“PlayStation 6”向けの半導体担当を巡り、すでにインテルとAMDが競り合っていたとの報道。インテル敗れる


インテルは2022年に、未発表の “PlayStation 6”(以下、PS6)向けのチップを手がける契約に向けてソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)と商談を進めていたものの、締結には至らなかったという報道が上がっている。Reutersが伝えている。

PlayStationは、SIEが手がける据え置き型ゲーム機だ。現行のPS5は2020年11月に発売。そして今年2024年11月には、上位モデルとなるPS5 Proが発売予定だ(関連記事)。

PS5ではCPUにAMD製のZen 2アーキテクチャを、GPUには同社製のRDNA 2アーキテクチャが採用されていた。PS5 Proでも引き続き同社製のプロセッサが採用され、特にGPUはコンピュートユニットの数が通常モデルのPS5より67%増えるほか、GPUメモリの速度が28%向上。これらによりゲームプレイ時のレンダリング速度は最大で45%アップすると謳われている(PlayStation.Blog)。


一方で過去2022年には、インテルが“PS6”のチップを手がける契約に向けて交渉をおこなっていたことがReutersにより報じられている。なおSIEはまだPS5およびPS5 Proの次世代機を発表しておらず、次世代機の名称が“PS6”となるかどうかも不明であることは留意されたい。ただReutersが2人の関係者の匿名証言として報じるところによると、「2022年に“PS6”のチップを手がける半導体メーカーを決めるための商談が進められていた」という。

Reutersによると、“PS6”向けチップのメーカーを募る入札段階では、インテルとAMDが最後の候補として残っていたという。なおインテルには製品事業部門のほかに、2021年より他社からの半導体の受託生産をおこなうファウンドリー事業部門が発足。“PS6”向けチップの生産もファウンドリー事業として見込まれていたそうだ。

インテルとSIEは数か月間にわたり、当時の両社のCEOや幹部、数十人のエンジニアも交えた商談をおこなっていたとのこと。しかし両社間で報酬面での折り合いが付かず、最終的にAMDが契約を勝ち取ることになったとされる。

なおインテルの広報担当者はReutersの取材に対し、同誌が報じたような“ビジネスチャンスを逃した”といった見方について「まったく同意しかねる(We strongly disagree with this characterization)」とコメント。また「現在あるいは潜在的な顧客との交渉についてコメントするつもりはない(but are not going to comment about any current or potential customer conversations)」との返答を寄せているとのこと。また同誌は、SIEの広報担当者からは返答が得られなかったと伝えている。

PS5 Pro

先述のとおり、PS5およびPS5 ProにはAMD製のプロセッサが採用されている。また海外メディアCNETの報道によれば、PS5 Proでは現行のほかのAMD製GPUにはまだ搭載されていない新たなレイトレーシング技術が採用されているとのこと。PS5に引き続き、PS5 ProでもSIEとAMDが深く協力しながら開発されているとみられるわけだ。今回の報道を見るに、将来の“PS6”に向けた開発でもそうしたAMDとの協力体制が続けられているとみられる。

対するインテルは今回の報道を見る限り、“PS6”向けチップの製造というファウンドリー事業の大口取引を逃していた可能性がありそうだ。なお同事業は2021年の立ち上げ後営業損益の赤字が拡大し続けており、2021年には51億ドル(約7200億円・現在のレート)、2022年には52億ドル(約7300億円)、2023年には70億ドル(約1兆円)の赤字を計上していた。

インテルは今年4月時点で、ファウンドリー事業の営業赤字が2024年もさらに拡大するとの見込みを明かしつつも、2027年ごろの黒字転換を想定していると説明。2030年までに“世界第2位”のファウンドリー事企業になるという目標を掲げていた(日経クロステック)。一方でインテルは本日9月17日にファウンドリー事業を切り離し、子会社とする方針を発表。インテルの成長戦略の中心として見込まれていた事業ながら赤字拡大が続いたこともあり、分社化で外部資本を受け入れられるようにし、事業の立て直しが図られるようだ。