写真週刊誌FRIDAYがグラビアアイドルと共に作った実写恋愛ゲーム『ハムコイ』は、Steam発売禁止の危機を乗り越えてなんとかリリースにこぎつけた。その過程を開発陣に訊いた

講談社クリエイターズラボと写真週刊誌のFRIDAYがコラボした『ハムコイ-ハムスターに転生した僕と三姉妹の甘々な日々』は、幾度もSteamでの発売禁止の危機に瀕していたという。

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講談社は7月17日に、『ハムコイ -ハムスターに転生した僕と三姉妹の甘々な日々』を発売した。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)。

『ハムコイ-ハムスターに転生した僕と三姉妹の甘々な日々』(以下、ハムコイ)は実写恋愛シミュレーションゲームだ。プレイヤーは「ハムスターに転生してしまった主人公」。ハムスター視点で、幼馴染の美人三姉妹に飼われながら甘やかされるという日々を過ごすことになる。

実写恋愛ゲームはSteamでも一大ジャンルとなっている。そんなジャンルに、講談社クリエイターズラボと写真週刊誌のFRIDAYがコラボをし、新規参入するかたち。FRIDAYの製作ということで、キャストもグラビアアイドルを起用。都丸 紗也華さん、高鶴 桃羽さん、池本 しおりさんが三姉妹を演じており、グラビアの世界観で恋愛模様を楽しめるのも本作の特徴だろう。

一方で本作は幾度もSteamでの発売禁止の危機に瀕しており、無事に発売されるはこびとなった。開発経緯や発売禁止のくだりも含めて、講談社に話を訊いた。

──自己紹介をお願いします。

織田氏:
講談社の新規事業部署・クリエイターズラボ内のゲームプロジェクト「ゲームラボ」の織田と申します。元々はゲームの企画周り全般を担当していまして、今回は今までとはまったく毛色の異なるゲームの取材ということでありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。

片山氏:
同じく講談社ゲームラボの片山です。ゲームラボ全体の取りまとめを担当しておりまして、『ハムコイ』には最初期から携わっております。よろしくお願いいたします。

櫻井氏:
FRIDAY編集部の櫻井です。普段はFRIDAYのグラビア担当をしておりますが、今回ディレクターとして『ハムコイ』制作に参加しました。よろしくお願いします。

──そもそも『ハムコイ』とはどのようなゲームなのか、ご説明をいただけますか。

織田氏:
このゲームはハムスターに転生して女の子に可愛がってもらうゲームとなります。それを実写で表現しているのが大きな特徴で、今回は3名のグラビアアイドルの方々にヒロインを演じていただいております。「お世話され系アドベンチャーゲーム」という、前代未聞のジャンルとしてやらせていただいています。

──『ハムコイ』はどういった経緯から開発が始まったのでしょうか?

織田氏:
実は我々3人は同期入社で、僕と櫻井は飲み友達なんです。その櫻井がFRIDAYに異動となった時にグラビアを担当することになりまして、「グラビアが活きるゲームって、何かできませんかね」と相談を受けたのが最初のきっかけです。

その前段階で、片山から中国で実写映像のゲーム(※FMV:Full Motion Videoの略)が流行っているらしいという話も聞いていたんですね。それで「2つを掛け合わせれば変わったゲームができるんじゃない?」「このゲームに登場する俳優さんを未来のスターにしよう」という話になりまして、今回の『ハムコイ』へと結びつきました。

──なんというか、FRIDAYっぽい企画の立ち上がりですね!

一同:
(笑)

──本作で3名のグラビアアイドルの方々が演じるヒロインにはそれぞれ異なる魅力がありつつも、共通するテーマのようなものを感じます。この3人のテーマというものはどういったものになるのでしょうか。

櫻井氏:
まず企画の初期から「三姉妹をやりたい」というコンセプトがありました。凄くベタな設定ですけど、一番上の大人のお姉さんとしっかり者の次女、甘えん坊でツンデレの三女といったイメージでした。

元々、こういったFMVゲームは中国と韓国で流行っていましたが、プレイヤー目線では「ヒロイン同士の関係性が薄い」と感じていました。それで我々がFMVゲームを作るのであれば「3人の関係が密な家族モノでやりたい」となりまして、そこから三姉妹の設定へと発展しました。

