爆走電車ゲー『Denshattack!』の開発者は、年イチでスペインから来るくらい日本が好きらしい。トンチキ電車アクション、その着想元はプラレールやアケゲー

『Denshattack!(電車アタック)』の開発者デイビッド・ハウマンドレウ氏のインタビューをお届けする。

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Fireshine Gamesが販売し、スペインのインディースタジオUndercodersが開発を手がける『Denshattack!(電車アタック)』。本作はPC(Steam/Microsoft Store)/PS5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch 2向けに7月15日に配信された電車アクションゲームだ(関連記事)。Xbox/PC Game Pass向けにも提供されている。

本作の舞台となるのは、日本をモチーフとしたディストピア世界。プレイヤーは“電車アタッカー”となり、九州の郊外から大阪や東京、雪の積もる北海道まで、日本各地をモチーフとしたステージを電車で駆け抜けていく。電車でオーリーやキックフリップ、グラインドといったスケートボードさながらのトリック(技)を繰り出し、ライバルたちとのバトルを制しながら、邪悪な巨大企業ミライ堂を倒すことを目指す。

このたび弊誌は、本作を手がけたUndercodersのゲームディレクター、デイビッド・ハウマンドレウ氏にインタビューする機会をいただいた。インタビューでは、本作の反響や開発の経緯、日本の鉄道やゲーム、アニメから受けた影響、Nintendo Switch 2およびGame Passへの展開、スタジオの今後などについて話をうかがうことができたので、以下にその様子をお届けする。

――『Denshattack!』の発売おめでとうございます。先日、販売本数が15万本、プレイヤー数が30万人に達したと伺いました。ヒット作といえると思いますが、現在はどのようなご心境ですか。

デイビッド・ハウマンドレウ氏(以下、ハウマンドレウ氏)
ゲームとして大きな成功だと思っています。発売からまだおよそ1か月半なので、本当にうれしく思っています。私たちは今も非常に小さなインディースタジオです。本作には約3年の時間を費やしてきました。数字が良いことだけでなく、評価についてもうれしく思っています。Steamでは今も98%の好評率を維持していると思いますが、これは素晴らしいことです。いまだに信じられません。とても良いスタートだと思っています。

――発売後の反響はいかがですか。

ハウマンドレウ氏:
とても反響が良く、うれしく思っています。昨年gamescomで発表した際、皆さんの反応が非常に好意的で、デモを遊んだ方々がもっと遊びたいと言ってくださいました。ただ、本作は第一印象とゲーム全体のプレイフィールが少し異なります。「単なる一発ネタのゲームではないか」「少しギミック頼みではないか」「設定が突飛なだけで、その裏にゲームとしての中身がないのではないか」というご意見もありました。

そのため皆さんが製品版を楽しんでくれるか少し不安でしたが、さまざまな媒体でユーザーレビューが投稿され始めると、皆さんが最初から最後まで楽しみ、ストーリーや進行要素などをくまなく見てくださっていることが分かりました。チームにとって本当に報われる思いです。

日本のゲームに夢中だった少年時代

――ハウマンドレウさんは、ゲーム開発の世界にはどのように入ったのでしょうか。

ハウマンドレウ氏:
私は子供の頃からずっとゲームをして育ちました。当時は日本のゲームにのめり込んでいて、任天堂やセガのプラットフォームで遊び、任天堂、セガ、カプコン、コナミ、ナムコなどさまざまな会社から出た作品に大きな影響を受けました。任天堂っ子だったので、任天堂のプラットフォームで自分のゲームが発売できるのは喜びもひとしおですね。

また、アーケードゲームには、とても強い思い出があります。ファミコンやゲームボーイなど、家庭で遊べるものとは全く違いました。アーケードゲームから得られたエネルギーや興奮が、私たちにゲームを作ろうと思わせたのです。スクウェアやエニックスのRPGにも夢中になりました。80年代後半から2000年代初頭にかけてのゲームが、成長期の私たちに最も大きな影響を残したと思います。

今では大きく変わりましたが、スペインは日本やアメリカのようにゲーム開発産業の歴史が長い国ではありません。私と大学時代の友人たちは当時ゲームを作りたいと思っていたのですが、非常に小さなスタジオばかりで、業界に入るのはとても困難でした。だから自分たちでUndercodersを立ち上げました。

Undercoders は2006年に設立された小さなインディースタジオです。携帯電話向けのゲームから始め、次にスマートフォン向け、そしてコンソール向けゲームへと開発の手を進めていきました。

――どれくらいの規模のスタジオなんでしょうか。具体的な人数など、お伺いしてもよろしいですか?

