『メタルサーガ 鋼の季節』リマスター版を作った理由は、「救済が必要だ」と感じたから。熱き心を持つプロデューサーに、制作までのあれこれや“オリジナルからどこが変わるか”を色々訊いた

『メタルサーガ 鋼の季節』リマスター版を手がけることになった“熱烈なファン”に、その開発経緯を詳しく訊いた。

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一人のゲームファンが20年の時を経て夢を叶え、少しばかりの遺憾が残るかつての作品を、自らの手で理想の形へと作り変える——。そんなドラマのような出来事が、今まさに『メタルサーガ 鋼の季節』を巡って現実のものとなろうとしている。ご存じの方も多いかもしれないが、かつてニンテンドーDS向けに発売された『メタルサーガ 鋼の季節』は、全編タッチパネル専用という割り切った操作体系と、数々のバグにより、多くのプレイヤーが途中で挫折を余儀なくされたタイトルだった。シリーズの熱狂的なファンでさえ、二の足を踏んだ人は少なくない。しかし、そんな作品を当時根性でクリアしただけでなく、ネット上で「最強・最全」と称される攻略情報をまとめあげた一人の中国人ファンが存在した。

「Joystick」のハンドルネームで知られる彼は、現在その名を冠したゲーム会社を経営している。そして自身の夢を果たすべく、彼は『メタルサーガ 鋼の季節』の権利元であるサクセスへと自らアプローチ。ライセンスを獲得して改善を手がけ、この「少し心残りのある作品」を、誰もが受け入れられるクオリティへと昇華させようと奮闘している。ChinaJoy 2026の会場で試遊版を体験した筆者は、愛ゆえに夢を叶えた男・Joystick氏に書面での緊急インタビューを敢行した。

——なぜ20年も前のタイトルである『メタルサーガ 鋼の季節』を今リマスターしようと考えたのでしょうか?

Joystick氏:
まず前提として、僕たちの会社ではゲームのパブリッシングや、IPの派生企画・運用といったビジネスを展開しています。展示会の会場でサクセスさんと初めてご縁をいただいた際も、既存IPを活用した何らかのコラボレーションを行おうという計画がすでに持ち上がっていました。

そうしてIPのリストを整理していく過程で、『メタルサーガ 鋼の季節』をはじめ、僕自身が当時全力でやり込み、強い思い入れのあったタイトルがいくつか目に入ったんです。どれも魅力的な作品ばかりでしたが、中でも『メタルサーガ 鋼の季節』はもっともリスクが高く、それと同時に「もっとも救済が必要なタイトル」だと感じました。

——Joystick氏ご自身にとって、『メタルサーガ 鋼の季節』やシリーズ全体に対する特別な思い出はありますか?

Joystick氏:
僕は『メタルマックス』シリーズがとにかく大好きなんです。ゲーマーとしてもそれなりに数をこなしてきた自負がありますが、このシリーズとの出会いは鮮烈でした。初めて真剣に向き合ったのは、スーパーファミコンで『クロノ・トリガー』の英語版をすべてのエンディングまで遊び尽くし、JRPGの面白さを十分に知ったあとのことです。

そんな状態でありながら、ファミコンの初代『メタルマックス』を今では考えられないようなゲームスピードでプレイした際、あまりの面白さに「一度始めたらやめられない」という感覚に衝撃を受けました。当時はゲームの途中で従姉妹を家まで送るよう頼まれ、親戚の前で挨拶をしている最中も頭の中はゲームのことばかり。あとで従姉妹から「いくら美人な親戚だからって、直立不動でジッと見つめ続けるのは失礼でしょ」と冷やかされるという情けないハプニングがあったほどです(笑)

その後『メタルサーガ 鋼の季節』が発表された時は本当に胸が踊りました。原作と直接的なストーリーの繋がりを持つ唯一の作品であり、宮岡寛氏自らが参加し、ストーリーの作り込みに力を入れていると謳われていたからです。しかし、実際にプレイしてみると全編タッチパネル操作の手触りと、早々に顔を覗かせるバグの猛威に、「本当に最後まで遊べるだろうか」と一瞬躊躇しました。

