『龍が如く』でいう神室町が複数あるようなイメージで、大きめのエリアが複数存在すると考えてもらえればいいと思います。

また今回は“クロスローズスタイル”として、単純にストーリーを追うだけではなく、ゲームの遊び方そのものにも工夫を入れようと考えています。そのため、ストーリーを最後まで進めるだけでも結構時間はかかると思います。

――“クロスローズスタイル”は新しい体験になるとのことですが、現時点でお話しできる範囲ではどのようなものになるのでしょうか?

山田氏:
現状ではお答えできないですが、さまざまなゲームの仕組みも調整し、最終的な着地地点が固まった状態です。「これなら面白いんじゃないか」と思ったものを頑張って作っています。単純にストーリーを追うだけではない遊び方も含めて工夫しようと考えているので、詳細は今後お伝えできればと思います。

――アドベンチャーモードと対戦モードで操作やルールに違いはありますか?

山田氏:
基本的な部分は共通になると思います。シングルプレイで覚えた操作やルールを、そのまま対戦へ持ち込めるようにしたいと考えています。もちろんアドベンチャーパートならではの調整はあるかもしれませんが、大きく別のゲームになる形ではなく、地続きで遊べるものを目指しています。

海外ライター参加で描く、“新しい『バーチャファイター』”の物語

――今回のストーリー制作では、セガ社内のスタッフだけでなく、David Hayter氏、Brad Kane氏などの海外ライターも参加しています。まず、外部のクリエイターを招いた理由について教えてください。

山田氏:
本作では、アニメ、漫画的なジャパンカルチャー以外のものをやりたい、という意識がありました。舞台も東南アジアですし、海外映画/ドラマのようなリアリティのある物語を描きたいと思っていました。もちろん日本人でも描けるとは思いますが、本格的にやるなら海外ライターの感覚や経験を活かした方が、より自然なドラマになるんじゃないかなと。

本作の主人公であるシエロは、複雑なバックボーンを持つ人物です。そういうキャラクター性を理解したうえでライティングするなら、海外の人の視点は相性が良いんじゃないかと考え、海外ライターを集めました。

――では、実際にどのような経緯で参加メンバーが決まったのでしょうか?

山田氏:
ライティングオーディションです。10人くらい候補がおり、上がってきた原稿をみんなで確認したところ、Bradさん(Brad Kane氏)の内容がすごく良かったんです。

原稿自体は名前を伏せた状態で読んでいて、純粋に文章だけを見て「この人すごいな」と思ったのがBradさんでしたね。後から『Ghost of Tsushima』や『As Dusk Falls』などでライティングを担当されたと知って驚きました。

――すごい人が来ましたね。

山田氏:
そうですね(笑)

――また本作にはKane氏だけでなく、Hayter氏も参加されているようですが、Hayter氏にはどういった経緯で参画いただいたのでしょうか?

山田氏:
Davidさんについては、いわゆる“ハリウッド的”な視点をお持ちの方で、原稿も外連味があるところが印象的でした。もともとBradさんにライティングをお願いしたいという前提がありましたが、一緒に仕事ができたら面白いと思い、参加を打診したところ、「ぜひやりたい」と言っていただけたかたちです。

――それぞれ、制作の中ではどのような役割を担っていたのでしょうか。

山田氏:
世界観そのものは僕が作っています。その上でDavidさんには、海外の視点から設定や世界観についてフィードバックをいただいていました。「この設定は海外の人から見るとどう映るか」といった部分や、作品全体のトーンについて意見をもらうこともありました。

キャラクターの大きな設定やプロット整理については、僕と古田(古田剛志氏)が中心になって進めていました。どんな人物にするか、ストーリーの方向性をどうするか、といった部分ですね。

そこから実際のシナリオ執筆をBradさんが担当します。ただライティングは完全な分業ではなく、「この話は変えた方がいい」「こっちの方が自然じゃないか」といった意見を出し合いながら、全員で作っていく形でした。

山本(山本眞司氏)は途中から参加していて、キャラクター設定を深掘りする役割が大きかったです。主人公としてどうあるべきか、プレイヤーが感情移入できるか、といった部分を細かく詰めてもらっていました。誰か一人の天才が全部作るというより、役割はありつつも全員で意見交換しながら作る、かなりフラットなチームですね。困った時は最終的に僕が決めますけど(笑)

「直感的に遊べるゲーム」の思想は継承しつつ、“再構築されたバトルシステム”

――シリーズ過去作では3ボタン+レバーを軸にしたシンプルな操作体系が特徴でしたが、今回もそうした分かりやすさは重視されていますか?

山田氏:
本作では“コンセプト”の部分を重視しています。パンチを押せばパンチが出るように、何となく遊んでいても技が自然に出る――そうした直感的な気持ちよさは、『バーチャファイター』の根幹にあるものです。シンプルでわかりやすく、直感的に遊べるというのはシリーズ初代から続く大切な特性です。その上で、「誰でも直感的に遊べる」という設計思想も、引き続き大切にしています。

――公開されている映像では、「エスケープ」など過去作を思わせる要素も確認できました。システムはどの程度継承されますか?

山田氏:
シリーズを重ねる中で、どうしても複雑になっていった要素もあります。そうした部分も踏まえながら、現在は再構築しており、新しいものへ置き換えたりしています。面白さを追求しつつ、『バーチャファイター』らしい“シンプルでありながら奥深い”部分についても、改めて整理していきたいと考えています。

――今回、新ルール「アップライジング」に関して追加情報のお披露目はありませんでしたが、今後詳細はお披露目されるのでしょうか。

山田氏:
まずは『VIRTUA FIGHTER CROSSROADS』全体として、バトル部分の整理や大きな変化があります。その部分がある程度整理でき、ベースとなるバトル部分を理解していただいた上で、「アップライジング」については詳細をお見せしていきたいと考えています。

――ありがとうございました。

今回、数字によるナンバリングから一転、『VIRTUA FIGHTER CROSSROADS』として“新生”を遂げることが明かされた本作。対戦格闘ゲームとしてだけではなく、シングルプレイ体験の作り込みや、そうした方向性に進んだ背景が山田氏の口から語られた。まだ全貌は明らかにはなっていないものの、新システムなどを携え、満を持して登場する本作には、期待が寄せられるところだ。

VIRTUA FIGHTER CROSSROADS』は2027年リリース予定だ。

[聞き手・執筆:Hiroshi Hirose]
[編集:Kosuke Takenaka]

この記事にはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。

AUTOMATON JP
AUTOMATON JP
記事本文: 1233