キャスティングに関して、長女は「しっかり者で何でも許してくれそうな存在」という設定を踏まえまして、グラビア歴10年以上の大ベテランである都丸紗也華さんを選ばせていただいています。次女は「頑張っている就活生」という設定です。高鶴桃羽さんという方がクラシックバレエを2歳ぐらいからやっていて、海外留学をしていた経歴がありましたので、それをそのままキャラクターに落とし込もうとなり、起用に至りました。三女は幼い雰囲気という設定から、「ミニグラの大本命」こと、池本しおりさんに出演をお願いしました。

──ちなみに櫻井さんはFRIDAYさんのグラビア担当ということですが、具体的にはどういった仕事をされるのですか?

櫻井氏:
基本的に「こういう人を撮りたいです」という企画を立てたあと、撮影のセッティング……カメラマンさんを決めたり、スタッフを集めて撮影をして、撮り終わった写真を選んだりします。今は誌面とデジタル向けの写真集が多いのでそれを出したり、紙の写真集を作ったりをするという仕事ですね。

──なるほど。いわゆる総監督のようなものでしょうか?

櫻井氏:
そうですね。編集のポジション自体がほぼ総監督に当たりますね。

──それは講談社の中で役割が回って来たのか、あるいはご自身が率先的にやっているのですか?

櫻井氏:
私自身は元々、経済や事件といった社会絡みの報道系の仕事をやっていたのですが、「グラビアもやってみたいな」という思いがありました。ただ、これはグラビアに限らず出版業界全体がそうなのですけど、決して順風満帆とは言えない現状があります。そのなかで新しいことをできないかなというところで、今回の『ハムコイ』を提案しました。

──世間一般からすると、FRIDAYと言えばゴシップ誌のイメージが強いかと思われます。ただ、グラビア担当に関しては仕事内容がだいぶ違うと。

櫻井氏:
そうですね。ただ「今までに見せていない一面を見せる」というスクープ精神はグラビア担当でも共通していまして、色々とチャレンジをしている感じです。「みんなが見たいものを見せる」というのがFRIDAYの伝統なので、それが報道や企画に表れていると思います。

──FMVゲームって既に色々な作品が出ていますけど、FRIDAYがプロデュースしたからこそ出せた価値というのは何だと考えられていますか?

櫻井氏:
複数のアングルから、ヒロインの美しい姿や自然体な表情を映し出す映像でしょうか。

本作では恋愛シミュレーションゲーム風の選択肢が出てきて、正しい選択肢を選んでいくとご褒美のシーンが出ます。その撮影を我々が担当しているのですが、ハムスターの視点には当然、限界があります。ローアングルが前提ですし、空を飛ぶようなこともできません。

ご褒美のシーンでは、そういった制約から解き放たれた、多彩なアングルからの映像を楽しむことができます。ハムスターの設定はどこに行ったんだ?と思われるかもしれませんが(笑)。

──それはFRIDAYのチームだからこそ成せる業、というのもあるのでしょうか。

織田氏:
元々、弊社には「写真映像部」という部署がありまして、グラビアのみならず、昨今ですとFIFAワールドカップのようなスポーツの映像なども幅広く手がけております。そのチームに蓄積された映像技術とFRIDAYが培ってきた「被写体を可愛らしく撮る」ノウハウが掛け合わさったことが、本作の映像としての完成度に繋がっていると思っています。

──『ハムコイ』の開発において参考にされたり、刺激になったFMVゲームというのはありますか?

