『Undertale』の楽曲「MEGALOVANIA」を、ローマ教皇が聴いていた。バチカンのホールに響く地獄の業火の音色


ローマ教皇フランシスコは1月5日、バチカンのパウロ6世ホールで、水曜日恒例の一般謁見をおこなった。一見ゲームとは縁もゆかりもない真面目なイベントであるが、このなかで、あの「インディーゲームの名曲」が流れる奇跡が起こったようだ。Kotakuなどが報じている。

ローマ教皇は毎週、バチカンにて一般謁見をおこなっている。こうしたなかでは、教皇みずからが演説し、宗教的な教義などについて説教をおこなう。今回の謁見では、「子どもをもたずにペットを飼う夫婦」について教皇が疑義を示す発言などがあり、一部で賛否を巻き起こした。一方その陰では、もう一つ珍しい光景が見られている。

今回の一般謁見では一連の説教が終わったのち、余興の時間が設けられていた。ゲストとして招かれたのは、イタリアのパフォーマー集団Rony Roller Circus。同団体は、ジャグリングやアクロバットなどを得意とするサーカスだ。ポップスやロック音楽など、さまざまなジャンルの楽曲をバックに軽業を披露している。ところがパフォーマンスがクライマックスに差し掛かろうというところで、「一部の」聴衆には非常に耳慣れた楽曲が流れた。ずばり、「MEGALOVANIA」である。
 

 
MEGALOVANIAは、開発者・作曲家として知られるToby Fox氏の代表作の一つ。Toby氏が携わったさまざまなメディアで使われており、もっとも有名なものは『Undertale』で用いられたバージョンだろう。同作Gルートのとあるバトルで流れ、ハードロックとチップチューンを組み合わせた勢いのある曲調が特徴。最難関の戦いで流れることもあり、何度もやられ、数えきれないほど耳にしたプレイヤーも多いだろう。『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』では、Toby氏本人によるアレンジ楽曲も収録されている。

今回のパフォーマンスで用いられたMEGALOVANIAはサックスアレンジされており、原曲とは異なるようだ。オリジナル版より幾分ゴキゲン度が増した楽曲をバックに、Rony Roller Circusは華麗なジャグリングを披露。そのパフォーマンスには、思わずローマ教皇も微笑みをこぼし、小さく拍手を送っている。

「ローマ教皇とゲーム」の話題でいえば、先ごろ「ローマ教皇が『ファイアーエムブレム 風花雪月』で傷ついた」との噂が流布したことが記憶に新しい(関連記事)。ただし結局のところ、同件はジョークサイトが出元のガセ情報であった。今回の件についても、編集されたフェイクニュース映像ではないかと思わず疑ってしまう。しかし、バチカンによる公式YouTubeチャンネルを確認すると、はたしてMEGALOVANIAの演奏動画が残されている。今回ばかりは、本当に教皇の前でゲーム音楽が演奏されたようだ。
 

*1時間04分40秒より該当シーン。

 
Rony Roller Circusについては、2017年にも教皇の前でパフォーマンスをした記録がある。べつに、以前からゲーム音楽をパフォーマンスに取り入れていたわけではないようだ。はたしてどういった経緯でMEGALOVANIAが選曲されたかについては不明。とはいえ、MEGALOVANIAといえばSpotifyにて1億回以上再生された著名楽曲である。そのキャッチーさに触れて演目に取り入れられた可能性はありそうだ。

実は、教皇が『Undertale』に触れたのは今回が初めてではない。2016年、教皇は10名のYouTuberを招待し、世界的な視聴者に対し多様性や世界平和をどのように広めていくかを議論する催しを開いた。招待されたなかに含まれていたのが、ゲーム考察チャンネル「The Game Theorists」で知られるYouTuberのMatPat(Matthew Patrick)氏。同氏はこのとき、教皇に『Undertale』Steamコードをプレゼント。理由はさまざまありつつも、2016年が教皇により、「いつくしみの特別聖年 (Jubilee Year of “Mercy”)」と定められたことが大きいようだ。
 

*そして、MatPat氏も今回のMEGALOVANIAの件に反応。

 
花が咲き、小鳥たちもさえずる新年に響いた旋律は、教皇の心にどんな記憶を残したであろうか。インディーゲーム界の伝説が、また一つ逸話を残した一幕であった。