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Ubisoftで数々のタイトルのクリエイティブ・ディレクターを務めたClint Hocking氏が、同社での大規模開発の経験を振り返り、苦労を語った。

元Ubisoftのクリエイティブ・ディレクターとして知られるClint Hocking氏は、ポッドキャストのインタビューで同社での大規模開発を振り返り、「川の上流に向かって小便をするようなものだった」と発言。規模が大きくなるほどかえって非効率になっていくゲーム開発の難しさを明かし、注目を集めている。
Clint Hocking氏は2001年にUbisoftに入社して以来、長年にわたり同社を支えてきた人物だ。『スプリンターセル カオスセオリー』や『ファークライ 2』といったタイトルではクリエイティブ・ディレクターを務め、高い評価を受けた。その後はルーカスアーツやAmazon Game Studiosへ移籍したのち、Ubisoftへ復帰し、『ウォッチドッグス レギオン』で再びクリエイティブ・ディレクターを務めた。さらに2022年にコードネームが発表された『アサシン クリード コードネームHexe』でもクリエイティブ・ディレクターを担当したが、2026年2月にUbisoftを退職。現在は、自身が創設したインディースタジオBuild Machine Gamesを率いている。

そんなHocking氏は7月21日、米メディアFRVRのポッドキャストにてUbisoftでの日々を振り返った。特に2020年に発売された『ウォッチドッグス レギオン』 では初の“1000人規模”の開発ということで、これまでとは異なる開発体制に苦労が絶えなかったという。同作は『ウォッチドッグス』シリーズの3作目。アメリカを舞台としていた過去作から舞台をロンドンへと移し、市民のひとりとして、軍事企業アルビオンに反抗する物語が描かれていた。
Hocking氏は、そんな『ウォッチドッグス レギオン』のような1000人規模のゲーム開発といえども、ゲーム内容やクエストについてレビューする会議では、参加者は30名程度にとどまるのだという。そして、参加者はディレクターやプロデューサー、プロジェクトマネージャーといった立場の者ばかりで、実際にそのゲーム部分を制作するレベルデザイナーが出席することは極めて稀だと指摘した。そのため、フィードバックを現場の開発者に伝えるのに非常に長い時間がかかってしまうようだ。
さらに大規模開発においては、会議で決まったイテレーションや改善案についても、実際に着手するまでに非常に長い時間がかかると問題視した。というのも、会議に参加する人物は会議の内容をただ“タスク化”するだけで、いつその内容が実行されるのか尋ねても「その担当者は別の作業に取り組んでいるため、着手は6週間後です」といった返答がかえってくるだけなのだそうだ。そして実際に6週間が経った頃には、状況はすっかり変化してしまっているとし、Hocking氏はこうした開発体制を「川の上流に向かって小便をするようなもの」だったと表現している。あまりにも開発における規模が大きすぎ、自分一人が対応しようとするだけでは、開発の流れに影響を及ぼすことも難しかったのだろう。
一方で、Hocking氏は2005年に発売された『スプリンターセル カオスセオリー』での開発について、当時は開発者の机に赴いて「ただ話すだけ」ですべてが済んでいたという。当時の気軽さに比べ、時代が下るにつれて身動きがとりづらいタイトルにかかわることも多くなり、そうした点での気苦労も多かったのかもしれない。

なお『ウォッチドッグス レギオン』と同規模以上の開発がおこなわれるとみられる『アサシン クリード コードネームHexe』については、Hocking氏は一切言及しなかったものの、同作も同じような状況にあった可能性はある。『アサシン クリード コードネームHexe』をめぐっては、2022年にタイトルが発表されて以来、作品に関する新たな情報は一切発表されていない。2026年にはHocking氏に続いて同作でゲーム・ディレクターを努めていたBenoit Richer氏もUbisoftを退職(関連記事)。こうした開発幹部の相次ぐ離脱や、Hocking氏の語った、大規模タイトルにおける身動きの取りづらさなども相まって、『Hexe』の開発が遅延している、という可能性は十分にあり得る。
ちなみにUbisoftでは今年1月、同社の新たな開発体制として「Creative House」構想を発表している。新運営モデルの発表と共に、複数のスタジオの閉鎖や、『プリンス オブ ペルシャ 時間の砂 リメイク』といった作品の開発中止も伝えられ、波紋を広げた(関連記事)。今回のHocking氏の証言が事実だとすれば、従来の開発体制はすでに限界を迎えていたのかもしれない。組織再編を経たUbisoftがどのような変化を遂げたのか、『アサシン クリード コードネームHexe』の続報とあわせて注目される。
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