ゲーム会社が”未完成ゲーム”に払う代償 大作ゲームに迫る早期アクセスの未来

CD Projekt REDは、開発中の新作RPG『The Witcher 3』の発売を2015年5月に延期すると先週発表した。当初は2014年秋にリリース予定とされていた同作は、今年5月に2015年2月への延期がE3トレイラー内などで告知されていた。今回の発表で延期は2度目となる。

海外メディアEurogamer Polandの取材に対し、CD Projekt REDの役員Adam Kicinskiは「ゲーマーたちは我々の決定をこころよく受けいれてくれた。市場は洗練されていない次世代機向けゲームを恐れている」とコメントしている。直接的な言及は避けたものの、ここ数か月ほど海外で続いていた未完成でリリースされた大作ゲームへの批判を懸念し、延期を決断したとみられる。

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未完成の大作ゲーム続く

 

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『The Witcher』は、ポーランドのスタジオCD Projekt REDが開発しているダークファンタジーRPGシリーズだ。魔法剣士ゲラルトを主役とする大人向けの物語や、多数の選択肢により幾重にも広がるストーリーが魅力である。CD Projekt REDの看板シリーズ最新作であるとともに、同スタジオ初の完全次世代機向け作品である。プロモーションは同スタジオ史上最大と呼べる規模で展開されている。発売が2月から5月にずれ込んだことで、同作の売上は会計年度をまたぐことになり、小売店などの関係各所だけでなく、CD Projekt RED自身にも大きな影響がでることは必至だ。

Kicinskiは、「多数の細かなエラーが存在しているとはいえ、それはゲームが巨大だからだ。延期の理由はそれだけだ。これだけ巨大になるとは想定していなかった。全てのピースを一箇所に集めてみると、前2作を合わせたものよりも巨大になってしまった」と説明する。本作が過去2作のようにリニアではなくオープンだとも強調した上で、「我々はゲームプレイを台無しにするようなバグまみれのゲームをリリースしたくない」と伝えた。

PS3とPS4でゲームを発売する、あるいはXbox 360とXbox Oneで発売する。世代をまたぎゲームを発売するこのスタイルを、「マルチジェネレーション」と呼ぶ。現行機と次世代機でユーザーが分散している、次世代への移行時に見られるスタイルだ。パブリッシャーの視点からすれば、現行機と次世代機両方のパイを確保できる利点がある。だが、ゲームプレイやグラフィックが一世代前の現行機に縛られる可能性もあり、コアユーザーは嫌うケースもある。よりパワーアップした次世代機のみを対象プラットフォームとする、進化したゲームを見たいと考えるからだ。

『Assassin's Creed Unity』の"No Face"バグ (source: GameSpot)
『Assassin’s Creed Unity』の”No Face”バグ(source: GameSpot)

とはいえ、ここ最近リリースされた次世代機向けの作品は、そんなユーザーの期待を裏切るものばかりだった。シリーズ初の完全次世代機向けとなった『Assassin’s Creed Unity』は、先月の発売直後から無数のバグが発見され、Ubisoftはパッチの配信に追われることとなった。同社はDLCを無料配布するほか、シーズンパスの販売を停止し、すでに購入したユーザーにゲームタイトルを1本無料で提供すると国内外で発表、事態の収拾をはかった。

PS4専用タイトルである『DriveClub』は、幾度かの発売延期を経てついに今年10月発売された。だがオンラインプレイに焦点を置いたレーシングゲームであるにも関わらず、発売直後からサーバーへの接続エラーが頻発し、ユーザーからは非難の声があがった。すでにマッチメイキングを改善するアップデートが実施されているが、有料メンバーシップPlayStation Plusの加入者に無料提供されるはずだった『DriveClub PS Plus Edition』は、配信の延期が発表されており、2014年末になってもいまだに発売されていない。

直接的な言及はないものの、相次ぐ次世代機向けゲームの失敗を見て、CD Projekt REDの上層部が開発期間を確保する考えに至ったのは、想像に難くない。インターネット接続がある現代では、ゲームが未完成でボロボロでもアップデートや修正パッチで改善することができる。2013年に発売された 『SimCity』のように、あまりに酷い問題があるときは発売後に謝罪し、無料でゲームを1本提供するなどといった対応も容易になった。だが、開発会社とそのゲームにこびりつく”失望”というイメージは、そう簡単に洗い流せるものではない。


大作ビデオゲームにも迫る”早期アクセスの未来”

 

未完成のゲームが発売され、怒れるユーザーたちの声が挙がるのは今に始まったことではない。しかしSNSの普及により、その声はより大きくほかのユーザーたちへ響くようになった。また、次世代のゲームハードが登場し、新たな世代のゲームに期待が高まっている。SNSの普及と次世代機への移行が重なったこの時期、一部の開発会社はあらためてゲームのクオリティと発売時期を見直しつつあるようだ。具体的な施策として考えられているのは、インディゲームでここ数年大きな流行を見せていた早期アクセスの利用だ。すでにUbisoftにくわえ、ここ数年の『Battlefield』新作でローンチに失敗し、最新作『Battlefield: Hardline』を延期延期としたElectronic Artsも興味を示している。フルプライスを支払い予約すれば、マルチプレイヤーのベータテスト参加権と共に、シングルプレイヤーの早期テストに参加できる……早期アクセスの名は使われなくとも、数年後にはこんな光景を目にするかもしれない。

次世代機の登場による開発態勢の移行や、制限された開発資金と期間、インディゲームの台頭により多様化する競合デベロッパーなど、現在の大作ゲーム開発が苦境にあることは想像に難くない。とはいえユーザーからすれば、始めから余裕のあるスケジュールを設定し、ローンチ直後に不愉快なアップデートがない状態で発売してほしいというのが本音だろう。Kicinskiは、「かつて発表したリリース時期は早すぎた、そして我々はいまその代償を払っている」と伝えている。未完成のゲームでユーザーに不快な思いをさせないため、早期アクセスやベータテストを利用するのか、あるいは発売時期を遅らせるのか。ゲーム会社は自身の懐とユーザーたちの意識を天秤にかけつつ、選択しなければならない。

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