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巨女と共同生活ゲーム『SAEKO』開発者にインタビューしたら、ファンでも引くほどの歪んだこだわりが詰まっていた。徹底したのは「恐怖と欲情」、イチャイチャなんてさせない
幸運にも『SAEKO』開発者インタビューの機会を得たので、記者として、そしていちファンとして、気になるあれこれを聞いてきたぞ!

美しい少女の部屋に転がり込んで、夢の共同生活。
ただし、自分の背丈は彼女の指1本未満。小人と巨人。その気になれば、彼女はいつでもあなたを握り潰すことができる。止まった蚊を叩くよりも無造作に――

SAFE HAVN STUDIOが開発し、HYPER REALが発売する『SAEKO: Giantess Dating Sim』。Steamでは発売済みで、6月25日にNintendo Switch版も発売される。
巨大な少女・冴子(さえこ)と小人たちの運命を描くアドベンチャーゲームだ。「Giantess Dating Sim(巨人女性との恋愛シミュレーション)」の名の通り、冴子とひとつ屋根の下でのドキドキ生活を味わえる。
……のだが。

ギエエエエエエ! ご、ごめんなさい! 潰さないで!
思っていた「ドキドキ」と違いすぎる。
そう、本作は、主人公(プレイヤー)と冴子に小人と巨人というどうしようもない力の差があるため、まず「冴子に殺されないように立ち回る」という生存のドキドキがあり、綱渡りの日々の先にようやく「いかにして冴子に好かれるか」という恋愛のドキドキがあるのだ。恋の吊り橋理論の吊り橋がいくらなんでも命懸けすぎる。

しかし、そんな生存確率の低すぎる吊り橋を渡らずにはいられないほど、冴子が「魔性」なのも事実。
赤い瞳や爪は、ときに返り血のように、ときにルビーのように見える。
いったい、この魔性のゲームは、いかにして生まれたのだろうか?
追加要素を収録したNintendo Switch版の発売を6月25日に控え、本作が再び盛り上がり始めている今、幸運にも開発者インタビューの機会を得たので、記者として、そしていちファンとして、気になるあれこれを聞いてきたぞ!
すでにプレイした人にとっては「なるほど!」となる回答だらけだし、未プレイの人には作品の概要やメッセージ性を理解しつつ興味を深められる内容になっているので、ぜひ読んでほしい。

――冴子(さえこ)のキャラクターデザインはどのようにできあがっていったのでしょうか? 最初は単に「製作者の好みが詰まっているのだろう」と思っていましたが、実際にプレイしていくと、赤く光る瞳や爪に徐々に恐怖を覚えるようになり、プレイヤーに特定の印象を与える意図を持ってデザインされた部分もありそうだと感じました。
開発:
ありがとうございます。実を言うと、本作には原案として小説家の笛地静恵さんが2000年代前半に書いた小説があります。挿絵はありませんが、文章表現にて「黒髪で長髪、鋭い切れ長の目」とあり、冴子のキャラクターデザインはその設定を元にしています。
キャラクターデザインは、ほとんど全てをkohに担当してもらいました。彼からもらった最初の案では、爪や瞳の色は「ピンク」や「紫」に近かったのですが、話し合いの結果、最終的には「赤」にしました。「血」のモチーフです。
「プレイヤーに怖がってもらいたい」という目的での変更だったので、実際にそう感じていただけたようで、非常にうれしいです。

――となると、冴子という名前も、原案小説が元でしょうか?
また、作中の導入部で、冴子がプレイヤーの化身であるリンに対して「冴え冴えとした月の光、ニスイの冴えよ。」と自己紹介していたのが非常に印象的でした。その話し方からして、冴子は自身の名前を気に入っているように思えますが、実際はどうなのでしょう?
開発:
はい。「冴子」という名前も、原案小説から採用させていただいたものです。というより、当初は設定の似たオリジナルキャラクターを考えていましたが、私の力量では「冴子」よりいい名前が思いつかず、笛地先生に相談して許可をいただいたという背景があります。
実は、いわゆる「サイズフェチ」のジャンルにおいて「冴子」という名には特別な意味があります。『コワい童話』という、1999年に放送されたテレビドラマがあり、意中の人間を縮小して家で飼うという女の子が登場するのですが、まさにそのキャラクターの名前が「冴子」なのです。原案小説も、そのドラマの設定を意識して書かれており、冴子という名前にはそれなりに長い歴史があります。
また、仮にこの歴史を抜きにしても、「冴子」という名前は彼女の性格を表すのに一番よいと思っています。彼女が作中で語る通り、「冴」という字はニスイ=氷と、牙の組み合わせでできています。冷たく危険でありながら、同時にどこか女性的な響きも含みます。
それと、「Saeko」というローマ字表記を英語圏の方に読んでいただくと、psycho=サイコと同じ発音になります。ゲームをプレイしていただいた方なら分かると思いますが、これも冴子の内面を表すのにぴったりな言葉です。
冴子自身が、これらの事実をどれくらい認識していたかは分かりません。でも、自己紹介の雰囲気を見る限り、わりと自分でもこの名前は気に入っていたのではないかと思います。

