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「過去と未来、どっちが長いの?」自己と他者の関係をフカンするSteam『西暦2236年』をもう遊んだか
『西暦2236年』は、壮大なSF設定が展開される一方で、個人的な感情をテーマに取り扱った作品だ。そのテーマ性は、発売から10年以上経った今でこそ鮮明に浮かび上がる。

Steamでは日々数多くのゲームがリリースされている一方で、個人や少人数チームによる国産タイトルには大作の話題に隠れながらも、独創的なアイデアや強いこだわりを持つ作品が少なくない。本連載「見逃してない? 国産Steamタイトル発掘録」では、同人・インディーゲームを中心に、国産Steamタイトルを毎回1本ずつピックアップして魅力を伝えていきたい。
わたしをフカンする考察系SFビジュアルノベル
連載第2回となる本稿では、同人サークルChloroが制作したビジュアルノベル『西暦2236年』を紹介。2015年に頒布されたPC向け18禁作品が、2018年に全年齢・英語対応版として配信されたタイトルだ。 なお前日譚にあたるスピンオフ『西暦2236年の秘書』は、本編にも登場するA.I.秘書システム「PASS」の「マスコ」と主人公・ヨツバの会話を中心に、『西暦2236年』の世界観や独特の会話劇をピックアップ。無料作品ということもあり、こちらから本シリーズに触れたという人も少なくないだろう。

『西暦2236年』のシナリオは西暦2231年と2234年、2つの時間軸が交互に描かれていく。舞台となるのは、テレパシーという新たなコミュニケーション手段が普及し、人々が心を通じて直接意思疎通を行うようになった世界。2234年パートでは高校生のヨツバが、「マスコ」やテレパシー社会に疑問を抱く「ヒメ先輩」とともに実験部で活動。エキセントリックなヒメ先輩に惹かれながら、ヨツバは過去に出会った“ある少女”と2231年に起きた出来事を回想していく。
一方、2231年パートでは中学生のヨツバが新学期の教室で、テレパシーを使えない少女「ハル・シオン」の存在に気付く。ある日、導かれるように自宅近くの廃墟へ足を運んだ主人公は、「ハル・シオン」と同じ名前・同じ姿を持ちながら、“テレパシーしか使えない”少女と出会うことになる。一見すると近未来の日常系のように始まるが、読み進めるほど時間・記憶・現実の境界が揺らぎ、数学や量子論、哲学的な考察が織り交ぜられたSF作品へと姿を変えていく。

テレパシーという“他者とすべてわかりあえる”技術が普及した社会で、本作は「わかりあえないこと」や「自分らしさ」とは何かを考える作風が特徴だが、「ヨツバの過去になにがあったのか」「なぜハル・シオンと名乗る少女が二人存在するのか」など、主人公自身に関わる個人的な出来事を軸に展開していく。そのため難解なSF的テーマを扱いながらも、登場人物たちの関係性や感情の行方を追うことで、物語へ没入しやすい構成になっていた。
『西暦2236年』の根底にあるテーマは、「人と人が理解し合うとは何か」という問いだ。テレパシーが普及し言葉を介さず心で直接交流を交わす世界は、一見すると理想的なコミュニケーションが築かれた社会のように見える。だからこそ存在意義・他者とのつながりへの疑問が浮かび上がり、「わたしをフカンするノベルゲーム」というジャンルの通り、人間や自分自身を見つめる作品へと展開していく。

本作の面白さは壮大なSF設定と並行しながら、極めて個人的な感情を巡る物語として描かれている点だ。科学技術が進歩しあらゆる情報へアクセスできる未来であっても、誰かを想う気持ちや、こうあってほしいという願いが、必ずしも現実や相手との関係を思い通りにできるわけではない。2015年にリリースされた作品でありながら、SNSやAIの発展によって他者との距離や情報との向き合い方が変化した現代において、テーマ性は薄れるどころかむしろ鮮明に浮かび上がる。発売から10年以上が経った今もなお、本作が提示した結末や問いは私の中で切実なものとして響き続けているのだ。
『西暦2236年』は、PC(Steam/BOOTH)向けに発売中。18禁版はDLsite/FANZA/BOOTHにて展開されている。
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