織田氏:
影響を受けたものとなりますと『君、勉強を邪魔しないでください』と『まさか!下宿生が 美女ですって?』ですね。

櫻井氏:
いちユーザーとして一番楽しんだのは『まさか!下宿生が 美女ですって?』になります。

『まさか!下宿生が 美女ですって?』

織田氏:
企画制作時は片山の経験が活きたんです。みんなで実写のゲームをやろうとなってから、先行作品と似たようなものも含めて企画を持ち寄ったんですよ。そのなかに、ハムスターの企画がありました。

片山氏:
昔、着ぐるみの中に入ってバイトをした経験があるんです。着ぐるみに入っていると、普段は近寄ってきたりもしない子どもやお年寄りが親しみを持って近寄ってきてくれるということに気づいて(笑)。「今の自分と違う姿になったら、そういう嬉しさや楽しさがあるんじゃないのか?」というところから企画を出しました。

──本作の「ハムスター視点から人間を見る」というアイデアは片山さんから出た、と。

片山氏:
「異世界転生」ではないですが、やはりみんな「別の生き物、別の人間になりたい」願望みたいなものがあると思っています。僕自身、『グランド・セフト・オートV』が好きなんですが、あのゲームって3人のキャラクターを入れ替えながら進めていくじゃないですか。ああいう風に自分ではない他の人の人生を切り替えて遊んでいくなかで、選択肢のひとつとして人間じゃなくてハムスターがあってもいいなというイメージがあったんです。

──そんな『ハムコイ』の、ほかのFMVゲームにはない、『ハムコイ』だからこそ得られる体験はどういったものになりますか。

片山氏:
やはり「可愛がられる」ではないかと思います。よく小動物のような力なき者になりたい、それこそ「『ちいかわ』になりたい!」と言う人ってよくいるじゃないですか(笑)。大枠はそれと一緒だと思っていまして。

ハムスターに転生した主人公は結構活躍するんですけど、最初はそんなに期待されているワケではないんですね。そういう気楽さと言いますか、愛玩動物として可愛がられるという気持ちよさ、楽しさみたいなものは本作だからこそ得られる体験だと思います。

櫻井氏:
撮影する側として思ったのは「“ヨシヨシ”としてもらえること」って、そんなに無いということですね。ドラマや映画を見ていても、誰かに撫でてもらうとかお腹をコチョコチョくすぐってもらう映像体験って、他にはあまりないということに気づかされました。

──実際にプレイする中で「自認ハムスター」になるのはちょっと戸惑うのでは。

片山氏:
確かに最初の頃は面食らうと思います。でも、遊び始めて物語が終盤に差し掛かる頃になると、ハムスターと一心同体になってしまうかと(笑)。

──櫻井さんは本作をプレイしてみて、どのように感じられましたか。

櫻井氏:
シナリオが結構シリアスだな、と思いましたね。そもそもハムスターは寿命が短く、身体が小さいこともあって出来ることも少ないです。それもあって本作ではモノローグがたくさん出てくるのですけど、意外に後半、ハムスターが凄く悩んだりするんです。「どうすればこのヒロインたちを救えるのだろうか?」と。そういう方向に物語が進んでいくのも本作の魅力のひとつになっているかと思います。

私も企画に参加していることから第三者視点では見られないので分からないのですけど、まさかこういう展開になるとは思っていなかったんです(笑)。結構、泣ける物語になっているのかな、と。

元々、シナリオライターの下村健さんとの会議では、参考となる作品として「YU-NO(※『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』)」の名前が出ていたんです。タイムリープの設定であるとか、終盤に物語全体の雰囲気がシリアスになるといった部分は『YU-NO』から学んでいたりもするんです。

日本でFMVを作るなら、アドベンチャーゲームの素晴らしい伝統を少しでも要素として盛り込みたい。そんな思いもあって、『ハムコイ』はシナリオに力を入れています。なので、単にセクシー要素を売りにしているだけのゲームじゃないぞ、というのは強調しておきたいですね。

──少し踏み込んだ話になりますが、本作は昨年Steamでリリースするはずが見送られてしまったという事件がありましたよね。最終的にSteamでも販売されることが決まりましたが、当時、どのような障壁があり、どのように解決のアプローチをされたのでしょうか。

織田氏:
申請に落ちた時、なぜダメだったのか分からなかったんです。Valveの規約から推測するに「実在の人物を扱うのはダメ」「性表現には規制がある」部分に抵触している可能性が高い。ただ、実写ゲームは俳優が役割を演じており「実在の人物」ではないです。だとすると「性表現」になりますが、『ハムコイ』の描写はマイルドで、Steamでは本作以上に性的要素を含むゲームが数多く販売されています。