ただ、僕は世間から評価が厳しいゲームであっても、自分にとって突き刺さる“光る原石”のような要素があれば最後まで走り抜けられるタイプなんです。例えば北米版の『レガイア デュエルサーガ』なんかもそうですね。そこで最終的に「最後までやり遂げよう」と腹をくくりました。

いざ遊んでみると、途中で投げ出したくなる要素があまりにも多く、これでは誰も詳細な攻略情報やデータ整理を作らないだろうと思ったんです。それなら自分が100%コンプリートを目指すついでに作業を行い、攻略情報を公開すれば、元々95%くらいあったと思われるユーザーの脱落率を85%くらいまで下げられるのではないか……と考えました。どうせやるなら徹底的にやろうと作り上げたのが、当時ネット上で間違いなく一番完全だと胸を張れる攻略情報です。海外のWebサイトにあるデータの誤りも僕自身で一つひとつ検証・修正しましたから、当時の日本語や英語のWiki・攻略サイトと比べても、あの精度の高さに及ぶものはなかったはずです。

Joystick氏が整理した攻略データ
Joystick氏が整理した攻略データ

——どのようにして権利元とコンタクトを取り、交渉を進めたのでしょうか?交渉はスムーズに進みましたか?

Joystick氏:
展示会でサクセスさんとお会いしてからは、これまで手がけてきた豊富な実績や事例を共有させていただき、コラボレーションに向けた議論は非常に好意的な雰囲気で進んでいました。

とはいえ、僕自身が普段からIPのライセンスビジネスに広く携わっている立場から言えば、『メタルサーガ 鋼の季節』の当時の評価や売上を考慮すると、通常の移植メーカーであれば社内プレゼンの段階でまず却下される案件です。ビジネスとしての冷徹な評価はもちろん、僕個人としても「パブリッシング以外の自社開発・移植案件の第1弾として、これほどリスクの高い作品を選ぶべきなのか?」という強い葛藤がありました。

最終的に僕が決断を下せた理由は、以下の点にあります。

・本来あるべきだった理想の姿で、プレイヤーにこの作品を届けるチャンスがあること。そしてその内容には、今なお光る素晴らしい要素が確実に存在していること。

・僕自身が当時培った攻略の理論値と作品への心残りが、巡り合わせによって「この状況をもっとも良い形に打開できる唯一無二のポジション」に自分を置いてくれたこと。

・リスクは非常に大きいものの、この状態のゲームを人々が受け入れられるクオリティ、合格点、さらには「良作」と言われるレベルまで引き上げることができれば、僕たちのチームが情熱と深い理解を持つどんなIP作品でも扱える証明になること。

・仮に『メタルサーガ 鋼の季節』で失敗したとしても、その経験とリスクを背負うことで、将来的にさらに多くの『メタルマックス』作品や、僕が評価を覆せる確信のあるタイトルで花を添える結果に繋がるなら、それは十分に価値のある挑戦であること。

会社として腹を括り、すべての費用とリスクを背負う覚悟を決めたあと、僕たちは正式な提案書を作成しました。僕が個人で所有するサクセス関連タイトルの日本版、そして特に希少な北米版のコレクションを提示し、さらに当時の攻略サイトには掲載しなかった、膨大な時間をかけて整理した詳細なExcelデータを提出することで、僕がいかにこの作品を理解しているかを証明したんです。

その後の進行は極めてスムーズでした。パブリッシング実績しかなく、ゲームの移植・開発実績がなかった僕たちのようなメーカーを信頼し、背中を押してくださったサクセスさんには、感謝の言葉しかありません。

決意を固めて『メタルサーガ 鋼の季節』のリマスターへ踏み出してからは、プロジェクトは驚くほど順調に進行していきました。

——一見すると本作は「シンプルな移植」と思われる読者もいるかもしれませんが、実際にはどの点が変更されているのでしょうか? また原作からのもっとも大きな変更点はどこですか?