――本作は、タイトルの「巨女とイチャイチャ共同生活するゲームかな?」という印象に反し、プレイを始めるとすぐに「決して覆せない力の差」や「小さな身体から見る世界の恐ろしさ」が強く感じられ、「えっ!? Dating Simはどこ!? イチャイチャ共同生活は!? 」となります。この流れは意図的なものでしょうか?
開発:
私が大好きなゲームに、『VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action』というゲームがあります。サブタイトルに「Action」と冠されていますが、文字を読んで進めるアドベンチャーゲームで、とあるミニゲームを除いてアクションの要素は全くありません。
『SAEKO: Giantess Dating Sim』というタイトルはそれをオマージュして付けたものなので、文字通りの「Dating Sim」を作ろうという気は最初からまったくありませんでした。騙された人がいたらごめんなさい……
本作はサイコホラーなので、ゲームの説明やスクリーンショットを読めば、恋愛ゲームとはほど遠い不穏な雰囲気が伝わってくると思います。でも、設定やタイトルだけを見ると恋愛っぽさもあるし、開発中には、冴子とイチャイチャするエッチなゲームだと勘違いした海外ファンからのメッセージを多く受け取ったこともありました。すべてスルーしてしまったんですが(笑)
ゲーム内の1日目にはモコというオタクの女の子が登場しますが、彼女のセリフを描くにあたり、「巨女とのデートシム」を望むファンの姿はかなり参考にしました。彼女が冴子にあっさり食べられてしまうさまを冒頭で示すことによって、本作のサイコホラーとしての性格をはっきり伝えられたんじゃないかと思います。

――冴子は、製作者のいわゆる「癖」がおおいに入ったキャラクターですよね。ただ、作中のグラフィック表現としては「興奮」よりも「恐れ」が先に来るような、あるいはそれらが混ざり合ったまま心拍数が上がるような描かれ方があえてされていると感じました。私は大きいおっぱいに目がないのですが、冴子と話しているとき「おっぱいでっか!」と「こ、殺される……」が同時に押し寄せるという不思議な体験をしました。
この「興奮」と「恐れ」の両立やバランスについて、考え方や工夫があれば教えてください。
開発:
ありがとうございます。個人的な話ですが、ゲムぼく。(記者)さんの記事を昔からずっと読んでいたので、ゲムぼく。さんが大きいおっぱいに目がないことはよく存じ上げております(笑)
おっしゃる通り、「興奮(=冴子の魅力)」と「恐れ」の両立は、開発期間を通してずっと意識していたことでした。実際には、「恐れ」の演出に重点を置いていたことが多いですかね。「まず恐れがやってくる、それからじわじわ魅力を感じてくる」という順番が理想でした。人間って、怖いものに興奮しますからね。
このスクリーンショットのイラストは、その工夫が一番凝らされているシーンだと思います。構図としては、冴子のおっぱいが画面のかなりの面積を占めていて、言葉で聞くと嬉しい状況かもしれません。でも、実際に「自分が親指ほどに小さくなり、机の上から自分より何十倍も大きいおっぱいを眺めている」という状況として考えると、まずおっぱいはおっぱいではなく、「巨大な質量を持った何か」として感じられるんじゃないかと思いました。
そこで、胸部の全体が映らない画角にしたり、揺れ方や光の入り方を工夫したりして、「パッと見でおっぱいとは分からない」ような形にならないようアニメーションを描いてもらいました。これは演出として大正解で、現在のアニメーションを初めてゲームに組み込んだときは、開発を中断せざるを得ないほど強く興奮したことを覚えています。

――本作の時代設定を2008年とした理由を教えてください。作中で特にその年代設定を実感できる部分としては「ガラケー」や「iPod」がありますが、そうした舞台装置的なアイテムとの兼ね合いもあったのでしょうか?それとも、製作者の好みなどによるものでしょうか?
開発:
一番の理由は、先に挙げた原案の小説が2002〜2003年頃に公開されたものなので、そこからの時間経過を表すためです。
でも、2000年代後半はガラケーやiPodといったガジェット全盛期で、毎年のように新しいモデルが出るし、本当に楽しかったですよね。当時自分は小学生でしたが、プログラミングや機械のオタクになったのは、この2000年代の環境によるところが大きかったと思います。携帯ショップに行けば無料配布のカタログを持ち帰り、手に入れたガジェットの設定項目は全て操作していました。そのため、ゲームの舞台を2000年代後半に設定すると決めたときから、ガラケーやiPodといったガジェットは必ず登場させようと決めていました。