ハウマンドレウ氏:
非常に小さなスタジオで、社内の中核チームは11人です。それがオフィスにいる中心的なメンバーですが、多くの外部協力者とも仕事をしています。小規模なので、サウンドデザインやUIのコンサルティングなど、外部にお願いすることが多いですね。

『Denshattack!』の場合は音楽担当は全員外部委託で、12人以上いたと思います。開発者よりミュージシャンの方が多いですね(笑) マドリードの小さなインディースタジオには、一部の2Dアニメーションを担当してもらいました。このように協力者は大勢いますが、中核チームは11人です。

――日本のゲームやアニメが『Denshattack!』に与えた影響について教えてください。本作が受けた日本からの影響で、特に大きなものは何でしょうか。

ハウマンドレウ氏:
ゲーム全体が日本から影響を受けていると思います。まずテーマにからして、基本的に日本の鉄道を題材にしています。私たちは日本の鉄道が大好きで、幸運にも日本各地を旅行することができました。初めて訪れたのは1998年だったと思います。それ以来、何度も日本を再訪し、ジャパン・レール・パスを使ってバックパック旅行をしながら各地を巡りました。そして日本の鉄道がとても好きになりました。

最初に知ったのは新幹線です。90年代当時のスペインには高速鉄道がなかったので、とても印象的で、まるで未来のようでした。その後、美しい景色や地域の文化、郷土料理、地元の人々に触れられる小さなローカル線にも興味をもつようになり、日本語も少し学び始めました。最初は漫画とゲームが好きで日本へ行きましたが、人々や文化、風景に惹かれて何度も戻るようになり、日本が大好きになりました。

――日本国内でいろいろなものを見て回った経験が、『Denshattack!』の制作にも生かされていると。

ハウマンドレウ氏:
『Denshattack!』のテーマは、南から北まで旅した経験やローカル線、各地を訪れた経験を元にしています。ビジュアル面は、もちろんアニメや漫画から大きな影響を受けています。私たちが暮らすスペイン北東部のカタルーニャでは、80年代後半から90年代前半にアニメがとても人気でした。フランスを経由して、「ドラゴンボール」「キン肉マン」「Dr.スランプ」「超時空要塞マクロス」など多くのアニメが入ってきました。

80~90年代のスペインで育った人たちは、皆そうしたアニメを見て育ったようなものなので、少年漫画的なテーマや色彩、イメージを取り入れることは、私たちにとってごく自然でした。『Denshattack!』にもそうした要素が数多くあります。これは私のような大人の世代の話で、チームの若いメンバーは「NARUTO」「ONE PIECE」「エア・ギア」、そしてもちろん「頭文字D」など、より新しいアニメを楽しんでいます。古典から現代までの日本文化、アニメ、漫画、ポップカルチャーが混ざり合い、本作のビジュアルを形作っています。

あらゆる日本のカルチャーを取り込んだ

――開発のどの段階で、日本をテーマにすることを決めたのでしょうか。

ハウマンドレウ氏:
日本というテーマは、最初から決まっていました。本作のコンセプトは、私が子供の頃に遊んでいた「プラレール」から着想を得たものです。列車といえば、私にとってはあのような日本の列車でした。私は以前スケートボードもしていたので、列車の玩具をひっくり返して遊んでいるうちに、それが自然にゲームのアイデアへつながりました。

そこから「ゲーム内で列車をどうひっくり返すのか」「操作方法はどうするのか」「スコアや物理演算はどうするのか」とコンセプトを発展させていきましたが、ゲームは常に日本の列車を軸に進化していきました。このアイデアは面白く、楽しそうだから、物語やキャラクターを作ろうとなった時点で、すでに日本の列車でした。そのため、舞台を日本にするのが自然でした。

――本作には日本的な要素が数多くありますよね。資料などはどのように調達したのでしょうか。

ハウマンドレウ氏:
過去の旅行で集めたものを資料にしました。ゲームに登場する多くのロケーションには、私も実際に訪れています。ステージや各種要素、名称などを提案した後、日本に詳しいコンサルタントに確認をとっています。問題がないか、不自然な響きではないか、表記が間違っていないか、デリケートな題材に触れていないかといった部分ですね。