Joystick氏:
正直に言えば、「方向キーでキャラクターを動かせるようになり、致命的なバグが解消されている」という点だけでも、シリーズファンにお届けする価値のある、僕自身が提示したかった『メタルサーガ 鋼の季節』になっていると思っています。

細かなブラッシュアップの余地はまだまだ残されているものの、これだけでシリーズのファンなら「一度は絶対にプレイする価値がある」と断言できる内容になっています。

もちろん、僕たちが当初想定していたコスト、そして皆さんが想像される以上のリソースを投入している以上、最高のものに仕上げたいと考えています。そのため、この20年間のJRPGの進化の中で「有効かつ優れている」と証明されてきたシステムやメカニクスをいくつか新たに追加する計画です。これらについては最適化と検証が進み次第、今後のイベントや情報発信の中で順次発表していく予定です。

もっとも大きな変化を一つ挙げるなら、「プレイヤーの離脱率を、初めて正常なレベルまで引き下げたこと」かもしれません。あらゆるプレイヤー、あるいはシリーズファン全員に100%愛されるゲームが存在しないとしても、オーソドックスな方向キーとボタン操作への対応、そして進行不能レベルのバグの修正によって、このゲームがようやく「普通の状態」でプレイヤーの評価を受けるスタートラインに立てたこと。それ自体が、作品にとってもファンにとっても大きな救いだと感じています。

Joystick氏が整理した重大なバグのリスト

——原作には数々のバグが存在したことで知られていますが、今回のリマスターにあたって重点的に修正・変更を行った部分はありますか?

Joystick氏:
攻略サイトの画面一面に収まりきらないほどのバグリストを書いていた“著者”としては、当然すべての致命的なバグを修正したいと考えています。当時プレイされた方は、ぜひ当時のバグリストを手元に用意して、ひとつずつチェックしてみてください(笑)

——逆に、原作にあった「ユーザーにとって有利なバグ」はどうなるのでしょうか? 残される予定はありますか?

Joystick氏:
素晴らしい質問ですね! 社内で議論を重ねた結果、「プレイヤーが任意でオン/オフを切り替えられるスイッチ形式で、一部の良性バグを残す」という方向で検証を進めています。

もちろん、最終的には実装結果や権利元との協議を経て決定することになりますが、少なくとも移植チーム、企画チーム、そして僕自身も、そうした遊び心を残すべく努力しているということだけはお伝えしておきます。もし最終的に皆さんの望むような形で残せなかった場合は、どうか温かい目で見守っていただけると幸いです。

——今回の出展ではPC版が使用されていましたが、PC以外にも対応プラットフォームの計画はありますか?

Joystick氏:
もともと原作は携帯ゲーム機のタイトルですので、大画面での体験を最適化した上で、やはり携帯型ハードでも遊べるようにしたいと考え、Switch版のリリースを計画しています。

また、『メタルマックス』シリーズ、特にファンから絶大な人気を誇る初代は据え置きハードのプレイヤー層も非常に厚いため、PSプラットフォームでの展開も予定しています。

——現時点で、多言語ローカライズの予定はありますか? また、発売時期の目途があれば、教えていただけますか?

Joystick氏:
『メタルマックス』と『メタルサーガ』は、クオリティの高い公式中国語ローカライズが絶対に欠かせないタイトルです。歴史を知るプレイヤーならご存じの通り、この作品が誇る優れたクオリティと現在の歴史的評価は、当時「中国語版が存在したタイミングの巡り合わせ」と切っても切れない関係にあります。

そのため、僕たちJoystickチームは、まず中国語版と英語版のクオリティを最優先で確保します。もちろん日本語版も確実に収録されます。その他の言語については、現地パブリッシングを担当するパートナー企業が現れるかどうか次第ですね。

ただ、ひとつ明言できるのは、「僕たちの目標として、PSのディスクパッケージ版を必ず出す」ということです。これは僕たちにとっても、プレイヤーの皆さんにとっても非常に重要なことです。……この意味は、勘の良い方ならほぼ発売年のヒントになっているかもしれません(笑)その年の中で、僕たちは「一刻も早く」届けるべく全力で開発を進めています!

——本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

リマスター版『メタルサーガ 鋼の季節』の発売時期は現在未定。対応プラットフォームはPC(Steam)/PS5/Nintendo Switchを予定している。

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Nep333
Nep333

AUTOMATON中国語版編集長。

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