――本作は、寝る前に携帯電話のニュース機能を通じて、「β-ノセニス」がもたらす異変など、世界で起きている重要なできごとを断片的にうかがい知ることができます。
いっぽうで、特に意味のなさそうな日常のニュースもたくさんありますが、そちらに込められた意図やねらいがあれば教えてください。たとえば、10月6日18:48時点のニュースで「好調巨人『弱点見つからず』」というプロ野球ニュースがあるのですが、試合結果が現実のそれ(2008年10月5日 巨人3-0中日)と一致していて凝っていますし、冴子との1日を過ごした後に「巨人」という言葉を見ると思わずドキッとしてしまいます。ただ適当にニュースが並べてあるわけではなさそうだな、という気がしました。
開発:
巨人のニュースは私もすごく好きな記事です。実際の試合結果までチェックしていただいてありがとうございます。適当に埋めたりしなくてよかった……
これらのニュースを書く際は地元の図書館に行って、当時の新聞の縮刷を漁りながら、ゲームのテーマに合いそうなものを改変して掲載しました。
本作の舞台となる2008年は、秋葉原の通り魔殺人事件があったり、リーマンショックがあったりと、日本も世界も非常に不安定な1年でした。そうかと思えば、ゲーム内でも取り上げているような、デコメールやファストファッションの流行もありました。2026年の現在とも重なりますが、「社会全体の不安定さ」と、その中でも特に気にせず遊んでいる人間の「無関心」が同時に存在しています。
そのズレ、あるいはギャップのようなものは、まさに冴子の物語を描くうえで重要な背景になるだろうと思いました。不景気になろうが行方不明者が続出しようが、みんな合コンには行くし、流行の化粧やファッショントレンドを追って買い物にも出かけるわけです。

――本作をプレイしていると必ず楽しみになるの「ケータイ小説」です。とてつもない「それっぽさ」があり、思わず「うわあ、こんなのあったあった!」と声を上げながら読んでしまいます。独特なセリフ回し、地の文の拙さ、行間の開け方、半角カナと全角カナの使い分け……
そうとう狙って作り込まないとここまでの「それっぽさ」にはならないと思うのですが、これはどうやって作ったのでしょうか?
開発:
ありがとうございます。実を言うと、僕はケータイ小説をリアルタイムで読んだことはありませんでした。小学生男子だったからです。
でも、ゼロ年代のケータイ文化を取り上げるとなれば、やっぱりケータイ小説は外せない。そう思って、現在までいまだ残っている作品を何作か読み、あらゆる面を参考にしながら、なんとか書き上げました。リリース後、当時のケータイ小説の読者らしき方からも、ゲーム内の小説を褒められて非常に安心しましたね。「こんなのは偽物だ!」と言われたらどうしようと思っていたので……
実際のケータイ小説は、いわゆる「マイルドヤンキー」文化の影響が強く、作中の小説よりさらに刺激が強いです。妊娠や暴力、レイプやいじめが頻繁に出てきます。突然の病気もあります。ゲームとしての都合から、作中のケータイ小説を書く際にはそれらの刺激的な表現は弱めてしまいましたが、インターネット上で今でも読める作品はけっこう残っているので、みなさんもぜひ本物にトライしてみてください。けっこう面白いです。

――冴子について、もっとも魅力的だと感じているお気に入りのシーンやセリフを教えてください。
個人的には、イヤリングを選びに行った際の冴子が、服装やメイク、ときおり素直さを見せる会話も含めて、とてもかわいいと思っています。
開発:
ありがとうございます。冴子とのデートシーンは、冴子の見た目でなく背景の色使いなど、多くの要素をこれまでのシーンからガラリと変えています。残酷なだけではない、冴子のかわいらしい一面に気づいてもらうためです。結果として非常にうまくいったと思いますし、開発者全員にとってお気に入りのシーンだと思います。
私個人としては、ゲーム終盤、冴子と海を見に行く場面が好きですね。本作は人を選ぶ表現が多いし、書きながら自信をなくすことも多かったのですが、海での冴子のセリフを書き上げたことで、一気に物語全体についての自信が持てるようになった記憶があります。人を選ぶ設定だし、欠点も大きいヒロインだけど、そういう欠点の大きいヒロインだからこそ描けたテーマがあったんじゃないかな、と。
あとは1日目の昼のラスト、タキを潰したあとにティッシュを取りにいく冴子が好きです。綺麗好きでかわいいですよね。

