米国トロントを拠点とするデベロッパーLove Conquers All Gamesは8月4日、レズビアンRPG『Get in the Car, Loser!』について、2021年9月にリリースすると発表した。同スタジオの中核となるChristine Love氏は、ジェンダーやフェミニズムといった題材をゲーム体験に融合させた作品で評価を集める開発者だ。
『Get in the Car, Loser!』のジャンルは、開発者Love氏いわく「レズビアンロードトリップRPG」だ。主人公はレズビアンの少女、Sam Anon。彼女は学校の爪弾きもので、いわゆる「Loser(負け犬)」と呼ばれてしまう立場の生徒だ。ある夏の日、そんな彼女のもとに訪れたのは、彼女とは真逆の、学校の女王格(Queen Bitch)の立場を誇る生徒であるGrace Morningstarだった。Graceの「車に乗りな!負け犬!(Get in the Car, Loser!)」という鶴の一声で、Samは1000年にわたり眠っていた古の悪であるMachine Devilから世界を救う、ロードトリップ(車の旅)に巻き込まれることになる。
本作は上記のSamとGraceのほかに、Graceの恋人であるValentin Vaillanteと、文字通りの「天使」であるAngelaを加えた4人パーティーを中心に展開される。なお、キャラクターはそれぞれジェンダーが設定されており、Valentinについてはthem/theyとなっている点から「ノンバイナリー(従来の文化的規範に沿わない性自認)」だと見られる。ゲーム公式のキャラクター紹介で、こうした設定が明示されるのはやや珍しい。それぞれ個性豊かに性格づけられたキャラクターが、道中でどのようなやりとりや物語展開を見せてくれるのかは興味深い点だ。また、戦闘においてもそれぞれのキャラの特徴に合った役割が与えられているようだ。
本作のキャラクターはそれぞれ、戦闘において異なる役割を担うようだ。主人公Samはサポートロールとなり、味方の回復などをおこなう。GraceはMachine Devilを倒すために博物館から盗んできた伝説の聖剣「Sword of Fate」を存分に振るい、敵に大ダメージを与える役割だ。戦闘システムとしては、JRPGにインスパイアされたという「アクティブタイムバトルシステム」を採用している。このシステムは、コマンド選択式でありながら戦闘がリアルタイムに進行。待ち時間を終えたキャラクターから行動していくという仕組みだ。いわゆるATBに近く、『ファイナルファンタジー』シリーズ過去作を遊んだゲーマーには馴染み深いシステムではないだろうか。
本作ではサイドクエストなどの寄り道や、ゲーム内資料などの読み物要素は廃されている。一方で、自由度の高いやりとりが出来る会話システムが実装されているようで、物語体験に重きを置いた作品であることがうかがえる。
本作を手がけるデベロッパーLove Conquers All Gamesは、クリエイターChristine Love氏が中心となり、複数クリエイターが集って制作にあたっている。同氏が手がける作品の特徴としては、ジェンダーやフェミニズムといったトピックを盛り込んでいる点がある。そうした複雑な題材をゲームプレイに落とし込む手腕は、多くのプレイヤーから一定の評価を受けている。同氏の過去作としては、同じくレズビアンを主要キャラクターとしたアダルトビジュアルノベル『Ladykiller in a Bind』や、歴史上の文化から女性差別問題に深く切り込むSFビジュアルノベル『Analogue: A Hate Story』などがある。初作である『Digital: A Love Story』については、日本語版が無料で公開されている。
本作においてもLove氏はシナリオライター、プログラミング、デザインを兼業するとのことで、同氏のセンスが遺憾なく発揮された作品になりそうだ。ほかにも本作には、コンセプトアーティストとしてウェブコミック「Witch Trade」作者のIsaac Robin氏、ピクセルアーティストとしてAugust Cartland氏が参加。特徴的なサウンドトラックはChrista Lee氏が手がけており、楽曲の歌唱はJami Lynne氏が担当しているとのこと。
『Get in the Car, Loser!』はPC(Steam/itch.io)にて2021年リリース予定だ。itch.ioページにおいては今年9月のリリースが告知されており、Steamにおいては「2021年夏」と表記されているものの、itch.io版と同時期のリリースが予想される。