たとえば本作には、暴走族、コギャル、ロカビリーなどが登場します。フィクションであり、アニメのように誇張されてはいますが、敬意ある描写になっているかを確認したかったのです。神社についても多くの点を考慮しました。たとえばゲーム内で鳥居を壊すことはできません。それは無礼に当たるからです。そうした点を考慮し、数人に全体を確認してもらい、実際にプレイして「この看板は少し変に見える」「これは表記が間違っているので直してください」と指摘してもらいました。多くの調査をしても、日本語を母語とする方々に全体を確認してもらい、どの部分に問題がなく、どこを改善できるか教えてもらうことは大切です。

――日本にはよく旅行に行かれるのですか。

ハウマンドレウ氏:
1998年から、ほぼ毎年訪れていると思います。大学のインターンとして、東京の神保町付近で3か月働いていたこともあります。当時はコンピューター科学科の卒業を控えており、オーディオブランドのアイワで働いていました。日本では多くの友人もできたので、毎年日本にやってきては友人や同僚の家に泊まり、さらに多くの友人が増えて……、それが何度も何度も日本にやってくる理由になっています。

特に好きな場所は四国ですね。最も気に入っている島のひとつです。私はお城が大好きなんです。四国には宇和島、松山、丸亀、高知など、素敵なお城がありますよね。ローカル線で巡ると、美しい景色と素晴らしい食事を楽しめます。特に高知は食べ物がおいしいですよね。

――『Denshattack!』が特に大きな影響を受けた日本のゲームは何でしょうか。

ハウマンドレウ氏:
『ジェットセットラジオ』からは非常に大きな影響を受けています。『Tony Hawk』や『SSX』などが優れた形で表現していたエクストリームスポーツの要素だけでなく、『ジェットセットラジオ』はそのゲームプレイに、セルシェーディングによる独特のビジュアルとテーマを組み合わせていました。自己表現、反抗すること、自分らしさを示すこと、そして音楽を非常に重視するというテーマが、当時の私たちに強く響きました。

『ジェットセットラジオ』

アーケードゲームの精神も受け継ごうとしました。スピード感のある『デイトナUSA』。突飛さと明るい雰囲気、青空が印象的な『クレイジータクシー』。そして『OutRun2』も大きな参考作品です。もちろん『電車でGO!』シリーズにも強い影響を受けています。1998年に初めて日本へ行った際、専用コントローラーのあるアーケード筐体で遊ぶことができ、「わあ!」と大きな衝撃を受けたことを覚えています。

一見無関係に思えて実は関係しているものとして、『beatmania』シリーズや『Dance Dance Revolution』などのリズムゲームもあります。本作では、レベルを設計する際にリズムを非常に重視しています。指をどう動かすか、前へ進ませてくれる音楽に合わせてどう動くかという考え方は、リズムゲームを参考にしています。また、私は日本の格闘ゲームの大ファンなので、その影響も少しあるかもしれません。

――アートスタイルについて伺います。本作のアートは、何から影響を受けたのでしょうか。

ハウマンドレウ氏:
さまざまなものの組み合わせです。先ほど挙げた多くのアニメがあります。また、イラストレーターたちは、アニメ制作会社TRIGGERの作品に見られる線やキャラクターの表現力をとても気に入っています。『ペルソナ』シリーズも、特にUIに大きな影響を与えました。キャラクターだけでなく、インターフェースも非常にエネルギッシュです。

3Dについては、先ほど触れた『ジェットセットラジオ』があります。また、昔とても好きだったカプコンのレースゲーム『アウトモデリスタ』も、アートスタイルを形作るうえで役立ちました。『Hi-Fi RUSH』も参考にしましたね。

『Hi-Fi RUSH』

特筆すべきは、『ドラゴンボール ファイターズ』など、アニメのスタイルを3D世界へ非常にうまく落とし込んだアークシステムワークスの格闘ゲームです。あちらの方がはるかに素晴らしいアートワークなんですが(笑)、「3Dでアニメをどう表現するか」を考えるために参照した作品のひとつです。

――漫画のようなアートスタイルも素敵だと思います。アートはどなたが担当したのでしょうか。

ハウマンドレウ氏:
あれは複数のアーティストによる仕事です。キャラクターデザインは、スペインのイラストレーターであるVioleta Moldesが担当しました。もうひとり、スペインのイラストレーターであるErnest Salaが、キャラクターの表情、キーアート、カバーアートをすべて担当しました。3人目のSilviaは、グラフィティやメニューなど、すべてのグラフィックデザインを担当しました。

もちろん3Dチームにも別の3人がいます。アートチームは、スタジオ内で最大の部門です。11人のうち5、6人がアーティストで、残りがおおむねプログラマーとデザイナーですね。

