MMORPG『MIR4』がSteamレビュー低評価にもかかわらず同時接続者2万人を突破。欲望渦巻くマイニング合戦の始まり

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韓国のゲーム企業Wemadeが8月25日にリリースしたMMORPG『MIR4』が、奇妙な様相を見せている。モバイルおよびPC(Steam)向けに配信された本作は、Steamにおけるユーザーレビューで酷評を受けつつもプレイヤー数が激増しているのだ。本作が持つ独特のシステムから、評価と裏腹な人気の理由を紐解く。

『MIR4』はWemade Nextが開発、Wemadeが販売するアクションMMORPGだ。プレイヤーは4種類あるクラスから好きなものを選び、怪物や他プレイヤーとの闘争に身を投じていく。アクションゲームとしての基礎はしっかりと存在し、スキルや回避を駆使して敵と戦闘したり、二段ジャンプやダッシュを使ってフィールドを駆け回ることが可能だ。一方で、クエスト表示をクリックして自動で進行する機能も備えており、キャラクターに自動戦闘や自動採取をさせることもできる。実質上、プレイヤーがあまり介入しなくても進行する“放置ゲーム”に近いシステムになっている。

とはいえ、戦闘や採取、クエスト進行の自動化といった要素は、MMORPGとして特段珍しいといえるシステムではない。特にモバイル向け作品での実装例は枚挙に暇がなく、自動化要素のみで人気を得ているとは考えづらい。『MIR4』のSteamユーザーレビューには「全自動で進んでしまい退屈である」という旨の評価が散見し、記事執筆現在では好評率が36%の「やや不評」という評価になっている。一方で、記事執筆現在ではSteamにおけるピーク時の同時接続者数は2万人を超えており、依然として右肩上がりの様相を見せている。一見矛盾しているこの状況の理由は、おそらく本作が持つ独特の機能にある。

Image Credit: SteamDB


『MIR4』はブロックチェーン技術を利用しており、ゲーム内での活動を通じて現実の仮想通貨を入手できるのだ。本作ゲーム内アイテムである「黒鉄」は、一定の数を集めるとWemadeが推進するユーティリティコイン「DRACO」に“精錬”できる。公式サイトによれば、記事執筆現在1DRACOあたりの価格は日本円にして約193円(約1.76米ドル)で、レートや精錬にあたっての黒鉄の必要数は日々変動する。DRACOは同じくWemadeが推進する仮想通貨「WEMIX」を経由し、bithumbやBiKiといった暗号資産取引所を通じて運用できるようだ。つまり、ゲーム内での黒鉄の入手が、実際に運用可能な暗号資産の入手に繋がっているというわけだ。

黒鉄の入手方法はいくつかあり、ゲーム内目標のクリアなどでも一定の数が入手できるほか、ゲーム内で文字通り“採掘”することが主な入手方法となる。つまり、現実の資産に変えられるアイテムを、ゲーム内でマイニングさせる試みだ。黒鉄の採掘場には鉱脈が複数存在するものの、同じ鉱脈を複数名で採掘することはできない。そのため、本作をプレイしている一部ストリーマーが“場所取り”のために採掘中のプレイヤーに殴りかかったりする様子も見られる。今後はさらに、あの手この手の熾烈なマイニング競争が激化していきそうだ。


Wemadeが8月25日に公開した本作に関するプレスリリースによれば、「黒鉄を生産する黒鉄生産地の秘谷をめぐり、国家別に門派(クラン)を形成し国家戦を繰り広げる」といった要素もあるようだ。プレイヤーがゲーム内で競争するインセンティブとして、仮想通貨を導入する試みは興味深いものの、どのような戦いが繰り広げられるのか想像すると、空恐ろしくもある。また、本作にはNFT(Non-Fungible Token/非代替性トークン)技術も導入予定だ。DRACOで購入したゲーム内アバターはNFTとなっており、平たく説明すればデジタル上での「所有証明書」が付帯するようなかたちだ。プレイヤーは購入したアバターの世界で唯一の所有者となり、アバターの取り引きなどもWemadeが今月9月にオープンするプラットフォームで可能になるという。

低迷する評価と増加するプレイヤー数、そして本作のブロックチェーン技術にまつわる特色をまとめて分析すれば、「放置しているだけで仮想通貨が稼げるMMO」という部分に魅せられたプレイヤーが多いのではないかと分析できる。また、現実の資産に繋がる要素でプレイヤーを競わせる試みは興味深い。しかし、金銭はやはり問題の種でもある。プレイヤー間の軋轢などからトラブルに繋がる懸念は存在するだろう。


ほかにも、筆者が本作をプレイしたところ、現状ではグローバルチャットがRMTなどの宣伝と思わしき書き込みで常に埋め尽くされていた。また、説明文に人種差別的、あるいは排外的な表現が見られるクランも多く、やや運営面での懸念を感じた。いずれにせよ、今後Wemadeが『MIR4』をどう展開するのかは気になるところ。良くも悪くも目が離せないタイトルになりそうだ。

『MIR4』はPC(Steam)およびAndroid/iOS向けに配信中。


※ The English version of this article is available here

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