RGGスタジオの完全新作『STRANGER THAN HEAVEN』開発者合同インタビュー。タイトルの意味、全体のボリューム、キャストの理由など謎めく要素をいろいろ訊いた

『STRANGER THAN HEAVEN』のエグゼクティブディレクターを務める横山昌義氏に対し、複数メディアによる合同インタビューが執り行われた。本稿ではその模様をお送りしよう。

RGGスタジオが手掛ける、今もなお謎多きゲーム『STRANGER THAN HEAVEN』。このたび本作のエグゼクティブディレクターを務める横山昌義氏に対し、複数メディアによる合同インタビューが執り行われた。本稿ではその模様をお送りしよう。

『STRANGER THAN HEAVEN』は『龍が如く』シリーズで著名なRGGスタジオによるアクションアドベンチャーゲームだ。対応プラットフォームはPC(Steam)/Xbox Series X|S/ PlayStation 5となっている。Xbox Game Passにも対応する。

本作の主人公は米国人と日本人のハーフである大東真と真城優。身寄りもなく、人種由来の差別を受けて日本に流れ着いた2人を中心に、行き場のない人間たちが必死に生き抜いた1915年から激動の50年を描く。

――『STRANGER THAN HEAVEN』というタイトルにはどのような意味が込められているのでしょうか。

横山氏:
『STRANGER THAN HEAVEN』というタイトルには「天国よりも奇妙な場所」であったり、「外部からやってきた者」であったりといった、複数の意味を込めました。タイトルを考えるにあたって、海外のスタッフたちにも相談したのですが、(数ある候補の中で)コレがいちばん評判が良かった。

ただ、社長には反対されました。横山らしくないって(笑)社長いわく、商品名っぽくないし、「ドラゴンパンチ!」みたいな直球で来ると思っていたみたいです。でも、周りのスタッフの「絶対大丈夫です」という後押しもあり、『STRANGER THAN HEAVEN』に決まりました。ちなみに、最初から世界共通の名前にしたかったので、これを和訳したような日本語版タイトルを作る気はありませんでした。

――50年という長いスパンで一人の人生を描くという構成は、企画当初からあったのでしょうか。

横山氏:
ありましたね。『龍が如く』シリーズを長く作り続けていく中で、自分の中にある疑問が湧いてきたんです。「彼ら(作中のヤクザ、アウトローたち)は何故、このような生き方を選んだのだろう」と。これまでは、「既存の裏社会」に「足を踏み入れざるを得なかった人たち」を描いて来ましたが、そもそも誰が裏社会と呼ばれるものを作り上げたのか、作り上げる理由とは何だったのかを描きたかったんです。

実を言うと、本作は当初は「三部作」になる予定でした。人生の50年を描くって、期間が長いでしょう。今の時代、長大なボリュームになるゲームはお客様のニーズに合致しないのではないか。ライトに遊べる形にして、前編、中編、後編と三部作構成にした方が良いのかも、と考えていました。ただ作っていると、全部1つの作品に盛り込みたくなってしまう。あとは前編、中編、後編に分けたとして、全部出し終えるまでの期間が長期化するのは好みではない。そのため、今回のような構成に落ち着きました。

――ゲーム全体のボリューム、作り込みについて教えてください。

横山氏:
まずはゲーム全体のボリュームに関して。正しくは測っていませんが、すごいことになっていると思います。特にボリューミーなのはメインストーリーです。作っていたら長くなってしまった。

本作は完全新作タイトルではありますが、あえて『龍が如く』シリーズと比較するならば、マップは同程度の規模感と考えて頂きたいです。時代ごとに訪れるマップは無理に大きくしたり、小さくしているわけではないため、各々違った広さになっています。実際に入れる内装を用意した建物は『龍が如く』シリーズから増えました。ただ、時代背景として、高層ビルのような建物はありません。そのため、全体的な規模感としては同程度になっていると思います。

重ね重ねになりますが、本作は完全新作タイトルになります。そのため、UI、戦闘のシステムや操作感といったものは『龍が如く』シリーズから別物になっています。いわゆるシリーズ系列の体験ができる作品ではありません。そのため、いわゆるサブストーリーの方向性もまた別物です。「プレイスポット」のような要素も時代背景を考慮して少ないです。『龍が如く』シリーズのように企業タイアップとかしてませんからね(笑)

――5つの時代と舞台(1915年の小倉、1929年の呉、1943年の大阪、1951年の熱海、1965年の新宿)を選んだ基準は何ですか?