プラットフォーマーの考えは分からないものの、年齢設定などを調整して再チャレンジした結果、通過しました。

櫻井氏:
個人的な推測になってしまいますが、プラットフォーマー側の規制が話題になるたびに「表現の自由」を求めて声を上げてくださるユーザーの皆様の声も、通過の後押しになったのかもしれません。

──映像や表現の内容を大きく変更するといった調整は発生したのでしょうか。

織田氏:
いえ、表現に関しての変更は行っていません。

──とはいえ、ストアページを閲覧するにはログインが必要ですし、ゾーニングはしっかりされていると。

ストアページ閲覧にはログインが必要になる

織田氏:
そうかと思います。いわゆる日本における「18歳以上のみ対象」ではないですけど、全年齢向けとも言えない。おそらく15歳以上対象ぐらいのイメージだろうと解釈しています。Valveの解釈だと、成人向けに近い位置づけになっているイメージですね。

櫻井氏:
ある程度のドキドキの体験はあるとは思いますが、FRIDAYとしての基準からしますと、『ハムコイ』での表現自体はマイルドなものになっているんですよ。

──間もなく発売を迎えますが、今後、本作および実写ゲームというジャンルをどのように育てていきたいと考えられていますか?

櫻井氏:
実写ゲームというジャンルがひとつの表現手段となって、ほかの会社さんも取り組めるよう日本でも定着していけば面白いだろうなというのは思っていますね。実際に7月18日にはテレビ朝日さんと一緒に実写ゲームのイベントの開催も予定しています。

今回は恋愛やセクシー要素を含んだゲームでしたが、たとえば『Her Story』のようなシリアスな作品も含め、実写映像を使うことでゲームの幅が広がっていくのが世の中としても面白いですし、新しい作品が誕生する余地があるのではと考えております。

片山氏:
私も実写ゲームのジャンルとしての可能性は凄くあると思っています。たとえば本作でも多用されているロー・アングルの構図は、小津安二郎監督の映画を想起させられる格式高いものを感じたんです。このような内容のゲームではありますけど(笑)。

これまでのゲームでは見られなかった新しい映像表現がここから開拓されるのではないのかと思っています。我々以外でも『敏感!恋のアンテナ ビンビン別嬪荘』のテレビ朝日さんや、『ラブ・スタートアゲイン』を制作された株式会社ウェイブさんのように、今後、実写ゲームを作られる方々が増えていってほしいですね。実写ゲームが日本でもっと盛り上がってほしいです。

──本作に関してはまさに「グラビアのプロ集団による実写ゲーム」であり、普段からグラビアアイドルを撮影されている方々が制作されているという点では差別化のポイントになっているなと思います。

櫻井氏:
そもそも、FRIDAYのグラビア撮影とゲームが組み合わさるとは思わないですよね(笑)。

織田氏:
私は全くFRIDAYのグラビア文脈のようなものは知らず、ほぼすべての撮影現場に足を運んだのですが、上がってくる映像を見て思ったのは見せ方に対するこだわりが凄いということですね。同じように撮っても、「全然違うな」と思わされることが何度もありました。櫻井もですが、撮影を担当されるカメラマンさんも正面から撮るにしても角度を付けてみようなどといったディレクションに凄くこだわってくれまして、プロだなと思いました。

以前、弊社の写真映像部の部長が「可愛く女の子を撮ることに関して、我々はプロですから」と凄く言われていたのですが……本当にその通りだったなと。

片山氏:
初挑戦のジャンルなので、UIなど粗削りな部分も少しあるんですけど、全体的に櫻井と織田、そして写真映像部の情念が入っています(笑)。

──いずれグラビアではなくて、FRAIDAYさんのスクープ取材をテーマにした実写ゲームとかも見てみたいです。

櫻井氏:
それ自体、やってみたい思いはあるんですけど……考えるだけでヒヤヒヤしますね(笑)。

片山氏:
ゲームラボも含め、講談社内でも出版社ならではの知見を活かした新ジャンルのゲームをやっていこうという話はありますので、ぜひ挑戦してみたいですね。

──ありがとうございました。

ハムコイ-ハムスターに転生した僕と三姉妹の甘々な日々』は、PC(Steam/Epic Gamesストア))で7月17日より発売中だ。

[執筆・編集:シェループ]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]

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