『RDR2』に性行Mod「Hot Coffee」登場。『GTA:SA』の同名Modで悪夢を見たRockstar Gamesが、Mod制作者に公開停止要請

 

PC版『レッド・デッド・リデンプション2』(以下、RDR2)用に配信されている「Hot Coffee」Modを巡り、パブリッシャーのTake-Two Interactive(以下、Take-Two)およびRockstar GamesがMod作成者に公開停止要請を出しているようだ。海外メディアのPC GamerPCGamesNが報じている。「Hot Coffee」は、『RDR2』内で性行為に及べるようにするPC用Mod。主人公アーサーが娼婦に話しかけ、個室でひとときを過ごすという内容になっている。性質は異なれど、「Hot Coffee」という名称は、かつてTake-TwoおよびRockstar Gamesの頭を悩ませた、悪名高き『Grand Theft Auto: San Andreas』(以下、GTA:SA)用Modと同名のものである。

https://youtu.be/oFyFLatZVxw

*ヌードシーンはないものの、職場閲覧注意

 

Hot Coffee騒動について

本家「Hot Coffee」は、2005年に発売されたPC版『GTA:SA』用にMod制作者のPatrick Wildenborg氏が作成した。もとからゲームデータに含まれていたものの、プレイヤーがアクセスできる形では実装されていなかった性行為機能を掘り起こすModだ。主人公のCJとガールフレンドがデートを重ねて性行為におよぶ際、通常は建物外から喘ぎ声が聞こえてくるだけなのだが、「Hot Coffee」を適用すると性行ミニゲームが発動。2人の様子を見るだけでなく、行為中のCJを操作できるようになる。

『Grand Theft Auto: San Andreas』

着衣状態とはいえ、17歳以上対象レーティングのゲーム内に性行ミニゲームが存在することは、当時の米国を中心に問題視されることに。Rockstar Gamesは当初、ゲームデータに性行為ミニゲーム含まれていることを否定し、Mod制作者によるデータ改造の結果であると主張していた。しかし、後になってPlayStation 2/Xbox版用の「GTA:SA Censor Remover」というハッキングツールが登場。PCだけでなくコンソール版でも同様の機能を解放できることが判明した。Rockstar Gamesは後日、ゲームデータに性行ミニゲームが含まれていたことを認めている。

『GTA:SA』は当初、北米のレーティング機関ESRBより17歳以上対象の「Mature」レーティングが与えられていたものの、「Hot Coffee」発覚後は一時的に成人指定の「Adults Only」に変更。性行ミニゲームのデータを取り除いた新バージョンの生産・再審査を受けて、「Mature」レーティングに戻った。当時は小売店からの返品対応や、Take-Twoに対する集団訴訟、当時の米国上院議員ヒラリー・クリントン氏による法案(連邦政府がゲームの対象年齢を定めるという内容。法案成立には至らなかった)提出など、社会問題へと発展していった。

 

『RDR2』用の「Hot Coffee」

『RDR2』の「Hot Coffee」Modは、『GTA:SA』の同名Modとは性質が異なる。ゲームデータに隠されていたミニゲームを掘り起こすのではなく、ゲームに実装されているアセットやアニメーションを組み合わせて自作したものである。ModderのUnlosing氏とJedijosh920氏が作成した「Hot Coffee」は、主人公アーサーがバレンタインやサンドニの娼婦と性行できるようになるPC用Mod。酒場で娼婦に話しかけ、お金(5ドル)を支払うと個室に誘導される。すると着衣状態でのベッドシーンが始まる。行為中はカメラ視点および体位変更が可能。体位、といっても対面騎乗位と背面騎乗位の2種類のみ。アーサーの声に関しては、負傷中に発する音声データを活用。なお行為終了後はアーサーの各種ステータスが回復する。

 

Take-TwoとRockstar Gamesのスタンス

同Modは2月12日、NexusModにて公開。目立つ名前でもあったせいか、すぐさまTake-TwoおよびRockstar Gamesの目を引くことに。彼らを代表する法律事務所「Frankfurt Kurnit Klein & Slez」からMod作成者が受け取ったメール内容を伝えているYouTuberのSWEGTA氏によると、エンドユーザー使用許諾契約(EULA)および行動規範違反にもとづくModの公開停止が要請されている。同作のEULAでは、「本ソフトウェアはライセンサーからの事前の書面による承諾なしでは、全部もしくは一部に限らず、いかなる方法もしくは媒介物でも、コピーしたり、再開発したり、修正したり、改造したり、再配布することは認められません」と定められており、こちらに違反するという主張だ。とはいうものの、同法律事務所は、公開停止を求めている一番の理由であり、特段懸念視しているのは「Hot Coffee」に含まれる性的コンテンツであると明示している。

Mod作成者のUnlosing氏は上述したPCGamesNに対し、公開停止要請が事実であることを伝えている。ただしUnlosing氏は「Hot Coffee」がEULAや行動規範違反に該当するとは考えていない。同Modにはヌード描写は含まれておらず、使用したアセットはすべてゲーム内に含まれているもの。キャラクターのアニメーションはゲーム内ミッション「とりあえず一杯」にて、とあるキャラクターの性行を目撃するシーンを活用している。またTake-Twoが示す行動規範は「オンライン機能の利用」に関するオンライン行動規範であるのに対し、「Hot Coffee」はあくまでもシングルプレイコンテンツ用のModであると主張している。

Rockstar Gamesが開発した作品群ではMod文化が盛ん。最近では『Grand Theft Auto V』内でVice Cityを再現する「Vice Cry: Remastered」Modが話題となった(関連記事)。ただし、Rockstar GamesはすべてのModを認めているわけではなく、自社ガイドラインを設けている。同社の「PC版のシングルプレイ用MODについて」ページでは、以下の記載が確認できる:

「ロックスター・ゲームスはユーザーの正当な創造性を尊重し、クリエイターには弊社タイトルへの情熱を表現してほしいと願っています。Take-Twoとの協議の結果、Take-Twoはロックスター・ゲームスのPCタイトルに関連するサードパーティープロジェクトで、シングルプレイ用、非営利目的、サードパーティーの知的財産(IP)権を侵害しないものに対しては法的措置を取らないという方針に合意しました。ただし、(i)マルチプレイまたはオンラインサービス、(ii)マルチプレイまたはオンラインサービスに影響を与え得るツール、ファイル、ライブラリ、機能、(iii)プロジェクトにおける他のIP(ロックスター・ゲームスのIPを含む)の使用やインポート、(iv)新たなゲーム、ストーリー、ミッション、マップの作製についてはこの適用外となります。これは使用許可ではありません。そして、サードパーティープロジェクトへの承認、同意、権限付与を行うものでもありません。Take-Twoはいかなるサードパーティープロジェクトに対しても異議を申し立てる権利、あるいはこの声明をその裁量においていつでも改訂、取り消しおよび/または取り下げる権利を留保します。この声明はTake-Twoがサードパーティープロジェクトに関して持ち得るいかなる権利も放棄するものでもありません」

シングルプレイ、非営利目的のModについては法的措置を取らないという方針を示してはいるが、後半に記載されているように「Take-Twoはいかなるサードパーティープロジェクトに対しても異議を申し立てる権利」がある。今回の件に関しても、Modの内容を踏まえて個別判断したと読み取れるだろう。公開停止要請が出たことで、注目を集めることとなった「Hot Coffee」。Mod作成者のUnlosing氏がPCGamesNに回答したところによると、今後の対応を決めかねている状態であり、すぐにModを取り下げるつもりはないとのことだ。