横山氏:
年代については主人公の設定に基づくものであり、それ以上の理由はありません。舞台については、物語を作るにあたって、主人公が小倉に辿り着き、紆余曲折を経て新宿の神室町へ到達することを最初に決めていました。小倉から神室町への間を点と点でつないだ結果、間に登場する街が決まった形です。

今言える物語の流れとしては、若き日の大東が船に乗って小倉にたどり着き、大塚さん(大塚明夫氏)演じる八島平吾という親分の世話になりながら、日本語を学び、音楽の才能を見出され、そこから色々あって呉の極道組織に入っていく。なぜ広島の呉なのかについては、『仁義なき戦い』の舞台でもあり、自然な流れで決まりました。

――時代ごとに異なる街の描写でこだわった点や、大変だったことはありますか。

横山氏:
最初にいうと、本作では時代ごとのリアルな街を再現しているわけではありません。我々開発チームは、ゲームとして遊ぶのに最適な、オリジナル空間を作り続けてきました。そのため、何にこだわっているのか、と問われれば「いかに(ゲームらしい)嘘をつくのか」と答えます。参考史料はあくまで開発の手がかりです。たとえば、作中における1951年の熱海に行くと「ホテルニューアカオ」さんがあります。しかし、現実における創業は1954年です。仮に1915年の小倉へタイムスリップできるとして、作中の光景と実際の光景とではまったく異なっていると思います。

また、各時代にそれぞれのミニゲームが用意されていますが、あくまで本作はフィクションなので、登場する時代が微妙にズレているという指摘はご容赦ください(笑)その上で、史実準拠の部分を挙げるとすれば、すべての時代に路面電車が走っています。調べてびっくりしました。

――歴史的な史実とメインストーリーの兼ね合いはどう考えていますか?

横山氏:
あくまで大東の身の回りで起こることだけを描いています。世界で何が起きたかなどの大きな事件は、彼に関わらない限り描いていません。「史実に基づかない、オリジナルな世界」として明確に物語を描いています。

――本作は時代をまたぐ物語が展開されていきますが、ゲームプレイにおいて、主人公の「円熟」「老い」を感じる要素はありますか。また、時代を超えて持ち越せるキャラクターの成長要素はありますか。

横山氏:
まず、主人公の「円熟」「老い」をプレイ中に感じる要素はありますが、今はお伝えできません。情報公開までお待ち下さい。

時代を超えて持ち越せる要素は、あるものと、持ち越せないものがあります。また、一度舞台が変わったあとに、前の舞台に戻って何かをすることはできません。たとえば、小倉から呉に移動したあと、小倉に戻ることはできません。時間通りに物語は進んでいきます。

そのため、人によってクリアまでに経験するゲームプレイの内容が違ってくると思います。本作が掲げるコンセプトに「人によって観る光景が変わる」があります。使う武器の違いをはじめ、ショービジネスの展開方法も異なるでしょう。細かいところでは、会話中などにカメラをグイグイ動かせます。特に戦闘においては、プレイヤーが主人公の四肢を自在に操り敵を倒していきます。こうした工夫を通して、主人公と一心同体になり、苦しい時代を生き抜くという体験を各々の形で味わって欲しいです。

――ショービジネス要素とメインストーリーの関わりはありますか?

横山氏:
大いにあります。ショービジネスは大東真にとっての「シノギ」であると同時に、さまざまな要因で差別を受け、精神的なルーツも曖昧で、社会に居場所がない彼にとって、国籍や外見の影響に囚われない唯一の足場になります。偏見ではなく、実力で評価してくれる世界を体現したのが本作のショービジネスですね。

大東真はオルフェウスによって、音を記憶するという才能を見出され、やがて興行師として活躍していきます。稼いだお金で、社会的地位を作っていくわけです。逆に言えば、主人公たちの居場所はお金で作り上げたものでしかない。ショービジネスはストーリーの中心になる要素の一つとして認識してもらえればと思います。

――ショービジネスという点では本作は音に拘っている印象を受けました。今回は戦闘の試遊でしたが、印象的なSEがいくつもありました。

横山氏:
そうですね。ショービジネスを行うにはまず音楽家と協力して、オリジナルの楽曲を制作することになります。そのために周辺環境から音を記憶する必要があるのですが、慣れれば戦闘中でも音の記憶が可能です。敵の悲鳴とかね。先ほど述べたように、プレイヤーによって体験が異なるように意識した要素の1つでもあります。戦闘が上手ければ戦闘中の音の記憶が可能になり、ショービジネスの内容に幅が生まれていきます。さらに詳しい内容は後の情報公開をお楽しみに。

――ここからはキャストや、キャラクターに関する質問へ移ります。横山さんが考える、実在の人物をゲーム内のキャラクターとして登場させることで生まれる、物語体験の魅力を改めて教えてください。

横山氏:
キャスティングについて私が勉強させられたな、と感じたのは『龍が如く0 誓いの場所』でした。当作品の人気キャラクターとして、堂島組の三幹部がいます。彼らを小沢仁志氏、竹内力氏、中野英雄氏にそれぞれ演じて頂きました。彼らはグローバルな人気を誇る俳優ではありません。しかし、彼らに演じて頂いたキャラクターはグローバルな人気を生み出すことに成功した。この経験を通じて分かったのは、キャストを選ぶ上で、描きたいキャラクターに「似合う」以上の理由はない、ということです。