各所に助けられて今がある

――本作はNintendo Switch 2、Xbox Series X|S、PS5、PC向けに発売されました。インディースタジオとして、マルチプラットフォームで同時発売するのは大変だったのではないかと思うのですが……。

ハウマンドレウ氏:
はい、ものすごく大変でした。『Denshattack!』はスピードと反射神経が重要なゲームなので、パフォーマンスが極めて重要です。特に終盤には多くの最適化が必要でした。Switch 2やSteam Deckのような機種では、省電力設定などを使った携帯モードでのプレイも考慮しなければなりません。非常に大変な作業だったので、Steam DeckやSwitch 2で遊んだ方から「小さな画面でもとてもきれいに見えて、快適に遊べる」と言ってもらえると、本当に報われた気持ちになりました。

――本作はGame Passでも提供されました。反響はいかがでしたか。また、Game Passに加わるまでの経緯を教えてください。

ハウマンドレウ氏:
良い経験になっています。ごく初期からMicrosoftに本作を提案し、気に入ってもらえたようでした。その後、長期間にわたって話し合いを続け、最終的にGame Passに追加していただけました。

サブスクリプションサービスへの追加は、私たちのような小さなチームにとって、多くの人にゲームを知ってもらい、実際に遊んでもらえるとても良い機会です。多くの方がプレイでき、気に入ればほかの人にも勧めてくれますGame Passのおかげで多くの人が本作を遊んでくれました。市場に出す前から一定の金額が保証されるため、契約がない場合に比べて負うリスクが少し下がります。この点も良かったですね。

ですが、ゲームのクオリティを担保するプレッシャーがなくなるわけではありません。契約を結んだとしても、Microsoftが自社の基準を満たさないものを発売するとも思えませんから。開発費などを回収するには、やはり一定数買い切りで販売する必要もあります。それでも、発売時点で少なくとも一定額が入ると分かっているので、金銭面のストレスはいくらか軽減されました。

――BitSummitでは、『Denshattack!』が任天堂のIndie Worldブースに出展されていました。任天堂とのお仕事はいかがでしたか。

ハウマンドレウ氏:
本当に素晴らしい経験でした。今年初めにはNintendo Indie World Showcaseへの参加にも招待され、それによって本作の認知度が非常に大きく高まりました。これまで得た中でも、おそらく最大級の効果でした。Switch 2の開発機にもアクセスでき、開発を始めることができました。

任天堂がこれほど支援してくれたことは、本当にありがたいことだと思っています。本作を気に入り、Switch 2に適していると判断してくれたのだと思います。任天堂のような非常に大きな会社がゲームを支援してくれると、マーケティングにも大きな違いが生まれますね。

これからもゆっくり、着実に

――インディースタジオとして、今後どのような展望を抱いていますか。

ハウマンドレウ氏:
現在のゲーム市場全体は本当に大変です。「狂っている」という表現が正しいかは分かりませんが、多くのことが起こり、たくさんのスタジオが閉鎖されています。決して良い市場ではありません。今の私の主な目標は、チームを維持し、安定させることです。

『Denshattack!』のためにチームを拡大しました。以前は6人ほどでしたが、今はほぼ倍です。ですが、これ以上大きく拡大したいわけではありません。一歩ずつ進み、『Denshattack!』を支え、チームを安定させる。その後、大幅に規模を広げることなく、ゆっくりと次を考えたいと思っています。

――独立系スタジオであり続けたいと。

ハウマンドレウ氏:
ええ。もちろん『Denshattack!』の制作を通じて多くを学び、チームも成長しました。これからも学び続け、より良い作品を作り続けたいと思っています。しかし今すぐ、たとえば3本のゲームを同時開発したいというわけではありません。市場には多くのリスクがあります。まず安定させ、着実に成長していきたいです。ゆっくりでも着実に、ですね。

――ありがとうございます。最後に、読者の方に伝えたいことがあればお願いします。

ハウマンドレウ氏:
今年の東京ゲームショウを楽しみにしています。もっと多くの日本の方に本作を知ってもらい、意見を聞かせてもらいたいです。見たものを気に入ったか、そして今回登場しなかった場所の中で、将来見てみたい場所があるかなどを知りたいと思っています。

――ありがとうございました。

『Denshattack!(電車アタック)』は、PC(Steam/Microsoft Store)/PS5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch 2向けに配信中だ。Xbox/PC Game Pass向けにも提供されている。

[聞き手・執筆:Genki]
[翻訳:Motoharu Ono]
[編集:Aki Nogishi]

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