――冴子以外のおもな登場人物となる「小人」たちは、いずれも個性が強いというか、ある種の極限状態であるがゆえに個性が強く出ざるを得ない面々ばかりですが、特にお気に入りのキャラがいれば理由とともに教えてください。
個人的には、序盤から登場するチオが、人間臭さや切実さ、おっぱいのでっかさや性への奔放さなどから好きです。
開発:
ありがとうございます。チオは自分も好きです。悲惨な設定なので、まじめなキャラクターを入れるとゲームとして重くなりすぎてしまう、という理由があり、小人たちは明るく欠点があり、話の内容も面白くなるように調整しました。下ネタだらけなのは、作者の個人的な好みもあるんですが、しんどくなりすぎずに極限状況を描ける唯一の手段だったという事情もあります。『ダンガンロンパ』シリーズの演出に近いところがあるかもしれません。
お気に入りのキャラクターを挙げるのは、とても難しいですね……書いていて一番楽しかったのはキナです。彼女のジーンズの話はとても気に入っています。
あと、クララも好きです。作者として、彼女を書く際にはお嬢様特有のちょっと嫌な部分を出すようにしていたのですが、実際にはプレイした方々から「唯一まともなキャラ」として扱われることが多く、ちょっとびっくりしました。僕の性格が歪みすぎているのかもしれません。

――本作には複数のエンディングがありますが、いろいろと想像の余地があるものや「これでよかったのか」と考えさせられるものが多く、なんとなくですが「誰の目にもわかりやすい単純なハッピーエンド」はあえて意図的に用意していないように感じました。相対的にはよさそうな結末であっても、どこか「ぐちゃっ」とした手触りが残る、というような。その絶妙な手触りゆえに、すべてのエンディングを見られずにはいられなくなってしまうのですが。
エンディングに込めた想いについて、可能な範囲で教えてください。
開発:
まず、冴子は悪人なので「すべての罪が許され、あとは幸せに暮らしました」みたいなエンドは書かないようにしました。
そして、これはプレイヤーにも当てはまります。管理人として、プレイヤーは何人もの小人の命を間接的に奪ってきたわけです。
ですからエンディングは、「冴子もプレイヤーも幸せにはなれず、どこかに引っかかりを残し続ける」という前提で書く必要がありました。
同時に、ゲームプレイを通して、プレイヤーは冴子に何らかのシンパシーを感じていてほしい、と願っていました。人類すべてではないにしろ、わざわざ本作を最後まで遊んでくれるような人は、きっと冴子の行動原理にどこか通じる、暗い欲求を持っているんじゃないかと思ったんです。
本作の3つのエンディングは、その暗い欲求との異なる向き合い方に対応しています。分かりやすい感動展開があるわけではないのですが、感動とは違う形で、プレイヤーの脳内にこの物語が残り続けてくれたらいいなと思いました。
――ありがとうございました。

「冴子は悪人」「それはプレイヤーにも当てはまる」。
な、なるほど……! 言われてみればもちろんそれはそうなのだが、こんなにもハッキリ意図されていたとは……!
本作は、さまざまな意味で二面性のある作品だと言えそうだ。
小人と巨人。興奮と恐れ。不安定な社会と無関心な日常。さらに、冴子を愛情込めて魅力的に描きつつも「冴子は悪人」と言い切るメッセージ性。そして、それらの根底にあるのが、作中における冴子の行動原理であり、プレイヤーの心のどこかにもある「暗い欲求」なのかもしれない。
冴子というキャラクターや、年代・世界の話を掘り下げて聞くことができ、本作をより深く知り、より深く好きになるインタビューだった。

それはそれとして、「タキを潰したあとにティッシュを取りにいく冴子が好きです。綺麗好きでかわいいですよね。」という回答には、ちょっと「ヒィッ」となってしまったが。
いや、冴子は好きなのですが……!好きなのですが、筆者はまだそこにはたどり着けていないかも……!修行が足りない……!

本作はすでにPC(Steam、DLsite、STOVE)で配信中のほか、6月25日にNintendo Switch版も発売予定。Switch版はダウンロード版とパッケージ版(通常版・限定版)がある。ちなみに筆者は限定版を予約済みである。
また、Switch版には幻のプロトタイプ版シナリオ(プレイ時間1時間程度)が追加収録されており、これは同時にPC版でも無料アップデートとして提供される。親切!
初めて遊ぶ人も、すでにPC版でプレイした人も、6月25日から文字通り冴子の掌の上でいろんな意味のドキドキ共同生活を楽しもう!
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