たとえば、皆さんが『龍が如く0 誓いの場所』をプレイしていて、三幹部のことを日本の著名人だ、と認識する機会はありませんよね。久瀬大作が登場したら、久瀬大作だ!と思うはずです。また、特定の方に演じて欲しいキャラクターが出来た場合は、その方へ向けた宛書のようにシナリオを作っていくこともあります。

本音を言うと、キャスティングばかりが先行して目立ってしまう状況は、ゲームクリエイターとして本意ではありません。ゲームシステムや物語体験に注目してほしい。ただ、お客さんの目からすると、衆目を集めるためにやっているとか、私に関しては「芸能人に囲まれてはしゃいでる人」に見えるかもしれない。ですが、決してそんな意図でやっているわけではありません。『龍が如く0 誓いの場所』にて学んだ、役者さんの演技が作品全体を面白くしてくれる、という経験を活かしてゲームを作り続けています。

その上で、『STRANGER THAN HEAVEN』の物語は先ほど述べた通り、「誰が裏社会と呼ばれるものを作り上げたのか、作り上げる理由とは何だったのか」というテーマを掲げています。これを描くうえで我々が挑戦したのは、精神的なルーツが曖昧な主人公を登場させることでした。ルーツが曖昧ゆえに当時の日本では寄る辺なく、大変苦しむことになる主人公です。とすると、必要になってくるのがオルフェウスのようなキャラクターであったり、真城優のように、境遇を同じくして苦しみを分かち合うキャラクターです。

こうして出来上がったキャラクター像に、誰かふさわしいキャストが居ないかなぁと思っていたところ、偶然、別件にてSnoop Dogg氏と知り合い「私たちの作品に出演しませんか」とオファーをしました。主人公のキャスティングに関しては城田優氏がピッタリでした。英語が話せて、歌も上手くて、演技力もバッチリ。詳しい話は公式の情報番組をチェックしてください。

真城優役を務めるディーン・フジオカ氏も演技力があり、英語ができて、歌が上手いです。本作の物語では「歌」が重要な立ち位置を占めます。そのため、歌に関して、バックボーンを感じさせてくれるような方々をキャスティングしました。主人公とオルフェウスのキャスティングからスタートして、今はすごく幸せな状況が作れているなと思います。オファーをする際に「詐欺だ」と疑われたこともしばしばです(笑)

――Tupac氏の出演が話題になりましたね。

横山氏:
Tupac氏の出演は当初考慮していませんでした。決まったのはSnoop Dogg氏とある程度仲良くなったあと、かなり後半ですね。作中極めて重要なキャラクターを造形していく中で、このキャラクターにはTupac氏が合うのでは、と思い立ち、Snoop Dogg氏に相談をしました。その後、遺族の方々をはじめとする関係者の皆さんを紹介して頂き、監修を受けながらキャラクターを作り上げています。

――主人公である大東真のキャラクター像はどのように固まったのでしょう。

横山氏:
実は6、7年前から本作の物語を練っていて、今の設定に固まったのは4年前くらいになります。さらに詳しく言うと、かつては時代は同じで、異なる舞台、異なるキャラ設定を考えていました。虐げられた日本の若者がヤクザの親分になっていく話です。しかし、自分の中で行き詰まってしまった。これでは普通のフィクションすぎる。人間の数ある生き方の中で、わざわざ裏社会の組織を立ち上げるだけの理由を考える必要がありました。そこで浮かび上がってきたのが「ルーツが曖昧」な主人公です。

――ゲーム発売前に一般の方々が触れる機会を設けることはありますか。

横山氏:
もちろんあります。実際に触れてみないと分からないことが数多くあると思うので、試遊できる機会をたくさん設けるつもりです。本作を商品として展開していく中で、特に意識しているのは日本のお客様です。というのも、本作は完全新作と銘打ってはいますが、作品に対して最も関心を寄せているのは『龍が如く』シリーズファンだと考えています。本作における独自のゲームシステムに対して、『龍が如く』シリーズを通じた先入観を持ち込んでしまったり、認識のギャップが生まれてしまったりといった事態を避けたい。そのため、試遊できる機会を設けていきたいです。

――最後に、読者の方々へ向けたメッセージをお願いします。

横山氏:
正直なところ、現状では日本国内よりも海外の方が、本作に関して盛り上がっているという認識です(市場規模の違いは当然ありますが)。そのため、今後は日本のお客様を意識した要素もまた発表していければと思います。

たとえば、昨年宣言した通り、我々は東京ゲームショウ2026(TGS2026)に出ます。そこで、皆さんに楽しんでいただけるような情報を提供できるよう、計画中です。楽しみにお待ち下さい。

──ありがとうございました。

『STRANGER THAN HEAVEN』は2027年1月15日に発売予定だ。

(C)SEGA

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Takayuki Sawahata
Takayuki Sawahata

娯楽としてだけではなく文化としてのゲームを知り、広めていきたい。ジャンル問わず死にゲー、マゾゲー大好き。

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