マイクロソフトに買収されるActivision Blizzard、批判されるCEOのBobby Kotick氏はひとまず留任も先行き不透明。セクハラ騒動のゆくえ

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マイクロソフトは1月18日、Activision Blizzardの買収を発表した。Activision Blizzardはアメリカ有数のゲーム企業である一方、昨年半ばよりセクハラ問題などの渦中にあった。批判の矢面に立っていた同社CEOであるBobby Kotick氏は、留任するとのことだ。

Activision Blizzardは、『オーバーウォッチ』や『Call of Duty』などの人気フランチャイズを手がけるアメリカ有数のゲーム企業だ。同社については先ごろ、マイクロソフトによる約8兆円での買収に合意、Xbox事業を率いるPhil Spencer氏の傘下に入る予定との発表があった(関連記事)。買収完了時期については、2023年6月末までの、マイクロソフトの2023年会計年度内を見込んでいる。また、マイクロソフトおよびActivision Blizzardは、買収発表に合わせた会見にて「買収完了後、Microsoft Gamingはソニー、テンセントに続く世界第3位の売上高を誇るゲーム企業となる」としている。


気がかりなのが、昨年よりActivision Blizzardを取り巻いている問題だ。同社は昨年7月、有害な職場文化と性的ハラスメントの氾濫を理由に、行政機関から訴訟を起こされていた。それ以降、現・元従業員による告発や重役の退任などが続出。同社CEOのBobby Kotick氏についても、ハラスメントを黙認していたとの告発や、CEO退任を求めるデモなどに発展していた(関連記事)。すなわち、Activision Blizzardの変化を示す上で、もっとも進退が注目される人物なのだ。

そして、今回の買収についてのActivision Blizzard側の発表によれば、Kotick氏はCEOとして留任するとのこと。また、同氏は発表のなかで、マイクロソフトとの連携による展望についてコメント。買収完了後の従業員の変化についても、最小限に留まるとの見通しを伝えている。そして、買収完了までは独立した経営が続くとして、引き続き同社CEOを務める意気込みを語っている。しかし、同発表においては、退職などについては触れられていない。つまり、買収完了後を含めて進退については不透明な状態だ。一方でマイクロソフト側の発表では、同社は「買収完了後は、Microsoft GamingのCEOであるSpencer氏の直轄となる」と表現されている。Kotick氏に直接インタビューした、The New York Times記者のKaren Weise氏は「Kotick氏は買収完了後の進退について明言を避けた」と伝えている。いずれにせよ、Kotick氏の進退については買収完了を見守ることになりそうだ。

また、前述の諸問題を考慮してか、買収に際したマイクロソフトおよびXbox公式の発表では、インクルージョン(包括性)を尊重する方針を強く打ち出している。また、「積極的にスタッフを受容する文化を、Activision Blizzardに広めていく」とも言及。つまり、性別や性指向および、障害の有無などで差別されることのない環境を同社内に構築していくとの意思表明だ。

今回の買収は、ユーザーにとっては福音となるかもしれない。マイクロソフトによる発表のなかでは、現在リリース中および今後発売されるActivision Blizzard作品を、Xbox Game PassおよびPC Game Passにて展開していくと伝えられている。そして、現在各プラットフォームで展開されているActivision Blizzard作品については、それぞれのプラットフォームでのサポートを続けていく方針を示した。また、マイクロソフトの傘下に入ることで、開発について懸念されていた『オーバーウォッチ 2』などの新作の展望に光明が差すとも考えられる。具体的な展開タイトルなどの発表にも期待したい。

なお、Spencer氏は一連の騒動のさなか、社内文書にて「XboxとActivision Blizzardの関係性を見直す」と発言していた。また、先ごろThe New York Timesが掲載したインタビューのなかでは、同社との付き合い方に変化があったとコメント。業界が手を取り合っての改善が重要だと説いていた。Spencer氏の一連の発言は、今回の買収に向けた布石だったのかもしれない。マイクロソフトとSpencer氏のもとで、Activision Blizzardはどのように変化していくのだろうか。

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